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掲載日:2023年7月11日

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懲戒処分の妥当性について

5 雇用関係の終了(解雇・退職等)・懲戒処分

5-8 懲戒処分の妥当性について

質問です

先日、上司から、課長から係長への降格の懲戒処分を口頭で言い渡されました。就業規則には、就業規則違反の理由等を記載した文書を交付する旨の規定があるのですが、その文書が交付されません。
降格を言い渡される覚えはなく、上司の個人的な感情によるものだと思われるのですが、このような処分は有効なのでしょうか。

ここがポイント

  • 懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒の種類・内容が明記されていなければなりません。
  • 懲戒事由が存在しても、懲戒権濫用として処分が無効となる場合もあります。

お答えします

一般的に使用者には企業秩序を維持するために懲戒権があり、労働者が服務規律や業務命令に違反した場合などには、就業規則等の規定に基づいて懲戒処分をすることができます。
しかし、使用者は、就業規則等に記載すればどのような懲戒処分も自由にできるというものではなく、処分に合理性が認められるものでなくてはなりません。
懲戒処分の有効要件としては、一般に、以下の4つを満たしていることが必要とされています。

  • (1) 罪刑法定主義の原則
    基本的には、懲戒事由、懲戒の種類・内容は、あらかじめ就業規則等に定めておくことが必要です。
  • (2) 平等取扱いの原則
    違反行為の内容や程度が同じ場合には、それに対する懲戒の種類や程度も同じでなければなりません。特別な理由もなく、人により処分の重さを変えてはなりません。
  • (3) 相当性の原則
    違反内容と処分内容が均衡していることが必要です。懲戒処分にも戒告といった軽いものから解雇といった重いものまでありますので、違反行為の程度がそれぞれの処分をするに値するものでなくてはなりません。
    些細なミスなどで懲戒処分をすることは、権利の濫用として無効になると考えられます。
  • (4) 適正手続
    就業規則などに定められた手続を適正にとっていることが必要です。
    例えば、処分の対象者に弁明の機会を与えるという規定があるにもかかわらず、これを与えないで処分した場合、適正な手続がとられたとは言えません。

いずれにしましても、降格処分の理由が示されていない以上、処分の相当性について検討することができませんし、就業規則に規定されている文書の交付がないことから、手続的に有効な処分とはいえないと考えられます。
懲戒処分が、懲戒事由に該当する行為の性質、態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、その懲戒処分は無効となります(労働契約法第15条)。
降格の懲戒処分を言い渡した上司に理由を確認することが必要ですが、明確な回答がない、あるいは身に覚えのない理由を示されるようでしたら、社長等に直接申し出るのがよいでしょう。

ここにも注意!

降格について
降格とは、役職・職位・資格が引き下げられるもので、懲戒処分として実施されるもののほか、人事権の行使としての降格や職務資格制度における資格の引き下げとしての降格などがあります。
降格により賃金が低下する場合については、職位と職務内容が変わり、賃金はその職務内容に追随して決まることになるので、降格が有効である限り、原則として降格に伴う賃金引き下げは許されます。
行政解釈では、「職務の変更に伴う当然の結果であるから労働基準法第91条(1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。)の制裁規定の制限に抵触するものではない」(昭26年3月14日基収第518号)とされています。
ただし、懲戒権や人事権等の濫用とならないことが必要です。

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