環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その11
ここから本文です。
ページ番号:21525
掲載日:2023年1月13日
埼玉県内の河川は、かつては子供たちが水遊びや魚取りをした清流だった。しかし、昭和三十年代の高度経済成長による工業の拡大に伴う工場・事業場排水の増加や、都市周辺に集中した人々からの未処理の生活雑排水(台所、風呂、洗濯などからの汚水)などの増加によって都市河川の汚濁は急激に悪化した。そのため「水質汚濁防止法」が制定され、河川の水質を調査するとともに工場・事業場排水の濃度規制、総量規制を実施し強化してきた。また、生活排水対策を制度化するなど各種施策を推進してきた。その結果、河川の汚濁は徐々に改善されるようになった。しかしながら平成十八年埼玉県環境白書によると、県内河川の汚濁発生源の割合は、生活排水74%、産業排水17%、畜産排水5%、その他4%であり、生活排水が約四分の三を占めている。
汚濁された河川を修復、改善するために、次の三つの方法が考えられている。
一 汚濁の発生源対策
法や条例による規制あるいは下水道の整備、合併処理浄化槽の普及など河川の汚濁対策が進められてきたが、主な汚濁発生源が生活排水であることを考えれば、排出者である地域住民のさらなる協力が不可欠である。
二 河川流量・水循環の確保
下水道が普及すれば河川の汚濁は減少する。しかし、本来は河川に戻るべき水が下水道に流れるため河川水量も減少する。また、湧水の枯渇などにより中小河川の流量の減少がある。河川には一定の水量が流れていれば自然に浄化する作用(自浄作用)が働きやすいが、特に冬季の渇水期には水量が極端に少なくなる河川もあり、水量の確保は重要である。水量確保のための施策として、
三 自然で多様な水辺環境の確保
従来の河川行政は治水、利水に重点を置いてきた。近年、生物の良好な生育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全、創出する「多自然型川づくり」が見直されるようになった。護岸工事においてはコンクリート三面張りを見直し、蛇篭護岸(写真1)、自然石護岸、丸太護岸などを造ることによって河川の自浄作用を利用することができる。環境科学国際センターにある実験水路で、レンガと栗石を護岸に見立て水質浄化実験を行なったところ、レンガ護岸に対して栗石護岸では窒素化合物の浄化能力は三倍も高かった(写真2)。河川改修では、魚の住みかとなるワンド(河川の所々に造った入り江のこと)を設置することにより水生生物により良い生育環境を提供し、私たちには親しみのある空間となる。河川中のヨシなどの植物も適切に管理すれば水質浄化に役立てることができる。
河川は汚さないことが一番重要であり、汚れた川をきれいにするには多くの費用と労力を必要とすることを知っておかなければならない。
多自然型護岸工法の例(蛇篭護岸工法)
実験水路を用いた多自然型護岸工法の実験
水環境担当 鈴木 章
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください