トップページ > 埼玉県議会トップ > 定例会・臨時会 > 定例会概要 > 平成29年9月定例会 > 平成29年9月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(松坂喜浩議員)
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掲載日:2023年9月20日
Q 松坂喜浩議員(改革)
一昨年、「新制度に向け、県が市町村に対してどのような課税方式が望ましいという指導なり誘導なりしていくことはないと考えてよいか」と質問させていただきました。そして回答の中には、「課税方式は市町村ごとに異なる実情を踏まえて、各市町村自らの判断に委ねる」と回答いただきました。
いよいよ来年度から都道府県が国民健康保険の保険者となります。今年3月末に県が公表した国保運営方針によると、平成27年度県内市町村国保財政は、一般会計から375億円が繰り入れられております。そして、現行の税率及び収納率が確保されると仮定した場合、平成35年度には繰入れは690億円に増大すると予測しています。
このような状況の中で、国保の都道府県化に当たっては、国は年3,400億円の国費を投入すると約束しましたが、これで国保の構造的な問題の改善につながるのでしょうか。国保加入者のうち無所得の人は、何と国全体で約28パーセント、増え続けて3割に至ろうとしております。所得100万円以下の方も約28パーセント、合計すると国保加入者の6割弱が無所得か100万円以下の方々であります。75歳前の方々が増え、昭和の好景気の頃から激変して自営業者の所得が大幅に減少しているのにもかかわらず、これを支えていかなければならない。それが、この国保のことでございました。この皆様を、自営業者をはじめとした中所得の皆さんだけで支え続けているわけにはいかない。それが、市町村が国民健康保険に一般財源を投入し、繰入れを行っているわけであります。
さきに述べた6割の無所得、低所得の皆さんは高齢者が多く、医療費も他の所得階層の方々よりも多くの医療費を使っている可能性が高いと考えます。こうした国民健康保険の実情を踏まえた上で、県は、国保は国民皆保険の最後のとりで、中心であるので、社会保障の意味合いが強いということを認識しながら仕事をしていきたいとしていますので、国保の県単位での統合について、本質的問題の解消に向けて、以下、上田知事に見解をお伺いします。
1点目としまして、国民皆保険を支えている国保の財政、低所得者、無所得者への相互扶助を、これまでどおり自営業者を中心とする中所得者だけで支えていることに問題があると認識されているでしょうか。
2点目、無所得、低所得者を国民全体で支えるなら、その負担は国、県、市町村がすべきか、いずれでしょうか。
3点目、自治体ごとに年齢構成、就業構成が異なる市町村で一般財源を投入して負担するということは、居住地によって負担が違うという、県民に不均衡な状態を与えるということになります。そこの現実を均衡させるために国保の一本化を目指し、その第1ステップとして県単位で統合を行うわけです。そう考えた場合、県はどういう役割を、また負担を負うべきだとお考えでしょうか。
4点目といたしまして、本質的問題の解消に向けて、財源の乏しい国保と豊かな共済を統合すれば平均化され、社保の負担と近似値になるはずです。国単位での一本化が目標となっている保険制度改革ですが、埼玉県から先行して、特区でもよいから提案し、県単位で国保と共済の統合を図っていく。そうすることで全保険の統一へ画期的な一歩を期することを検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。先行して統合したその経験とノウハウを生かせば、全国で国保と共済の統合に道筋が開けると考えますが、いかがでしょうか。
A 上田清司 知事
国民健康保険制度は、越谷市の越ケ谷順正会(じゅんせいかい)による医療救助を目的とした活動がその発祥だと言われており、保険制度は実は埼玉県からスタートしたということになります。
この組織は共助の仕組みで運営されており、一定の組合費を払っていれば病気などになった時には低額の負担で医師にかかることができたという、こういう埼玉県発の医療保険の制度が、ある意味では原型になっていると思います。
国民皆保険制度を支える国民健康保険は、制度の加入者であります被保険者同士が共に支え合う仕組みで成り立っています。
しかし、今、議員が御指摘されましたように、現在と当時では被保険者の人口構成や年齢構成が相当変わって、多くの高齢者や低所得者で占められるなど、構造的な課題を抱えていると私も認識しております。
まず、第1点目の国保の財政を自営業者を中心とする中所得者だけで支えることに問題があると認識しているかについてでございます。
