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掲載日:2024年3月26日
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答申第15号(諮問第16号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県人事委員会(以下「実施機関」という。)が、「平成18年度第2回警察官採用試験論(作)文試験評定表(11班)」(以下「本件対象保有個人情報」という。)について、平成19年11月15日付けで行った部分開示決定で不開示とした部分のうち、「備考」を開示すべきである。
実施機関が行ったその余の決定については、妥当である。
2 異議申立て及び審査の経緯
3 申立人の主張の要旨
本件対象保有個人情報のうち「評点及び備考」を「受験者の論文試験の評価については、警察官採用試験論文試験の評定の方法、評定委員の評価及びコメントが記載されており、当該情報が受験者に開示されると、今後も実施される当該試験における評定方法が推定され、受験者の正確な能力の把握が困難になるなど、試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあり、条例第17条第7号に該当するため。」との理由により不開示とした処分は妥当ではなく、次の理由から、取り消されるべきである。
(1)文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を有しているかについて評価する場合、その基準は、民間企業等の採用試験や大学等の入学試験において課される作文、小論文試験等における評価基準と大差ないはずであり、書籍や予備校等を通じて誰でも容易に知り得るものである。
(2)埼玉県が、文章による表現力、課題に対する理解力、思考力等の能力を求めるのであれば、それが具体的にどのようなものであるかを公開し、警察官としての採用を強く望む受験者が自己研鑽に励むよう促すべきである。
(3)受験者が自己の文章能力等に対してどのような評価がなされたのかを知ることは、今後の自己の能力を向上させるために必要であり、自己に対する評価が公正に行われたか否かを確認するためにも必要である。
(4)条例は、個人情報を本人に対して開示することを原則とし、「不開示情報」に該当する場合にのみ例外的に開示しないことができるとしているのであって、「不開示情報」の範囲は真に必要最小限でなければならない。評点の開示が採用試験業務に何らかの影響を及ぼすにしても、重大な支障が生じるというほどのことではなく、「個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」という条例の趣旨に照らせば、個人情報開示請求権が優先されるべきである。
(5)実施機関は基準の公開により過度に偏った受験対策が講じられると主張するが、基準を公開することにより、受験者は、埼玉県が真にどのような能力を求めているかを知ることができるのであるから、これにより独自の誤った受験対策に走ることなく、正しく自己研鑽に励むことができるようになるものと考えられる。
(6)公正に行われるべき公務員の採用試験において、合否決定過程の透明性を確保するためにも、評価基準は可能な限り公開されるべきである。公務員は全体の奉仕者であり、選任罷免の権限は究極的には国民(県民)に存するものであり、採用の基準も国民(県民)が決めるべきものであり、行政に一定程度の裁量が認められるとしても、採用の基準は客観的かつ合理的なものでなければならず、国民(県民)の同意が得られるものでなければならない。基準が公開されず、行政内部において一方的に決められるとすれば、その試験によって国民(県民)にとって真に有為な人材が採用されているか否かを確認することができない。このような状態は、行政の恣意を容易にするものであって、妥当ではない。
(7)評点や採点者のコメントは、個人情報として開示することにより、受験者は、自己の論文についてどのような評価を得、どのような点について改善すべきかを知ることができ、その後の採用試験に再挑戦するにあたり、偏った受験対策に陥ることなく、埼玉県警察官に求められる能力を正しく認識し、努力できるはずである。
(8)埼玉県が正しい情報を提供した上で、受験者が過度に偏った対策をしたのであれば、それは受験者の責任であり、埼玉県としてそれを憂慮すべき必要はない。
(9)偏った受験対策によって能力のない者が能力があるように偽れるのだとしても、評価基準が客観的かつ公平なものである限り、他の論作文試験の評価基準と著しく異なるはずはないのであるから、他の基準が明らかになっている以上、それに基づいて偏った受験対策をすることでも偽れるはずである。
4 実施機関の主張の要旨
開示しないこととした評点と備考は、論文試験を評定する際の評定項目ごとの重み付けと評価基準に基づく評定委員のコメントである。これを公にすることにより、過度に偏った受験対策が講じられ、職に必要な能力を有するか否かを正確に把握することが困難になるなど、試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあり、条例第17条第7号に該当する。
5 審査会の判断
当審査会において、本件対象保有個人情報に係る部分開示決定について申立人及び実施機関の主張を検討した結果、次のように判断する。
(1)本決定の妥当性について
実施機関は、「評点」及び「備考」の情報を開示した場合、過度に偏った受験対策が講じられ、職に必要な能力を有するか否かを正確に把握することが困難になるなど、試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあり、適正な警察官採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張している。
「評点」については、論文試験を評定する際の評定項目とされている「国語力・表現力」及び「思考力」の重み付けが記載されており、「国語力・表現力」及び「思考力」のそれぞれについて、受験者が取得した得点が、重み付けに沿って記載されている。当該評点及び得点を開示した場合、評定項目における重み付けが明らかになり、受験者が当該情報を意識した対策を講ずることにより、その能力を正確に把握することが困難となる可能性は否定できない。よって、これを開示することにより、過度に偏った受験対策が講じられ、職に必要な能力を有するか否かを正確に把握することが困難になるなど、試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあり、条例第17条第7号に該当するとした実施機関の主張は、妥当である。
「備考」については、評定委員が論文試験を評価する際の評価内容や評価理由などを記載した部分であり、評定委員が評価するに当たってのポイントが備忘的な意味合いで記載される部分である。その記載内容を開示した場合、受験者が当該情報を意識し、過度に偏った受験対策を講じるおそれがある情報とはいえず、不開示とする理由は認められない。よって、「備考」の情報を開示した場合、職に必要な能力を有するか否かを正確に把握することが困難になるなど、試験の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあり、条例第17条第7号に該当するとした実施機関の主張は、妥当ではない。
(2)結論
以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
大橋豊彦、栗田和美、西村淑子
審査会の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成20年3月25日 |
諮問を受ける(諮問第16号) |
平成20年5月2日 |
実施機関から理由説明書を受理 |
平成20年5月20日 |
審議 |
平成20年6月6日 |
審査申立人から反論書を受理 |
平成20年6月24日 |
審議 |
平成20年7月22日 |
審議 |
平成20年9月16日 |
実施機関からの意見聴取及び審議 |
平成20年11月18日 |
審議 |
平成20年12月2日 |
審議 |
平成21年2月17日 |
審議 |
平成21年3月19日 |
審議 |
平成21年3月27日 |
答申 |
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