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掲載日:2024年4月2日
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答申第16号(諮問第17号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成19年度第2回警察官採用試験(適性試験1・2)における「検査用紙」及び「評価(分析結果)」(以下「本件対象保有個人情報」という。)について、平成19年11月16日付け及び平成19年12月7日付けで行った部分開示決定で不開示とした部分をすべて開示すべきである。
2 審査請求及び審査の経緯
3 請求人の主張の要旨
本件部分開示決定の「開示しない情報」で「適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」を「開示することにより、検査名称や検査種類等が明らかとなり、受験者が警察官として職務執行するに当たり、必要な素質及び適性を有しているかについて正確に判定することが困難となり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼす恐れがあることから、条例第17条第7号に該当するため。」との理由により不開示とする処分は妥当ではなく、次の理由から、取り消されるべきである。
(1)請求人を含めた平成18年度及び平成19年度第2回警察官採用試験を受験した者にとって、適性試験として行われた検査等が○○○○○○○○○○○○○及び○○○○○○であることは既知の情報であり、検査内容も一般的に知り得るものである。不開示とされた情報は、すでに公にされているものと考えられる。
(2)条例は、保有個人情報を本人に対して開示することを原則とし、「不開示情報」に該当する場合にのみ例外的に開示しないことができるとしているのであって、「適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれ」という抽象的な危険性を根拠に「適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」を「不開示情報」とすることは、「不開示情報」の範囲を著しく広げるものであって、「個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」という趣旨に照らして妥当ではない。
(3)検査名称等を知っている本年度の受験者が再度受験する場合や、本年度の受験生が他者に情報を提供した場合でも、対策を講じる受験者が出る可能性はあり、次年度以降の適性試験において同じ検査を用いるならば、正確な判定は困難だということになる。過去の試験の内容が知れることで試験の適正さが確保できなくなるのであれば、そのような採用試験はそもそも適正ではない。
(4)受験者間の公平を図るためには、「適性試験の検査名称等が明らかとなる部分」を不開示とするよりも、公文書開示請求さえすれば全ての受験者が過去の試験情報を知り得るものとして平等に試験の情報を得る機会を与えるべきである。
(5)請求人は、平成18年度第2回警察官採用試験第1次試験実施事務要領につき、人事委員会に情報公開請求及び部分開示決定に対する異議申立てを行い、「適性試験の検査名称等が明らかになる部分」につき、既に開示を受けている。人事委員会が同内容と思われる情報を開示している以上、これを不開示とする必要は存在しない。
4 諮問庁の主張の要旨
適性試験は、人柄、性行等についての質問紙法及び作業検査法による2種類の筆記試験を第1次試験種目として実施し、職務遂行上必要な素質及び適性を有しているかの判定を行っている。
質問紙法及び作業検査法による適性試験は、インターネット等において販売され、一般に容易に入手可能なものであり、判定方法や対応方法などが記述された書籍が市販されているため、請求人の評価(分析結果)を含んだ検査名称等が明らかになると、受験者は適性試験の判定を意識した受験準備をとることが十分に予想され、意識的に歪曲した回答を行うことが可能となり、受験者の警察官としての資質等の判断が適切に行われなくなるおそれがある。
したがって、請求人の評価(分析結果)を含んだ検査名称等が明らかとなる情報を開示した場合、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第17条第7号に該当する。
5 審査会の判断
当審査会において、本件対象保有個人情報に係る部分開示決定について請求人及び諮問庁の主張を検討した結果、次のように判断する。
(1)本決定の妥当性について
ア 検査用紙について
検査用紙には当該適性試験の検査名称や検査種別が記載され、適性試験1の検査用紙については、適性試験1における請求人の評価(分析結果)も記録されている。諮問庁は、検査用紙に記載されている適性試験1の請求人の評価(分析結果)を含め、検査名称等が明らかになると、受験者は適性試験の判定を意識した受験準備をとることが十分に予想され、意識的に歪曲した回答を行うことが可能となり、受験者の警察官としての資質等の判断が適切に行われなくなるおそれがあると主張している。しかし、平成19年度第2回警察官採用試験で適性試験として行われた検査名称については、請求人が受験したことにより知り得た情報であることから、不開示とした適性試験の検査名称が明らかとなる部分について、請求人がすでに知り得ている検査名称を不開示とする理由はない。
したがって、検査名称が明らかとなる情報を開示した場合、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当ではない。
イ 評価(分析結果)について
請求人の評価(分析結果)が、適性試験1については検査用紙に記録され、適性試験2の請求人の評価(分析結果)については、検査名称が記載された記録用紙に記録されている。諮問庁は、当該適性試験は、インターネット等において販売され、一般に容易に入手可能なものであり、判定方法や対応方法などが記述された書籍が市販されているため、請求人の評価(分析結果)を含んだ検査名称等が明らかになると、受験者は適性試験の判定を意識した受験準備をとることが十分に予想され、意識的に歪曲した回答を行うことが可能となり、警察官としての資質等の判断が適切に行われなくなるおそれがあると主張している。平成19年度第2回警察官採用試験で適性試験として行われた検査等は、諮問庁の主張にあるように、インターネットや書籍等において、その判定方法や対応方法について記述されたものは公にされており、適性試験の評価(分析結果)を含む検査名称等を開示すると、判定されたその評価(分析結果)をもとに、適性試験の判定を意識した受験対策を受験者がとることは予想される。しかし、今回の適性試験の判定を開示したことにより、受験者が判定を意識した受験準備をする可能性があるとしても、分析結果については、正解というものはなく、機械的に結果が判定されるものである。また、次年度以降の適性試験において、恒常的に同じ検査を用いるというわけではなく、検査内容についてはインターネットや書籍等において、一般的に知り得るものであるということを考えれば、次年度以降、同じ適性試験を実施するしないにかかわらず、受験準備をする受験者は存在するであろうことから、不開示部分を開示することにより、受験者が意識的に歪曲した回答を行うことが可能となり、受験者の警察官としての資質等の判断が適切に行われなくなるおそれがあるとは言えない。
したがって、請求人の評価(分析結果)が明らかとなる情報を開示した場合、警察官採用試験業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当ではない。
(2)結論
以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
大橋豊彦、栗田和美、西村淑子
審査会の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成20年3月26日 |
諮問を受ける(諮問第17号) |
平成20年4月23日 |
諮問庁から理由説明書を受理 |
平成20年5月20日 |
審議 |
平成20年6月 6日 |
審査請求人から反論書を受理 |
平成20年6月24日 |
諮問庁からの意見聴取及び審議 |
平成20年9月16日 |
審議 |
平成20年10月14日 |
審議 |
平成20年11月18日 |
審議 |
平成20年12月2日 |
諮問庁からの意見聴取及び審議 |
平成21年2月17日 |
審議 |
平成21年3月19日 |
審議 |
平成21年3月27日 |
答申 |
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