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掲載日:2024年12月11日
Q 木下博信 議員(改革)
この質問の基になる視点、それは厚生労働省の元虐待防止室長と、ざっくばらんに意見交換している中で頂いた視点です。警察と児相との情報共有だけでなく、どういう取組を加えていったら虐待死をゼロにできるのか。ああじゃない、こうじゃないと、あれこれ思考をめぐらせ討議していって、最後に「木下さん、実は児相をはじめ、今の仕組みはタイガーマスク時代のままなんですよ。それを虐待死が生まれるようになった今の時代に適合させようとしていることが、実は問題の解決を遠のかせていっているんじゃないかなと思うんです」と言われました。同じゼミで、行政の仕組みの不都合をいかにして解決するかという思考を繰り返し学んだ者同士ですので、年は離れていますが、彼の言わんとしていることがダイレクトに伝わってきました。「それ、一番最初に言ってくれよ」と思ってしまいましたけれども、本質的な問題を教えてくれてありがとうと感謝しました。
児童相談所、一時保護施設、児童養護施設、これら戦後の社会が混乱している中、保護者がいない子供たちを保護し、育て、社会に送り出す仕組みです。正に、昭和中期のアニメ「タイガーマスク」の時代の仕組みです。当然にして、その仕組みにはその時に合った職種や人材が配置され、運営されてきました。
それから時は流れて、もう平成も終わろうとしています。社会は急速に変化し、保護者がいなくなって路頭をさまよう子供たちへの対応から、保護者がいて虐待やネグレクトの危険にさらされている子供たちを保護者から離し、保護していくほうが中心になってきています。その変化に対応するため、今の仕組みの足りないところを強化し、職員の配置を工夫し、何とかしようとしてきました。我が会派の中川議員が児相に県警OBの配置を求めたりしてきたのも、その一環です。しかし、実は何かが足りないんじゃなくて、対象者が違うんだから、違う仕組みをこっちにつくらなきゃならないんじゃないか、そのことを象徴的に指摘したのが、さきの「タイガーマスク時代の仕組みなんですよ」だったんです。
仮にそのとおりだと考えてみたら、どうなるでしょう。虐待死ゼロを目指していくために児相を強化していくのではなくて、全然違う入口と仕組みを用意してみたら、もしかしたらより少ない負担でより多くの子供たちを救えるかもしれません。従来の仕組みを強化していくことで虐待ゼロを実現する取組は、兵庫県明石市で泉市長が強力なキャラクターとけん引力で挑戦しています。会派で現地を訪れ、様々に学ばせていただきましたが、その挑戦は成功する可能性が高い気がします。同時に、あの市長の強烈なキャラクターと弁護士を多数雇用するなど、自身も弁護士であり、相当の人脈があるから実現できていることだなとも感じました。そして、明石市で成功して他が追随できるだろうかと考えたとき、正直、全国で模倣するには難しいのではないかという印象だったんです。
そこで、同じことを求めるのではなく、従来型の強化・充実、これを膨らませていく、それは明石市がやっているのであれば、別のところで従来型をそのまま維持し、虐待、ネグレクトという新しい増加してきた課題に対する別の仕組み、これを作っていくアプローチをするところがあってもいいのではないでしょうか。どこがやってもいいんですけれども、日本の縮図である埼玉で考えてみませんか。これについては検討、立案、実施してくださいとまでは言いません。そこに可能性があると感じても、本当にそれで解決に向かえる確信はないからです。
しかし、同時に、明石の例を見ていると、あそこまでの仕組みと体制を加えなければならないのだったら、虐待の時代に対応する新たな仕組みを作った方が、より早くシンプルに成果を埋める仕組みが作れる可能性、十分にあるとも感じます。それは、警察を中心にした仕組みかもしれません。市町村を中心にした仕組みかもしれません。地域社会を中心にした仕組みかもしれません。その全てが連携したものになるかもしれません。どこがやるかを決めることなく、あれこれ考えてみてはいかがでしょう。
埼玉に生きる子供たちが、様々な環境の中でもそれぞれに未来を描いていく、夢を持つことができるようにしていくために、もしかしたら新たな仕組みを作って、うまくいくかもしれないという視点で、硬くならずにいろんな人が集まって次年度、ブレーンストーミングをしてみてほしいのです。結果、従来型しかないとなったら、大変ですけれども、明石型をフォローしていくのかもしれません。でも、全く違う方法が出てくる可能性あります。みんなであれこれ考え、討議している時間の人件費はかかりますが、その可能性を考えてみることは、是非試していただきたいのですが、いかがでしょう、知事のお考えをお聞かせください。
A 上田清司 知事
児童相談所の歴史的経過についても御指摘をいただきました。
戦争などで親を失った児童が施設や里親の下で養育されるよう児童を保護する役割を主に担っていたのがスタートです。
その後、家庭からの養育相談や障害のある児童の支援、非行問題への対応など、業務の重点が移ってきました。
さらに、児童虐待が社会的にも注目され始めたことから、平成12年には児童虐待防止法が施行されました。
これにより児童虐待の疑われる家庭への強制的な立入調査など新しい仕組みが作られました。
また、安全確認の際の48時間ルールは本県が全国に先駆けて導入し、現在では全国のルールになっています。
昨年6月には警察との間で児童虐待情報の共有に関する協定を締結し、今年8月から全ての情報を共有することにいたしました。
地域の民生・児童委員や保育士の皆さんなどを対象にした児童虐待防止のサポーター制度も昨年から始めたところです。
このように、本県でも児童虐待を防止するための新しい仕組みを順次取り入れてきております。
児童相談所の役割がこうして徐々に変わっていくような状況になってきております。
こうした取組にも関わらず、虐待による悲惨な事件はなかなか後を絶ちません。
一番困難なことは、虐待が家庭という密室でひそかに、あるいは突然に行われることから、児童相談所だけの対応では限界があるということでございます。
市町村や警察、学校、地域、さらには保護司会、更生保護女性会、子ども食堂など様々な民間団体がそれぞれクモの糸を張って、そのクモの糸が折り重なって情報のシグナルがより正確になってくる、あるいは多岐にわたって入ってくる、そういうものを作っていくしか、今のところは決定的な方策はないのかなと思っております。
何か新しい仕組みがないのかという御提案もいただきましたが、今大事なことは何よりも、地域や社会全体が子供を見守るという居場所づくりというのでしょうか、そういうものが満ちあふれていればこんなことは起こらない訳ですので、そういうものを一つ一つ積み上げていくしかないというのが、私の今の考え方であります。
多分、即効薬というか決定打というのは、なかなか難しいのではないかと思っておりますので、御理解を賜りたいと思っております。
議員が御指摘されたように社会の変化のスピードが速いこともあって、様々な分野で活躍されている方々の意見や、あるいはまた考えを聴くことは、今日、大変重要であると思っております。
今後、幅広く意見交換ができるような形をとって、更に児童虐待防止にしっかりと取り組めるようにしていきたいと思っております。
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