お話のとおり無所得、低所得の方の保険税を中所得の方だけで支えるような状況はあってはならないと思います。
国保税については無所得、低所得の方には保険税の軽減が実施されておりますが、中所得の方はその対象になっていませんので、保険税の負担が大きく感じられると思います。
ただ、御案内のように、国保財政は国民全体から集められた公費のほか、企業などに勤めるサラリーマン世帯からの支援でその7割を支えられているという実態がございます。
仮に市町村の法定外一般会計繰入を入れても、被保険者の保険税負担は全体の3割程度しかないということでございますので、その割合からいくと、確かに無所得者、低所得者と比べれば、中所得者の負担が重いということに関して、私も認識が同じだと思います。
しかしそれ以上に、他の公費、あるいは他の保険からの繰り入れが投入されているので、必ずしもその問題だけでは片付かないというような考え方を持っております。
次に、第2点目の国保加入の無所得者、低所得者を国民全体で支えるなら、その費用は国、県、市町村のいずれかがすべきではないかについてでございます。
国保財政の約7割が公費と被用者保険等からの支援になっておりますので、現状でも広く国民、県民からの支援を受けているという実態がございます。
その中には、年間所得82万円以下の世帯を対象とする低所得者対策が含まれております。
これは国保世帯の約4割をカバーしており、法律で定められた負担割合に基づいて、国、県、市町村が総額241億円を負担しております。
このように、現状においても国保加入の無所得者、低所得者の支援は法律に基づく全国的な枠組みの下で国、県、市町村がそれぞれ一定の負担をしております。
これを、どこがやれという話になると、本当はより望ましい負担のあり方というのは、国会の場できちんと社会保障制度の改革の議論をしていただいて、その答えを出していただかなければならないというふうに考えているのが、私の持論であります。
しかし、ただ座して待っているだけではなくて、こうした意見を全国知事会などでも申し上げているところでございます。
次に、第3点目の県単位での国保の統合を行う場合、県はどのような役割、負担を負うべきかについてでございます。
来年度から国保は県と市町村の共同運営になりますが、将来的には、どこに住んでいても、同じ所得であれば同じ保険税になることが理想でございます。
しかし、国保をめぐる状況は地域によって現実には様々であります。
例えば、一人当たりの年間医療費については、県内の最も高い市町村と最も低い市町村では8万円以上の差がございます。
また、法定外繰入についても被保険者一人当たり5万円以上実施している市町村もある一方で、全く実施していない市町村もございます。
さらに、保険税の収納率や医療費適正化の取組についても、市町村ごとで異なっております。
県としては、将来的には保険税水準の統一を念頭に置きながら今回の制度改革の機会を捉えて、市町村とこうした様々な差があることを前提に、段階的に整理をしていかなくてはいけないということで、現在その調整を図って、解決に努めているところでございます。
次に、第4点目の本質的問題の解消に向けて、県単位で国保と共済の統合を検討できないかについてでございます。
国保と共済の統合については、市町村国保の更なる財政基盤の強化策の一つとして御提案をいただいたものだと思います。
世界に誇るべき国民皆保険制度は、国保や共済以外にも健康保険組合や協会けんぽ、後期高齢者医療制度などによって支えられております。
それぞれの歴史的な沿革もございます。
構成メンバーも異なっております。
このため、医療保険制度の見直しは国全体の枠組みの中で、複数ある制度をどのように変えていくか、先ほども若干触れましたけれども、しっかり議論をして、国民の合意を得なければならないものだと思っております。
都道府県単位での部分的な統合ということが、理論的にも可能であればそうした合意に向けての作業もあるのかもしれませんが、現在のところは、そうしたものではないというふうに思っておりますので、全ての医療保険制度における給付と負担の公平化に向けて、その一元化をやはり目指すべきだと思っております。
そのプロセスの中で、あるいは今の議論は出てくるかもしれません。
しかし、こうした議論も大きくは制度の枠組みの中に県も入っておりますので、むしろ国の制度の中で議論が進められるべきであり、実際、野田政権下での3党の合意、つまり社会保障と税の一体改革は、このことが意識されていたはずだったのですが、残念ながら吹っ飛んでいるという現状でございますので、もう一度こうした問題を国民的な議論として、しっかり立ち上げなければならないのではないかという認識を、私自身持っております。
そのために、どのような努力ができるのかしっかり考えていきたいと思います。
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