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掲載日:2024年4月2日
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答申第19号(諮問第20号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成19年度第2回警察官採用試験における「人物評定票」及び「集団討論試験評定票」(以下「本件対象保有個人情報」という。)について、平成19年12月7日付け及び平成19年12月28日付けで行った部分開示決定のうち、別表に掲げる部分については開示すべきである。
実施機関が行ったその余の決定については、妥当である。
2 審査請求及び審査の経緯
3 請求人の主張の要旨
(1)人物評定票(主席試験委員分及び副試験委員分)について
ア 「評定項目、着眼点、評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、試験委員の所見、採用意見及び氏名」を「開示することにより、評定項目及び着眼点が明らかとなり、受験者の真の人物性等について評定することが困難になるほか、受験者に対する試験委員の観察内容や率直な意見等が記載されなくなり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当するため。」との理由により不開示とする処分。
イ 主席試験委員分の「主席試験委員判定欄に記載されている各試験委員の総合評価の評定及び採用意見並びに主席試験委員の判定及び判定理由等」を「開示することにより、受験者に対する各試験委員の評価や主席試験委員の率直な意見等が記載されなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当するため。」との理由により不開示とする処分。
ウ 副試験委員分の主席試験委員判定欄の不開示とされた部分を「開示することにより、主席試験委員の受験者に対する判定や率直な意見等が記載されなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当するため。」との理由により不開示とする処分。
以上、ア・イ・ウの処分を取り消し、全部開示を求める。
(2)集団討論試験評定票(主席試験委員分及び副試験委員分)について
主席試験委員分の「評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、判定、採用意見、所見及び主席試験委員の最終判定」及び副試験委員分の「評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、判定、採用意見及び所見」を「開示することにより、評定項目及び着眼点が明らかとなり、受験者の真の人物性等について評定することが困難になるほか、受験者に対する試験委員の観察内容や率直な意見等が記載されなくなり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当するため。」との理由により不開示とする処分を取り消し、全部開示を求める。
(3)開示を求める理由
ア 人物試験において警察官として必要な素質及び能力を評価する基準は民間企業等の採用試験と大差ないはずであり、採用試験対策の書籍や予備校等を通じて知り得るものである。もし、埼玉県が、民間企業等と異なる特別な資質を警察官として採用する者に対し求めるのならば、その特別な資質は広く公開されるべきであり、それにより警察官として採用されることを強く望む受験者が自己研鑽に励むことが期待でき、有為な人材を確保できると考えられる。
イ 「総合評定」や「総合評価の評定」は点数化されているものと考えられるが、その点数は評価の細かな基準を示すものではなく、総合評定等を開示することは評価基準を公にすることにはならず、今後の受験者が対策を講じることは不可能である。
ウ 「人物試験における評定を受験者自身が知るとなれば、試験委員が受験者にどう思われるかを案じて正しく評価できない可能性がある」と言うのならば、総合評定等をもとに一定の計算式を用いて算出されたものと考えられる人物試験の種目別得点(請求人が12月17日付けで保有個人情報の開示請求を行って開示された得点)に対しても同様の可能性があることとなる。しかし、受験者が試験委員と知り合いであるならともかく、試験委員が、受験者本人が知ることを気にして一定の基準に基づいて客観的に採点されるべき得点を変更するとは考えにくい。総合評定等を開示しても「適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがある」とは言えない。
エ 受験者が自己の人物性に対してどのような評価がなされたかを知ることは、自己の能力の向上と自己に対する評価が公正になされたか否かを確認するためにも必要である。
オ 試験委員の氏名についても、受験者の合否が左右されるという試験委員の評価の重要性を鑑みれば、受験者に対し、また公務員を選任する権利を有する住民に対して、その評価について一定の責任を負うものであり、行政の意思決定についてその責任の所在を明確にするためにも、これを開示することは、一定の利益が認められると考える。
カ 条例は、本人に対して自己に関する情報を開示することを原則とし、「不開示情報」に該当する場合にのみ例外的に開示しないことができるとしているのであって、「適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれ」という抽象的な危険性を根拠に「不開示情報」とすることは、「不開示情報」の範囲を著しく広げるものであり、「個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」という条例の趣旨に照らして妥当ではない。合否決定過程の透明性を確保するためにも、人物試験における基準やそれに基づく実際の評価は可能な限り公開されるべきである。
キ 「評定項目及び着眼点」を不開示とした理由として、開示した場合、それらがすべてであるかのような誤解を生じさせるおそれがあり、当該評定項目及び着眼点について過度に意識し、偏った受験対策を講じることが予想されるとしているが、開示したからと言って、それらがすべてであるかのような誤解は必ずしも生じるものではないし、それが「誤解」であるというのなら、「これらが全てではありません」と申し添えれば良いだけの話である。
