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掲載日:2023年7月11日

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自宅待機と休業手当について

2 賃金・賞与(ボーナス)

2-3 自宅待機と休業手当について

質問です

今日社長から、「仕事が減ったので3か月間自宅待機をしてほしい」と言われました。
その間の給料は支払われないとのことなのですが、仕事をしていない以上給料はもらえないものなのでしょうか。

ここがポイント

  • 労働基準法の規定により、休業に「使用者の責に帰すべき事由」がある場合は、最低、平均賃金の6割以上の休業手当を請求できます。
  • 民法の規定によると、「債権者の責に帰すべき事由」がある場合は、賃金の全額について請求できます。
  • 民法の「債権者の責に帰すべき事由」よりも、労働基準法の「使用者の責に帰すべき事由」のほうが、範囲が広く解されています。

お答えします

「休業」とは、労働者が労働契約にしたがって労働を提供する準備をし、かつ、労働するという意思があるにもかかわらず、使用者に労働の提供を拒否され、又は不可能となった場合をいいます。御相談にあるような自宅待機を命じることは、この「休業」に該当します。
以下、休業中の賃金の請求権について御説明します。

1 民法の規定では
まず、民法第536条の規定によると、次のように考えられます。

  • (1)休業の責任が労使のどちらにもないとき(天災事変など)
    労働者には、休業中の賃金を請求する権利はありません(第1項)。
  • (2)休業の責任が労働者にあるとき
    労働者の債務不履行と考えられ、労働者には、休業中の賃金を請求する権利はありません。
  • (3)休業の責任が使用者にあるとき
    労働者は、休業中の賃金の全額について請求する権利があります(第2項)。

2 労働基準法では
次に、労働基準法第26条の規定によると、休業の責任が使用者にあるときは、労働者は、平均賃金の6割以上の休業手当の支給を請求することができます。

3 民法と労働基準法の違いは
民法第536条の規定(全額請求が可能)は、当事者の合意により、その適用を排除することができます。一方、労働基準法の規定(6割以上の請求が可能)は、当事者の合意によりその適用を排除することはできませんので、最低、平均賃金の6割は保障されます。
また、「使用者の責に帰すべき事由」の範囲に違いがあり、労働基準法のほうが民法より広く、「企業経営者として不可抗力を主張しえない一切の事由」を含みます。民法の「故意・過失又は信義則上これと同視すべき事由」に限られず、労働基準法の範囲は、「使用者側に起因する経営・管理上の障害」を広く含むと考えられています(ノース・ウエスト航空事件・最二小判昭62年7月17日)。
なお、民法上の権利により実際に全額を支払ってもらうためには、最終的には民事訴訟の手続によらなければならないので、労働者の保護としては十分ではありません。このことからも、労働基準法第26条の規定が設けられています。
このように、使用者の責任により休業した場合には、最低でも平均賃金の6割の休業手当の支給を請求でき、民法の規定を排除する特約が締結されていない場合は、賃金の全額について請求できる場合もあります。ただし、裁判所は、民法の適用除外については慎重に判断する傾向にあります。

4 今回の事例では
「仕事が減った」理由にもよりますが、経営難による休業についても、企業経営上当然予見できるような休業については、原則として、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、平均賃金の6割以上の休業手当の支給を請求できると考えられます。
なお、使用者の故意や過失により「仕事が減った」場合は、賃金の全額の支払いを請求できることになりますが、民法の適用を排除するような特約が締結されていることも多いので、就業規則や労働協約等をよく確認した上で、使用者に請求してください。
請求の方法としては、口頭のほか、配達証明付きの内容証明郵便により文書で請求する、支払督促民事調停少額訴訟など簡易裁判所を利用する、労働基準監督署に申告して指導してもらうことが考えられます。

ここにも注意!

  • 労働基準法第26条の「使用者に責任がある休業」の例
    工場の焼失、機械の故障、原材料不足、資金難、生産過剰による操業短縮、監督官庁の勧告による操業停止、など
  • 使用者の中には、いかなる場合も平均賃金の6割を支給すればよいと誤解している方もいますが、就業規則や労働協約等に特段の定めがない場合は、全額を請求できる場合がありますので、その旨を申し出てください。
  • 賃金その他の請求権は、3年間行使しない場合は時効により消滅することになりますので注意してください(労働基準法第115条、第143条)。
  • 事例2-1の「ここにも注意!」裁判所を利用した制度)を参照

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