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ページ番号:4038

掲載日:2020年4月1日

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会社からの損害賠償請求について

10 その他

10-2 会社からの損害賠償請求について

質問です

運送会社に勤務していますが、勤務中に私の不注意で事故を起こしてしまい、会社のトラックと積み荷を破損してしまいました。
会社からトラックの修理代と積み荷代を全額弁償するように言われたのですが、このような場合、全額負担をしなければならないのでしょうか。

ここがポイント

労働者が弁償しなければならない範囲は、通常、損害の全部ではなく一部です。

お答えします

労働者が、業務上の過失などで使用者に損害を与えてしまった場合には、使用者に対する損害賠償責任が発生すること自体は否定できません。
使用者としては、民法の規定により、労働者が労働契約上の債務を履行していないとして、債務不履行による損害賠償(民法第415条)を請求したり、故意・過失によって損害を与えたとして、不法行為による損害賠償(民法第709条)を請求することが考えられます。
また、労働者が第三者に損害を与え、使用者が損害賠償をしたときは(民法第715条第1項)、使用者は労働者にその費用を求償することができます(民法第715条第3項)。
しかし、労働者が使用者のために、その指揮命令によって業務を遂行し、その過程で発生した損害のすべてを労働者が弁償しなければならないとするのは、あまりにも労使間の公平性を欠きます。業務の内容によっては、常に損害が発生する危険を伴うものもあると思われます。
このため、労働者の弁償しなければならない範囲は、損害の全部ではなく、一部であるとするのが判例・学説の考え方です。
労働者の責任の範囲については、個々の事例ごとに実情に応じた判断をすることになりますので、会社と十分話し合った上で、具体的な損害賠償額を決定するのがよいと思われます。少なくとも、会社所有のトラックについては、保険に加入しているものと思われますので、過大な負担をしないように注意しなければなりません。
なお、話し合った結果、会社から提示された額に納得できないようでしたら、安易に賠償額が記載された書面などにサインをしないようにしてください。簡易裁判所に民事調停を申し立てる、さらには本訴訟を行うという方法も考えられます。

ここにも注意!

  • 茨城石炭商事事件(最高裁小判 昭51年7月8日)
    使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他の諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
    ※ この事例では、労働者に対し賠償及び求償しうる範囲は、「信義則上損害額の4分の1を限度とすべき」とされました。
  • 居眠りによる工作機械への損害につき4分の1とされた事例(名古屋地裁判決昭62年7月27日 大隅鐵工所事件)、交通事故につき3割5分とされた事例(名古屋地裁判決平10年9月16日 秋田運輸事件)など、労働者の責任の範囲については、個々の事例ごとに実情に応じた判断がされています。

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