環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その20
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掲載日:2023年1月16日
2008年10月13日掲載
従来の河川行政は治水、利水に重点を置いてきた。特に都市部での護岸工事においてはコンクリート三面張りが多くなり、人々を川辺に近寄りがたいものとした。
しかし、近年、生物の良好な生育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全、創出する「多自然川づくり」が見直されるようになり、護岸工事も自然に配慮した工法を取り入れるようになった。この多自然護岸は蛇篭、自然石、丸太などを利用したもので、河川の自然浄化作用を促進することができる。この環境は河川中の植物や動物などの水生生物により良い生育環境を提供し、私たちにとっては親しみのある水辺空間となる。
また、昭和三十年代の高度成長期に汚濁が進んだ河川の水質も、工場排水の規制、下水道の整備、合併処理浄化槽の普及などにより少しずつではあるが改善されている。
しかし、河川の水質改善はまだ十分ではなく、その汚濁原因の約73%は家庭からの生活排水である。特にその大半が台所排水、風呂水、洗濯水などが未処理のまま排水される生活雑排水である。
埼玉県では、人と生き物の豊かさが育まれる水辺空間(里川)を取り戻すために、地域住民、河川浄化団体、学校及び企業と連携し、さまざまな取り組みを行っている。
たとえば、県が主催する里川づくり県民推進事業の会議に各河川浄化団体のかたに参加をお願いし、河川の浄化対策や汚濁防止の啓発などに助言を頂いている。また、生活雑排水による河川の汚濁を防ぐために地域の自治会に協力をお願いし、流域の各世帯にキッチンペーパー、スクレーパーなどの生活排水対策用品を配布し、家庭でできる水質改善の実践的な取り組みを集中的に実施している。
さらに環境科学国際センターでは、市町村、小中学校あるいは河川浄化団体が主催するイベントの環境講座に協力している。また、河川の浄化のしくみや水質調査などの体験型環境学習も行っている(写真1)。
一方、地域住民や河川浄化団体も独自の取組を行っている。小中学校の総合学習の時間を利用し、室内ではそれぞれの経験を基に子ども達に河川の現状と汚濁防止に関する学習指導を行い、校外では生物調査や水辺での水質簡易試験などの水質調査を実施している(写真2)。
河川浄化活動では、クリーン作戦などの河川美化運動に地域総ぐるみで参加し、川に捨てられたペットボトル・瓶・缶、自転車、電気製品などを自治会の人々が引き上げ、それを自治体が処理する、官民一体の浄化活動を行っている。
河川浄化のための啓発活動では、定期的に河川流域の水質を調査し、河川の状況を把握するとともに家庭でできる生活排水対策のためのチェックシートを作成するなどを行っている。
このように、川とのふれあいを持つことで各地域における住民や河川浄化団体と行政との連携をさらに進め、河川水質改善へ向けて共に取り組むことが必要である。
写真1 環境科学国際センターによる環境学習
写真2 浄化団体による環境学習
埼玉県環境科学国際センター 水環境担当 鈴木章
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