環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その19
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掲載日:2023年1月13日
私たちの生活から排出される「ごみ」は様々な方法により処理や再利用がなされるが、どうしてもこれらができないものは廃棄物最終処分場と呼ばれるごみ埋立地(写真)に埋め立てられる。平成十七年度に埼玉県内で排出されたごみ(一般廃棄物)の量は二百七十二万八千トンであり、リサイクルや焼却処理を経て最終的には約8%に相当する二十一万八千トンが埋め立てられた。日本は世界的に見ても高度な廃棄物処理や衛生的な埋立処分が行われており、ごみ埋立地は周辺の環境が汚染されないように各自治体が厳重に管理している。
埋め立てられたごみは、微生物による分解や降雨による洗浄効果などによって、生物的あるいは物理・化学的に変化を起こさない安定な状態になっていく。しかし、完全に安定化した状態になるには、研究者によっては数十年から数百年を要すると言われている。そのため、ごみ埋立地の内部がどのくらい安定化しているのかを調査することは、ごみ埋立地の安全な管理のためにも重要な課題となっている。
環境科学国際センターでは、ごみ埋立地内部に観測用の井戸を設置し、埋立地の内部から浸み出てくる水(浸出水)、ガス、温度などに関する様々な調査を通じ、ごみ埋立地の内部の安定化について研究してきた。浸出水に含まれる汚濁物質の濃度や内部の温度が低下していくことが、十年以上にわたる研究結果から明らかになり、ごみ埋立地が安定化していく様子を把握してきた。一方で、観測用井戸の調査結果だけでは広い埋立地の全体を調査することができない、といった問題点も明らかになってきた。
これらの問題の解決策として、比抵抗探査と呼ばれる調査手法を導入した。比抵抗探査とは、地中に電気を流し電気の流れやすさ(比抵抗)を測定しコンピューター解析を行うことにより、地下断面の状態を非破壊的かつ視覚的に把握することができる手法である。図は、埼玉県内のごみ埋立地で実施した比抵抗探査の結果である。横軸は地表面、縦軸は地下方向深さを示しており、深くなるにつれ色が白くなっていくことがわかる。白色系になると比抵抗の値が低くなる、すなわち電気が流れやすくなることを示している。この場合、様々な化学物質の濃度が高く、かつ湿った状態であり、安定化は進行中であることがわかった。このことから、比抵抗探査がごみ埋立地の安定化の様子を広範囲に把握できる手法であることが確認された。
ごみ埋立地の安定化の様子を把握し、ごみ埋立地のより安全な管理を目指して、比抵抗探査による調査手法の確立を急いでいる。
廃棄物管理担当 磯部 友護
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