ク 客観的な基準に基づいて行われるべき公務員試験にあって、人物試験における評価も客観的合理的基準によってなされるべきである。人間のすることである以上、一定の誤差が生じ得るにしても、事実に反した評価がなされるようなことがあってはならない。このような観点からは、その合否の判断については、その根拠を一定程度、説明できるようなものでなければならないのではないだろうか。合否決定が適正に行われたか否か事後的に確認できることが望ましい。きちんと評価がなされたのか否かは、実際になされた評価を見なければ確認し得ないものである。
ケ 平成18年度第2回警察官採用試験における人物試験の得点を開示請求し、開示された得点は「0」であったが、通常の人物試験の評価として、いきなり「0」が付くことはまずないものと考えられるから、個別面接や集団討論における評価が一定の基準を満たさないものについては、一律「0」とすることによって、一次試験の成績にかかわらず不合格とする措置がなされているものと考えられる。「0」という得点が決定される前に個別面接、集団討論における個別の評価が存在していたはずであり、その評価こそ受験者にとって重要な情報である。個別の評価からして著しく低く合格の可能性はまったくないものであったのか、ほんの少し基準に満たなかったために「0」という評価になってしまっただけであり、もう少しで合格できるところにあったのか全く判別できない。「0」になったのは、個別面接での評価が低かったせいなのか、集団討論での評価が低かったせいなのか、どちらも悪かったせいなのか、それさえわからない。ただ「0」という数字だけ示して、「きちんと評価しました」と言われても納得できない。個別の採点項目、採点基準を明らかにすることができないとしても、個別面接と集団討論で個別に実際の評価を開示することは可能なはずである。人物試験の得点を開示できるのであれば、個別面接と集団討論の個別の評価も開示できるはずである。
コ 「0」という点数が、一定基準に基づく一律処理の結果なのだとしたら、一律処理を免れた高得点者は、実際の評価としての点数を開示によって知ることができるはずである。一定基準により「0」とされた場合、その一定基準が分からず、実際の評価がどの程度悪かったか分からない。その点で個別面接と集団討論における個別の評価を開示しないことが、不公平になるものと考えられる。
4 諮問庁の主張の要旨
(1)人物評定票(主席試験委員分及び副試験委員分)について
ア 評定項目及び着眼点
警察官採用試験では、多種多様な試験を行い、それぞれの試験結果を総合的に評価しているところ、人物評定票の評定項目及び着眼点を開示した場合、それらがすべてであるかのような誤解を生じさせるおそれがあり、その結果、受験者は、当該評定項目及び着眼点について過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想され、正確な評価ができなくなるなど適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当する。
イ 評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、試験委員の所見、採用意見及び氏名
人物試験では、受験者の発言、態度、所作など少なからず人格的な部分を評価することが求められていることから、試験委員が行う評価については、受験者自らが抱いている自己の人格の認識と食い違うことが当然予想される。そのため、評定項目ごとの評定及び所見等を開示した場合、試験委員が、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、受験者との間に後日生じるかも知れない信頼関係上のトラブルに配慮して、受験者の否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなることが想定されるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当する。また、評定項目ごとの所見及び試験委員の所見を開示した場合、評定項目などの着眼点が推測されるおそれがあるとともに、推測された評定項目などの着眼点がすべてであるかのような誤解を生じさせるおそれがあることから、受験者は、評定項目などの着眼点について過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想されるため、正確な評価ができなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当する。
ウ 主席試験委員分の主席試験委員判定欄
人物試験では、受験者の発言、態度、所作など少なからず人格的な部分を評価することが求められていることから、試験委員が行う評価については、受験者自らが抱いている自己の認識と食い違うことが当然想定される。そのため、各試験委員の総合評価の評定及び採用意見等を開示した場合、試験委員が、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、また、受験者との間に後日生じるかも知れない信頼関係上のトラブルの発生に配慮して、受験者に否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当する。
エ 副試験委員分の主席試験委員判定欄
不開示情報を開示した場合、個々の試験委員が行う判定が、主席試験委員の行う最終判定とどのような関係にあるのか、また、主席試験委員の最終判定の項目が明らかになり、試験委員が、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、また、受験者との間に後日生じるかも知れない信頼関係上のトラブルの発生に配慮して、受験者に否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなることが想定されるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当する。
(2)集団討論試験評定票(主席試験委員分及び副試験委員分)について
「評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、判定、採用意見、所見及び主席試験委員の最終判定」(主席試験委員分)及び「評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、判定、採用意見及び所見」(副試験委員分)
