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掲載日:2024年12月20日
Q 新井一徳 議員(自民)
近年、農業経営の環境が大変厳しい状況にあると指摘されています。担い手の高齢化や後継者の不足、耕作放棄地の増大は深刻な問題です。加えて、急速な少子高齢化、人口減少社会の本格的な到来も間近に迫る中で、需要の大幅な減少も不可避であると考えます。
そのような厳しい環境にある今こそ、もうかる農業への転換を図るべきときに来ていると考えます。そのためには、これまでの家族経営から農業生産法人への転換を図るように生産者を誘導することや、併せて経営者としての資質を向上させるため、経営感覚を身に付けた生産者を育成していくことが求められるのではないでしょうか。
ここで、参考になると思われる事例を一つ御紹介いたします。
本年度、埼玉農業大賞を受賞した深谷市の有限会社「ファームヤード」です。先日視察で伺ってきました。平成17年に法人を設立しており、現在は社員14人、パート35人を有し、60ヘクタールを超える農地で生産活動を展開しています。特徴として、明確な経営理念と高い目標を掲げて毎年経営を拡大し続けていること、ほ場の集約化や大型機械の導入による省力化にも取り組み、国際水準のGAP認証を取得して、露地野菜のモデル的経営体であること、組織における人材の大切さを認識し、社員教育にも力を入れていることなどが挙げられます。
代表取締役の吉岡重明さんは、「農業経営を軌道に乗せるためには常に生産の効率化を図り、良い人材を確保することが大切だ。人材確保では異業種がライバルだ」と力説します。また、今後の目標をICTを活用した先進的な農業にも力を注ぎたいと将来を見据えています。
こうした埼玉農業を牽引するリーディングファーマーを今こそ育成すべきと考えます。
本県には、熊谷市に農業大学校がありますが、新規就農を目指す若い学生向けのカリキュラムがメインとなっています。しかし、今後の担い手育成を考えた際に、ある程度農業経験を積んだ人たちを対象とした農業経営学といった講座を開設する必要もあるのではないでしょうか。また、経営革新を進めたいのであれば、生産者にとって安定した資金調達や省力化につながるような資機材のさらなる充実は必要不可欠なはずです。であれば、生産者を金融機関や農機具メーカーなどの異業種とマッチングさせる場を設けることも大切なことではないでしょうか。
優れた経営感覚を持ち、自ら経営革新に挑戦する農業経営者を育成することは一朝一夕にはできません。長期的視点に立った取組が必要と考えますが、農林部長の御所見をお伺いいたします。
A 篠崎 豊 農林部長
儲かる埼玉農業の実現には、議員お話のとおり、経営感覚を持った担い手の育成が、何より重要と考えております。
このため県では、農林振興センターに「農業経営法人化相談窓口」を設置し、税理士や社会保険労務士などと連携し、法人化に向けた支援を行っております。
この結果、平成24年度に574だった農業法人は平成29年度末までに972法人となり、この5年間で1.7倍に増加しております。
さらに、高度な経営力を身に付け埼玉農業をけん引する担い手を育成するため、平成29年度から埼玉農業経営塾を県農業大学校に開設し、財務や労務管理、マーケティングなどを体系的に学べる場を提供しております。
農業経営塾では、全国トップクラスの農業経営者から自らの企業経営や事業戦略の体験談を聴き、塾生同士がディスカッションを行い、農業コンサルタントからの個別指導などを通じ、受講生が将来に向けた経営プランを作成します。
上里町で米や麦を栽培する農家は、地域農業の担い手となり農地の荒廃を防ぎ、プロの農家になるという経営目標を立て、規模拡大や雇用などをまとめた経営プランを作成しております。
また、所沢市のお茶農家は、お客様に安心と満足を与え社会貢献に努めるという経営理念を立て、外国人を含む観光客へ手揉み茶体験を提供するという経営プランを作成しました。
今後、経営塾の塾生が議員お話の有限会社ファームヤードの吉岡氏のような農業経営者となるためには、マネジメント能力やコミュニケーション力などを高める専門的な支援も必要と考えています。
議員御提案の農業者と金融機関や農機具メーカーなど異業種とのマッチングも、そのひとつと考えております。
今後とも、長期的視点に立って、経営発展のステップに応じた切れ目無い支援を行い、優れた経営感覚を備えた農業経営者の確保・育成に努めてまいります。
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