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掲載日:2023年5月18日
Q 並木正年議員(県民)
いよいよ平成30年から都道府県が国保の財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営、効率的な事業確保の中心になります。しかし、現在の国保は、被用者保険と比べて平成24年の全国データによると平均年齢が50.4歳と高く、一人当たりの医療費は伸びる一方となっています。さらに、低所得者が多いため保険税負担が重いという構造的な問題を抱えています。年齢構成では、65歳から74歳の割合が健保組合の2.6パーセントと比較し、32.5パーセントと多く、一人当たりの医療費も健保の14万4,000円に対して、31万6,000円と高くなっています。また、加入者一人当たりの年間平均所得では、健保の200万円に対して、国保は83万円と低く、さらに無職と職業不詳の割合が平成25年のデータによると51パーセントと非常に高い割合となっています。
本県における収納率も平成21年度の85.96パーセントから、平成25年度には88.84パーセントとやや改善しているものの、全国平均を下回っております。
また、医療費、所得、保険税の市町村格差も多く、平成25年度の保険税で見ると県内平均は9万795円ですが、最大が川島町の10万6859円に対し、最小である小鹿野町では6万469円と約4万円も開きがあることで、同じ年収でありながらも自治体ごとに保険税が違うといった不公平感も出てきているようです。
県内の自治体では、収納率のアップや健康増進への取組など様々な努力をしていますが、年齢構成の変化や医療費の増加によって、国保運営は非常に厳しい状況が続いています。
国では、平成26年度に実施した低所得者向けの保険税軽減制度500億円に加え、本年度から低所得者対策の強化として、保険税軽減対象となる低所得者数に応じた自治体への財政支援、1,700億円を拡充しています。さらに、給付増や保険税の収納不足により財源不足になった場合に備え、一般財源からの補填を行う必要がないよう都道府県に財政安定化基金を設置し、都道府県や市町村に貸付や交付ができる計画案を示しています。国は2,000億円の規模を目指し、今年度は200億円を措置するとのことです。
新制度において、県は市町村ごとの標準保険税を設定し、それを参考に市町村は条例で税率を定めます。標準保険税率は、市町村の規模別の標準的な収納率に基づき算定することとされています。埼玉県が今年3月に策定した第3次埼玉県市町村国保広域化等支援方針では、目標収納率を被保険者数1万人未満の市町村は94パーセント、1万人以上5万人未満は93パーセント、5万人以上10万人未満は92パーセント、10万人以上は91パーセントとしています。
しかし、一例を挙げると、被保険者が1万人未満の東秩父村では、平成25年度の収納率が99.12パーセントで既に94パーセントの目標を達成しています。逆に被保険者数が10万人以上の川口市では、91パーセントの目標に対して81.32パーセントと、10パーセント近くも下回っている状態です。これでは一般会計からの繰り入れや保険税の上昇につながってしまうと思います。
こうしたことを踏まえ、4点伺います。
まず、保険税の収納率についてですが、平成25年度の本県の保険税収納率88.84パーセントを、せめて全国平均の90.42パーセントのレベルまで上げていく必要があると思います。県では今後、収納率向上に向けてどのような取組を行っていくのか。
次に、新制度移行に伴い、急激な保険税の上昇を抑えられるような、標準収納率の設定が必要と考えます。県では標準的な収納率をどのように設定する予定でしょうか。また、市町村が県の設定した収納率以上の高い収納率を積極的に目指すような、何らかのインセンティブを設けるべきだと思いますがいかがでしょうか。
最後に、新設される財政安定化基金を活用した保険税率の激変緩和措置などの対応が必要と考えます。いかがでしょうか。
以上、4点について保健医療部長に伺います。
A 石川 稔 保健医療部長
都市部では収納率が低くなる傾向がある中で、本県では、埼玉県市町村国保広域化等支援方針を策定し、平成22年度以降、市町村の収納率向上を支援してまいりました。
その結果、平成25年度の収納率は88.84%と、方針策定前の平成21年度と比較すると約3%上昇しておりまして、全国平均にあと1.6%のところまで来ております。
収納率向上は、国保運営の健全化に直結する重要な課題でございます。
これまで、市町村の収納担当者に対する研修はもとより、徴収の専門職員を市町村に派遣し実地の指導や助言、個別相談などを行ってまいりました。
こうした取組により、平成25年度末の差押件数は、17,174件と全国第3位となっております。
さらに、納税者の利便性向上のため、コンビニ収納の利用拡大にも努めております。
加えて、ATMで簡単に納税ができたり、インターネットで口座振替の手続きができるようにするなどの先進的な取組に対しましても、財政調整交付金で支援をすることといたしました。
こうした取組を積み重ねることにより、引き続き市町村の収納率向上を支援してまいります。
次に、標準的な収納率の設定についてでございます。
現在、国と地方の協議の場である国保基盤強化協議会において、標準保険税率の算定方法と併せて、標準的な収納率の設定につきましても検討されており、平成28年秋頃までに決定されると伺っております。
県ではその結果を踏まえますとともに、第3次埼玉県市町村国保広域化等支援方針において、被保険者数に応じて4グループに分けて設定した目標収納率との整合性も図り、適切に標準収納率を設定してまいります。
次に、収納率向上に向けたインセンティブについてでございます。
インセンティブにつきましては、すでに制度設計の中で用意されています。
まず、市町村は、県が設定する標準的な収納率よりも高い収納率を上げることができれば、保険税率を今より低く設定することもでき、また、健康づくり事業など他の事業に活用することもできるようになります。
さらに、収納率の向上など努力した自治体に対し支援金を交付する保険者努力支援制度が新設されたことにより、この評価を受ければ、市町村は新たな国保の財源が増えるというメリットが生じます
最後に、財政安定化基金を活用した保険税率激変緩和措置についてです。
新設される県の財政安定化基金は、予定外の給付の増加や保険税の収納不足により財源不足となった場合に備え設定されるものです。
平成25年度は、保険税収入が約1,833億円に対し、296億円の法定外繰入金が支出されています。
標準保険税率の算定方法はまだ明らかになっておりませんが、仮に法定外繰入金を全て保険税収入で賄うとすれば、現在の保険税率は1.2倍にする必要がある計算になります。
保険税率を大幅に引き上げなければならなくなった場合には、激変緩和策として基金を使用する必要もあると考えます。
一方、現在の保険税率が本来あるべき額から低く抑えられている市町村に対し安易に基金を用いることは、他の市町村との公平性の観点から慎重に検討する必要もございます。
県では、今後とも新制度への円滑な移行とその後の安定的な運営が図れますよう、市町村と十分協議をしながら、準備を進めてまいります。
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