人物試験のうち集団討論では、受験者の発言、態度、所作など少なからず人格的な部分を評価することが求められていることから、試験委員が行う評価については、受験者自らが抱いている自己の人格の認識と食い違うことが当然想定される。そのため、評定項目ごとの評定及び所見等を開示した場合、試験委員が、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、また、受験者との間に後日生じるかも知れない信頼関係上のトラブルの発生に配慮して、受験者の否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当する。また、評定項目ごとの所見及び所見を開示した場合、評定項目などの着眼点が推測されるおそれがあるとともに、推測された評定項目などの着眼点がすべてであるかのような誤解を生じさせるおそれがあることから、受験者は、評定項目などの着眼点について過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想されるため、正確な評価ができなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第17条第7号に該当する。
5 審査会の判断
当審査会において、本件対象保有個人情報に係る部分開示決定について請求人及び諮問庁の主張を検討した結果、次のように判断する。
(1)本決定の妥当性について
ア 人物評定票(主席試験委員分及び副試験委員分)について
(ア)「評定項目、着眼点、評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、試験委員の所見、採用意見及び氏名」について
諮問庁は、開示された場合、「評定項目」及び「着眼点」については、それらが評価のすべてであるかのような誤解を生じさせるおそれがあり、過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想され、正確な評価ができなくなるとし、「評定項目ごとの評定及び所見」、「採用意見」及び「氏名」については、試験委員が、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、また、受験者との間に後日生じるかも知れない信頼関係上のトラブルに配慮して、受験者の否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなることが想定されると主張している。
「評定項目」については、面接における評価のための項目が記載されている部分であり、その内容は一般的に想定し得る範囲の評価項目と考えられ、そこから評定項目ごとの着眼点が推測されるおそれがあるとは考えがたい。また、「評定項目ごとの評定」及び「総合評価の評定」についても、一定の幅の中で評価がどの段階にあるかを単に示すものであり、それ以上に個別具体的な評価、判断内容が記載されるものではない。
こうしたことから、「評定項目」を開示した場合、過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想され、正確な評価ができなくなり、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとし、また、「評定項目ごとの評定」及び「総合評価の評定」を開示した場合、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、受験者との間に後日生じるかも知れない信頼関係上のトラブルに配慮して、否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして、条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当ではない。
「着眼点」については、評定項目ごとに試験委員が評価する際に着目した事項が記載される部分と、面接試験における試験委員の率直な印象が記載される部分からなっている。「着眼点」を開示した場合、受験者が、「着眼点」について過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想され、それにより正確な評価ができなくなるという可能性は否定できず、また、評価の信頼性、妥当性が確保されるためには、自由かつ率直に評定を行えることが試験委員には求められるが、試験委員が行う評価について、受験者自らが抱いている印象の認識と食い違いが生じることも想定され、受験者に評価の内容等を説明しなければならない困難さから、試験委員が画一的な評価の記載に終始するといった可能性も予想される。
よって、採用試験に必要な本人の正確な情報の記録がされなくなることが想定され、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当である。
「評定項目ごとの所見」、「試験委員の所見」及び「採用意見」については、開示されることを予定せずに、面接試験における試験委員の率直な印象や意見が具体的に記載される部分である。評価の信頼性、妥当性が確保されるためには、自由かつ率直に評定を行えることが試験委員には求められる。また、試験委員が行う評価については、発言、態度、所作など少なからず性格的な部分を評価することが求められ、受験者自らが抱いている性格の認識と食い違いが生じることは予想されることである。これらが開示された場合、相当量の質問や苦情が寄せられることは予想され、それにより、受験者に評価の内容等を説明しなければならない困難さから、試験委員が画一的な評価の記載に終始するといった可能性は否定できない。また、「氏名」についても、受験者から本人の認識と大きく異なった評価内容についての説明や批判、いわれのない非難等が当該試験委員に対して行われる可能性はあると思われ、試験委員の自由かつ率直な意見が評定に反映されにくくなる可能性も否定できない。
よって、試験委員の公正な評価が保障されず、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして、条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当である。
(イ)主席試験委員判定欄について
