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ページ番号:21666

掲載日:2023年1月16日

埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その16

2008年9月15日掲載

水生生物への影響が懸念される化学物質

PFOSと紫外線吸収剤

化学物質はわたしたちの暮らしを豊かにし、便利で快適な生活の維持に欠かせないものとなっている。日常生活や事業活動において多くの化学物質が使用されているが、それらの一部は大気や水、土壌などの環境へと排出されている。ここでは、これらの化学物質のうち、近年、新たに河川環境への汚染が懸念される物質として注目され始めている、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)と紫外線吸収剤について解説する。

有機フッ素化合物であるPFOSは、撥水・撥油作用や界面活性作用を持つ物質で、これまでに衣類などの水ぬれ、汚れの防止に使われてきた。この物質は環境中でほとんど分解されず、最近の研究では動物に対する発がん性、免疫系障がい、生殖障がいなどが指摘されている。PFOSの生産量は、平成十二年に大手メーカーが生産から撤退したため大幅に減少したが、いまでも半導体工場やメッキ工場の薬剤、泡消火剤、殺蟻剤などに利用されている。環境基準や排出基準は定められていないが、早ければ平成二十一年にも残留性有機汚染物質として製造・使用、輸出入が原則禁止、または制限される予定である。

環境科学国際センターが、県内三十五河川三十八地点の河川水について調査したところ、0.00025未満から5.1μg/L(μgは、百万分の一グラム)の範囲でPFOSが検出され、*幾何平均濃度は0.015μg/Lであった(図)。最高濃度を検出した河川について詳しい調査を行なったところ、河川水から最大で15μg/LのPFOSが検出された。この濃度は、アミ科(エビに似た小型甲殻類)の繁殖を阻害しないと予想される濃度(23μg/L)を下回っているため当面安全と考えられるが、今後もその推移を把握することにしている。

一方、紫外線吸収剤は一般的に日焼け止め成分として化粧品に使用されているほか、プラスチックや塗料、繊維などにも太陽光による色あせや劣化を防ぐ目的で使用されている(表)。埼玉県内の河川水からは、ベンゾフェノンやメトキシ桂皮酸オクチルが検出されているが、その濃度は1μg/L未満であった。これら紫外線吸収剤については、現在までに水生生物に対する内分泌攪乱作用(環境ホルモン作用)が報告されているが、その毒性については解明されていない部分が多い。また、生物蓄積性も報告されており、国内ではハマグリのような二枚貝や干潟のエビやカニ、ムツゴロウなどの魚類に蓄積していることが明らかとなっている。現在、河川や湖沼に生息する水生生物への影響を検討しており、将来的にはこれらの結果をふまえて、環境やヒトに優しい紫外線吸収剤の使用方法や製品開発について議論していく必要がある。

環境科学国際センターでは、化学物質が環境に与える影響などについて最新情報を収集するとともに、継続的な環境モニタリングを実施している。ここで得られたデータは、新たな化学物質による環境汚染の動向や発生源の把握に役立てるとともに、化学物質による環境リスクを減らし、県民の安心・安全な生活を確保するための対策の推進に活用されている。
*全てのデータの値をかけた値のn乗根

図 県内35河川38地点における河川水のPFOS濃度

表 主な紫外線吸収剤と国内の検出事例

埼玉県環境科学国際センター 水環境担当 亀田 豊、化学物質担当 茂木 守

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 水環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 化学物質・環境放射能担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

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