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掲載日:2025年3月26日

令和7年2月定例会 代表質問 質疑質問・答弁全文(田並尚明議員)

介護人材の処遇改善と確保について

Q 田並尚明 議員(民主フォーラム)

埼玉県では、75歳以上の高齢者人口が全国で最も早く増加すると予測されており、介護人材の確保が喫緊の課題となっております。これまで埼玉民主フォーラムでは、一般質問や予算要望を通じて介護人材の確保・定着のための処遇改善を求めてきました。
昨年3月、国が訪問介護の基本報酬を引き下げる動きを見せた際、会派として知事に、訪問介護の基本報酬引下げへの改善要望を提出しました。基本報酬の引下げは、特に小規模事業者の経営を悪化させ、雇用の確保が困難となり、結果的に介護サービスの提供に支障を来すおそれがあったためです。
今年1月の東京商工リサーチの調査では、令和5年に全国で確認された介護事業者の倒産が172件に達し、過去最多となりました。中でも訪問介護が最多の81件を占め、報酬引下げの影響が今後更に深刻化する可能性が指摘されています。
加えて、令和5年度の全国の介護職員数は約2万9,000人減少し、平成12年度以来、初めての減少に転じました。
一方、労働組合UAゼンセン傘下の介護職場で働く労働者で組織する日本介護クラフトユニオン(NCCU)による令和6年1月に発表した賃金実態調査によれば、令和5年7月時点の介護職の平均月給は26万5,711円で、処遇改善加算の拡充など国の施策の効果もあり、同年3月と比べ7,414円増加しました。しかし、全産業平均との差は更に拡大し、年収ベースで約111万円の格差が生じております。
埼玉県においても、介護人材の需給ギャップが深刻化しており、国の調査によると約1万2,000人の不足が見込まれております。県内の介護事業所を対象とした調査、令和5年度介護労働実態調査では、約65パーセントの事業所が人材不足を感じており、特に訪問介護員や夜勤可能な職員の確保が難しい状況です。また、「求人を出しても応募が来ない」「採用しても定着しない」といった声が現場から多く寄せられています。このままでは、必要な介護サービスの維持が困難となり、高齢者の生活の質が著しく低下するおそれがあります。
さらに、第9期埼玉県高齢者支援計画のデータによると、埼玉県の介護職の離職率は全国平均を上回っています。これから分かるように、介護職の低賃金は他産業との人材獲得競争に負けてしまうような状況を生み出しており、人材不足の大きな要因になっております。
また、介護事業者も物価上昇や経費増加に直面していますが、介護報酬が公定価格で定められているため、価格転嫁ができず経営が圧迫されています。そのため、介護報酬の引下げは、事業者の安定経営と職員の処遇改善のために不可欠です。業務負担の軽減という観点から介護ロボットやICTの導入も進められていますが、現場では「十分な支援が行き届いていない」との声が依然として聞かれます。
埼玉県では、資格取得支援や介護職のイメージアップ、介護現場の生産性向上に取り組んでいますが、更なる施策の強化が必要です。
そこで、知事にお伺いいたします。
1点目として、介護職員の賃金を全産業平均に引き上げるために、介護報酬の大幅な改定を国に強く要望すると同時に、国の見直しが講じられるまでの間、東京都などのように県独自の手当を支給してはいかがでしょうか。また、東京都では介護職員の宿舎借上支援事業を実施しています。埼玉県でも工夫をして県独自の処遇改善を行い、実質的な手取りを増やすべきと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
2点目として、更に介護ロボットやICTの導入支援を拡充し、業務の負担軽減と生産性向上を図ることについての現状と効果、そして今後の見通しの御見解をお伺いします。
3点目として、県が新たに取り組むこととしている外国人介護人材確保の現状と今後の見通しについての御見解もお伺いいたします。
4点目として、厚労省の令和6年1月の第20回医療介護総合確保促進会議の資料によれば、埼玉県は地域医療介護総合確保基金の介護従事者の確保に関する事業の執行状況が76パーセントと、他の都道府県より低い状況です。もっと活用して人材確保に係る諸施策を充実すべきと考えますが、地域医療介護総合確保基金の活用方法についての知事の御見解をお伺いいたします。