諮問庁は、開示された場合、評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなることが想定されるとし、副試験委員分にあっては、開示した場合、個々の試験委員が行う判定が、主席試験委員の行う最終判定とどのような関係にあるのか、また、主席試験委員の最終判定の項目が明らかになるおそれがあると主張している。
a 主席試験委員分の主席試験委員判定欄について
「各試験委員の採用意見」及び「主席試験委員の判定及び判定理由」については、受験者自らが抱いている自己の性格の認識と食い違いが生じることは想定されることから、不開示部分を開示した場合、受験者が自己の性格の評価について疑問を持ち、評価の内容に対する質問や訂正を求められることは予想され、評価の内容等について説明を求められるような事態の発生を意識し、主席試験委員の率直な意見が判定に反映されにくくなる可能性は否定できない。よって、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなることが想定され、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして、条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当である。
その余の部分については、開示することにより、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなる可能性があるとは考えがたいことから、不開示とする理由はなく、開示すべきである。
b 副試験委員分の主席試験委員判定欄について
不開示とした部分を開示した場合、個々の試験委員が行う判定が、主席試験委員の行う最終判定とどのような関係にあるのかが明らかとなり、また、主席試験委員の最終判定の項目が明らかになるとしても、主席試験委員の率直な意見が判定に反映されにくくなる可能性があるとは考えがたい。よって、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなることが想定され、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして、条例第17条第7号に該当するため不開示とした諮問庁の主張は、妥当ではない。
イ 集団討論試験評定票(主席試験委員分及び副試験委員分)について
諮問庁は、「評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、判定、採用意見、所見及び主席試験委員の最終判定」(主席試験委員分)及び「評定項目ごとの評定及び所見並びに総合評価の評定、判定、採用意見及び所見」(副試験委員分)を開示した場合、試験委員が、受験者から評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、受験者との間に後日生じるかも知れない信頼関係上のトラブルの発生に配慮して、受験者の否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張し、また、評定項目などの着眼点が推測されるおそれがあるとともに、推測された評定項目などの着眼点がすべてであるかのような誤解を生じさせ、受験者は、評定項目などの着眼点について過度に意識し偏った受験対策を講じることが予想され、正確な評価ができなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張している。
「評定項目ごとの評定」、「総合評価の評定」、「判定」及び「主席試験委員の最終判定」については、一定の幅の中で、評価がどの段階にあるかを単に示すものであり、それ以上に個別具体的な評価、判断内容が記載されるものではなく、開示した場合に、その部分から評定項目などの着眼点が推測されるおそれがあるとは考えがたいことから、推測された評定項目などの着眼点がすべてであるかのような誤解を生じさせ、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして、条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当ではない。
「評定項目ごとの所見」及び「採用意見及び所見」について、集団討論は、発言、態度、所作など少なからず性格的な部分を評価することが求められることから、個別面接と同様に、試験委員が行う評価については、受験者自らが抱いている自己の性格の認識との食い違いが生じることが想定される。不開示部分が開示された場合、諮問庁の理由説明にあるように、試験委員が評価の内容等についての説明を求められるような事態の発生を意識し、否定的な評価についてありのままに記載することを差し控え、画一的な記載に終始し、本人の正確な情報が記載されなくなるというおそれはあり、試験委員の率直な意見が反映されにくくなるといった可能性は否定できない。よって、採用試験に必要な本人の正確な情報の記載がされなくなるなど、適正な採用試験業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして、条例第17条第7号に該当するとした諮問庁の主張は、妥当である。
(2)結論
以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
大橋豊彦、栗田和美、西村淑子
審査会の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成20年3月26日 |
諮問を受ける(諮問第20号) |
平成20年4月23日 |
諮問庁から理由説明書を受理 |
平成20年5月20日 |
審議 |
平成20年6月6日 |
審査請求人から反論書を受理 |
平成20年6月24日 |
諮問庁からの意見聴取及び審議 |
平成20年9月16日 |
審議 |
平成20年10月14日 |
審議 |
平成20年11月18日 |
審議 |
平成20年12月2日 |
諮問庁からの意見聴取及び審議 |
平成21年2月17日 |
審議 |
平成21年3月19日 |
審議 |
平成21年3月27日 |
答申 |
別表
本件対象保有個人情報 |
開示すべき部分 |
---|---|
人物評定票(主席試験委員分) |
|
人物評定票(副試験委員分) |
|
集団討論試験評定票(主席試験委員分及び副試験委員分) |
評定項目ごとの評定、総合評価の評定、判定、主席試験委員の最終判定 |
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