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掲載日:2024年3月26日
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答申第26号(諮問第34号)
答申
1 審査会の結論
審査請求人(以下「請求人」という。)が行った審査請求は、不適法であるから、却下すべきである。
2 審査請求等の経緯
(1)原処分の経緯
ア 請求人は、埼玉県個人情報保護条例(以下「条例」という。)第15条第1項の規定に基づき、埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)に対して、平成21年2月25日付けで「平成16年12月26日通行禁止キップ・供述調書(甲)」の開示請求を行った。
これについて、実施機関は、「告知報告書(交通反則事件簿)」、「供述調書(甲)」及び「取締り原票」を開示請求の対象と特定し、いずれも平成21年3月12日付けで、「告知報告書(交通反則事件簿)」及び「供述調書(甲)」については条例第21条第2項の規定に基づき開示をしない旨の決定を、「取締り原票」については条例第21条第1項の規定に基づき部分開示決定を、それぞれ行い、請求人に通知した。
イ 請求人は、条例第15条第1項の規定に基づき、実施機関に対して、平成21年3月18日付けで「平成18年11月3日整備不良の供述調書(山形)」の開示請求を行った。
これについて、実施機関は、平成21年4月2日付けで、条例第21条第2項の規定に基づき、開示をしない旨の決定を行い、請求人に通知した。
ウ 請求人は、条例第15条第1項の規定に基づき、実施機関に対して、平成21年3月18日付けで「平成18年11月6日速度超過の供述調書(宮城)」の開示請求を行った。
これについて、実施機関は、平成21年4月2日付けで、条例第21条第2項の規定に基づき、開示をしない旨の決定を行い、請求人に通知した。
(2)審査請求の経緯
請求人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)に基づき、平成21年5月1日付けで、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、「供述調書(甲)」、「平成18年11月3日整備不良の供述調書(山形)」及び「平成18年11月6日速度超過の供述調書(宮城)」(以下「本件対象保有個人情報」という。)の開示をしない旨の決定の取消しを求める旨の審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
(3)審査の経緯
3 請求人の主張の要旨
開示請求を行った3件の事案については、いずれも道路交通法被疑事件として不起訴処分となっているのであるから、本件対象保有個人情報はいずれも刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第53条の2第2項のいう「訴訟に関する書類」に該当しない。
よって、実施機関が、本件対象保有個人情報が「訴訟に関する書類」に該当するとして、条例第60条第2項により条例第4章(開示、訂正及び利用停止)の規定が適用されないとの理由で開示しなかったのは不当である。
4 諮問庁の主張の要旨
本件対象保有個人情報が記録された公文書(以下「本件対象文書」という。)は、司法警察職員が刑事訴訟法第198条第1項の規定に基づき被疑者の取調べを行った際に同条第3項の規定に基づき作成した供述調書である。
供述調書は、刑事訴訟法第53条の2第2項に規定する「訴訟に関する書類」に該当することから、本件対象保有個人情報については条例第4章の規定は適用されない。
このため、実施機関は本件対象保有個人情報の開示をしなかったものである。
5 審査会の判断
(1)不起訴事件書類の「訴訟に関する書類」該当性
ア条例第60条第2項は、「第4章の規定は、(中略)法令の規定により行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第4章の規定の適用を受けないこととされる保有個人情報については、適用しない。」と規定している。また、刑事訴訟法第53条の2第2項は、「訴訟に関する書類及び押収物に記録されている個人情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第4章及び独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)第4章の規定は、適用しない。」と規定している。
刑事訴訟法第53条の2の趣旨を考えるに、まず、次のような前提状況がある。第一に、犯罪捜査及び刑事訴訟手続上使用される書類には、高い秘密性が求められる。なぜなら、自己が被疑者や参考人等であることは、通常、他人に知られたくないこと、また、これらの書類を開示することにより捜査手法等が知れると検挙率の低下を招きかねず、公共の安全と秩序維持に支障を来しかねないこと等があるからである。第二に、捜査・公判に関する活動の適正確保は、究極的には司法機関である裁判所により図られるべきものである。第三に、犯罪捜査及び刑事訴訟手続上使用される書類については、刑事訴訟法や刑事確定訴訟記録法(昭和62年法律第64号)により、開示・不開示の要件や開示手続が体系的に整備されている。
そこで、刑事訴訟法第53条の2第2項の趣旨であるが、同項は、こうしたことを総合的に考慮した結果、犯罪捜査及び刑事訴訟手続上使用される書類の開示については、刑事訴訟法や刑事確定訴訟記録法の手続に委ね、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第4章に定める個人情報保護制度の適用を、そもそも排除することにした規定であると考えられる。
イ次に、不起訴事件の書類の性質についてであるが、犯罪捜査及び刑事訴訟手続上使用される書類に高い秘密性が求められることは、起訴された事件であろうと、不起訴となった事件であろうと異ならない。さらに、捜査に対する適正確保についても、日本国憲法や刑事訴訟法における令状主義に見られるように、究極的には裁判所により図られるべきものである。したがって、不起訴事件の書類も起訴された事件の書類と区別する理由はない。
ウこうしたことからすれば、刑事訴訟法第53条の2第2項に規定する「訴訟に関する書類」とは、書類の性質・内容の如何を問わず、刑事被疑事件又は刑事被告事件に関して作成された書類をいうと解すべきである(平成16年1月16日大阪地方裁判所判決同旨)。
エこれを本件についてみると、本件対象文書は、請求人に対する各道路交通法違反被疑事件の証拠とするために作成された書類である以上、それら事件について不起訴となったとしても、「訴訟に関する書類」に該当する。
(2)結論
(1)で述べたとおり、本件対象文書は、刑事訴訟法第53条の2第2項に規定する「訴訟に関する書類」であるから、条例第60条第2項の規定により、請求人による本件対象保有個人情報の開示請求自体不適法なものであったと言える。
開示請求が不適法なものである以上、それに対する不服申立てである本件審査請求も不適法なものである。
ゆえに、本件審査請求は却下すべきである。
以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。
なお、請求人が本件開示請求をすることは不適法であるから、当審査会としては、実施機関は本件対象保有個人情報の開示請求について、埼玉県行政手続条例(平成7年埼玉県条例第65号)第7条に基づき拒否をすべきであったと考える。
(答申に関与した委員の氏名)
奥真美、徳本広孝、横山豪
審査会の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成21年6月18日 |
諮問を受ける(諮問第34号) |
平成21年8月5日 |
諮問庁から理由説明書を受理 |
平成21年9月14日 |
請求人から反論書を受理 |
平成21年9月15日 |
審議 |
平成21年10月13日 |
審議 |
平成21年12月7日 |
請求人による意見陳述及び審議 |
平成22年1月15日 |
審議 |
平成22年2月16日 |
答申 |
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