A 大野元裕 知事

物価高騰が続く中、介護報酬の改定はそれに追いつかず、令和5年の国の調査によれば、介護職員の給与は全産業と比較すると約7万円低くなっております。
今定例会でご提案している補正予算では、高齢者施設に対して光熱費などの高騰を緩和するための支援についての審議をお願いしているところです。
これは緊急的な措置として実施するものであり、根本的に介護職員の処遇改善につなげるためには、原資となる介護報酬が適切な水準で設定される必要があり、国において適切な措置が講じられるべきと考えています。
介護サービス事業者の安定的運営のため、社会経済情勢を反映した介護報酬とするよう、令和6年11月に私自ら福岡資麿厚生労働大臣を訪ね、要望を行ったところであります。
介護報酬の適切な見直しを引き続き国に強く求め、迅速な対応を促してまいります。
なお、令和6年度の介護報酬改定では介護職員の処遇改善加算が見直されており、県としては、社会保険労務士などの専門家を介護事業所に派遣し、賃金体系や昇給の仕組みの整備などによる処遇改善加算の取得を支援してまいります。
また、介護福祉士などの資格取得に対する支援も行っており、資格を取得すれば職員の手取りが増え、介護事業所の介護報酬の加算取得にもつながります。
こうした加算の取得の支援を行い、介護職員の処遇改善を図ってまいります。
次に、介護ロボットやICTの導入支援についてです。
令和5年度末時点での県内の特別養護老人ホームにおける介護ロボットの導入率は約70パーセント、介護記録請求システムの導入率は51パーセントとなっています。
介護ロボットやICT機器を活用して業務改善を進めることは、介護職員の業務負担の軽減につながるものであります。
県で実施したモデル事業では、見守りセンサーの導入により施設内の巡視活動が40パーセント程度削減、転倒事故が20パーセント程度減少するなどの効果が報告されています。
県では、介護ロボットやICT機器を導入する介護事業所に補助しており、令和6年度予算ではロボットは1億590万円、令和5年度比で4.3倍、ICTについては1億900万円、令和5年度比で15倍の措置をいたしました。
令和7年度は更に拡大をし、ロボットは2億5,590万円、令和6年度比で2.4倍、ICTは1億8千万円、令和6年度比で1.6倍の予算を提案させていただいております。
さらに、ロボットやICTの導入を実効性のあるものとすべく、令和7年度はアドバイザーの派遣や介護事業所からの導入に関する様々な相談にワンストップで対応する窓口を設置いたします。
第3期まち・ひと・しごと創生総合戦略では、令和11年度までに特別養護老人ホームにおける介護記録請求システムの導入率を100パーセントとする目標を設定しており、この実現を目指してまいります。
次に、外国人介護人材確保についてです。
昨年7月、国が発表した介護職員の必要数の推計では2040年で全国で約62万人、本県だけでも約3万人の不足が見込まれております。
この不足を埋めていくのは相当な困難が想定されるため、日本人の介護職員のみならず、外国人材の確保はその解決に向けた大きな柱の一つになると考えています。
県内の介護職の特定技能外国人は、令和6年6月末時点で約2千3百人となっており、これは、大阪、神奈川、東京、愛知に次いで全国5番目となっています。
他方、特定技能外国人を採用している介護事業所は約3割にとどまっており、多くの事業所は採用経験がない状況にあります。
採用していない事業所に話を伺うと、外国人介護人材採用への意欲は高いものの、「外国人の採用に不安がある」、「採用時に費用が掛かる」といった声が多く聞かれます。
こうした事業所に外国人介護職員の採用を促していくためには、それぞれの事業所の事情に合った個別的な支援が必要と考えられます。
これまで県では、外国人介護人材を採用した後の定着を支援するため、資格取得や住宅確保に係る費用への補助を行ってまいりました。
令和7年度からは、新たに、外国人の採用経験がない介護事業所に対して、外国人の採用の留意点や介護現場で働いてもらうに当たっての必要な情報に関するセミナーや個別相談などを開催してまいります。
また、介護事業所が人材をあっせんする登録支援機関などに支払う初期費用について一人当たり20万円を補助したいと考えています。
さらに将来に向けて、様々な人脈なども活用して新たな埼玉県独自のルートの開拓も進めてまいります。
次に、地域医療介護総合確保基金を活用した人材確保策の充実についてでございます。
基金の執行率が他の都道府県よりも低いというご指摘がございました。
基金は毎年度の県の目標を定めた計画に基づき執行されますが、年度によっては残余額が発生することがあります。この残余額を翌年度以降活用するためには国との協議を行った上で計画の変更が必要となります。
国からはこの計画変更を限定された場合のみ認めることが通知をされていたため、本県では国の承認を得ることが困難と判断し、これまで残余額は積み増してまいりました。
一方で、基金の残余額を毎年度活用してきた都道府県もあり、本県の執行率が相対的に低い要因となっています。
国から令和6年10月、基金の残余額の活用について計画の変更は必要としないという通知があったことから、今後は基金を柔軟に活用し、執行率を上げていきたいと考えています。
執行額では全国5番目の金額となっており、これまで、介護人材の確保・定着・イメージアップのほか、認知症に関する施策など、幅広く積極的に活用して事業を実施してまいりました。
令和7年度予算案では、外国人介護人材確保の事業など新たな事業にも活用することといたしております。
一方で、同基金の対象となる事業は国から限定されており、都道府県が自由に活用できないといった課題があります。
例えば、外国人介護人材確保事業のうち、登録支援機関などに支払う初期費用の補助は同基金の対象事業となっていないため、県の一般財源を充てております。
また議員から、「東京都が実施している」とお話しのあった職員宿舎の借り上げ費用についても同基金の対象とされていないことから、運用の改善を国に要望しております。
このように対象事業が限定された中ではありますが、介護人材の確保に資する施策の充実のため基金を最大限活用し、今後増大する介護ニーズに対応してまいります。

 

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

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