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掲載日:2024年4月2日
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答申第29号(諮問第37号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、埼玉県個人情報保護条例(以下「条例」という。)の適用除外を理由に
保有個人情報の開示を行わないとした決定は妥当である。
2 審査請求等の経緯
(1)原処分の経緯
審査請求人(以下「請求人」という。)は、条例第15条第1項の規定に基づき、実施機関に対し、平成21年8月26日付けで「平成19年7月27日Pm11時過ぎに○○交番で撮影された私の写真(顔が写っているもの)」(以下「本件対象保有個人情報」という。)の開示請求を行った。
これについて、実施機関は、「写真撮影報告書」を本件対象保有個人情報が記録された公文書(以下「本件対象文書」という。)と特定し、平成21年9月10日付けで、条例第21条第2項の規定に基づき、保有個人情報の開示をしない旨の決定を行い、請求人に通知した。
(2)審査請求の経緯
請求人は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)に基づき、平成21年11月8日付けで、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、保有個人情報の開示をしない旨の決定の取消しを求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。
(3)審査の経緯
3 請求人の主張の要旨
開示請求を行った本件対象保有個人情報に係る事案については、刑事事件として起訴に至っていないのであるから、本件対象文書は刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第53条の2第2項のいう「訴訟に関する書類」に該当しない。
よって、実施機関が、「訴訟に関する書類」については、条例第60条第2項の規定により、条例第4章(開示、訂正及び利用停止)の規定が適用されないとの理由で保有個人情報を開示しなかったのは不当である。
また、本件対象保有個人情報は条例第6条に違反し、本人に無断で違法に取得されたものであるから、条例第36条第1項第1号に照らし、保有・利用は許されない。これは刑事訴訟法第47条ただし書にいう「相当と認められる場合」に該当するので、裁量により開示し、消去せよ。
4 諮問庁の主張の要旨
本件対象文書は、司法警察職員が傷害被疑事件に際して作成した捜査に関する報告書であって、刑事訴訟法第53条の2第2項に規定する「訴訟に関する書類」に該当する。
このため、本件対象保有個人情報には、条例第60条第2項の規定により条例第4章の規定が適用されないことから、実施機関は保有個人情報の開示をしない旨の決定を行ったものである。
5 審査会の判断
(1)条例第60条第2項該当性について
条例第60条第2項は、「第4章の規定は(中略)法令の規定により行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第4章の規定の適用を受けないこととされる保有個人情報については、適用しない。」と規定している。また、刑事訴訟法第53条の2第2項は、「訴訟に関する書類及び押収物に記録されている個人情報については、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第4章の規定及び独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)第4章の規定は、適用しない。」と規定している。
そこで、当審査会では、本件対象文書が刑事訴訟法第53条の2第2項にいう「訴訟に関する書類」に該当するか否か、ひいては、本件対象保有個人情報が条例第60条第2項の規定により条例の適用除外となるか否かについて以下に検討する。
以上のことから、本件対象文書は、傷害被疑事件に関して司法警察職員(司法警察員又は司法巡査)が作成・保管している書類であって、刑事訴訟法第53条の2第2項にいう「訴訟に関する書類」に該当し、本件対象保有個人情報は条例第60条第2項の規定により条例の適用除外となる。
(2)条例第6条第1項該当性について
条例第6条第1項は、「実施機関は、個人情報を取得するときは、適法かつ適正な方法により行わなければならない。」と規定している。請求人は本件対象保有個人情報の取得が不適法に行われた旨を主張しているが、捜査に関する手続の適法性については最終的には司法判断に委ねるべきである。本件対象保有個人情報は、傷害事件の認知に伴い写真撮影報告書を作成するため、警察官が被害者を撮影した写真であって、当審査会が諮問庁及び請求人から意見聴取をした限りにおいては、その撮影行為自体に特段の不自然又は不合理な点は認められなかった。
(3)刑事訴訟法第47条ただし書について
刑事訴訟法第47条は、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」と規定している。請求人は本条ただし書を理由に本件対象保有個人情報の開示を求めているが、刑事訴訟法に基づく開示については当審査会の権限の及ぶところではない。
(4)結論
(1)で述べたとおり、本件対象保有個人情報は「訴訟に関する書類」に記録されている個人情報であるから、条例第60条第2項の規定により開示請求の対象とはならず、原処分は妥当である。
また、(2)のとおり、本件対象保有個人情報の取得の状況については、上記の判断に影響するものではなく、(3)については当審査会において審理すべき理由が認められない。
以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
奥 真美、徳本 広孝、野崎 正
審査会の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成22年1月27日 |
諮問を受ける(諮問第37号) |
平成22年2月24日 |
諮問庁から理由説明書を受理 |
平成22年4月5日 |
請求人から反論書を受理 |
平成22年4月14日 |
審議 |
平成22年5月12日 |
諮問庁からの意見聴取及び審議 |
平成22年6月16日 |
請求人から反論書の補充書を受理 |
平成22年6月16日 |
請求人による意見陳述及び審議 |
平成22年7月14日 |
審議 |
平成22年8月18日 |
答申 |
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