工事用重機によるウグイの人工産卵場造成
工事用重機を用いたウグイの産卵床造成は、流速のある流心付近に洗浄した砂利(砕石)を投入して造成することにより、長期間ウグイの産卵を誘発することができ、産卵期の流量や水位の変化に対応もでき、省力化及び大量増殖が図られた。
技術内容
- (1)従来、荒川でのウグイの人工産卵床の規模は、2m×2m前後で、人力により造成していたが、工事用重機を用いた20m×3mの大型産卵床を造成した結果、ウグイの産卵が確認でき、省力化が可能になった。
- (2)流速のある流心から川岸まで,河道に対して直角に産卵床を造成することにより、12.9~36.6立方メートル/sの流量、約50cmの水位の変化に対応でき、産卵床としての機能が低下することはなかった。
- (3)ウグイは川底のきれいな小石に産卵するため、従来は洗浄した川砂利(径2~3cm)で産卵床を造成し、2日に1回川砂利を交換していたが、砕石(径5cm)を用いた結果、藻類の付着が遅く、1か月間産卵床として使用可能であった。
- (4)ウグイはすでに産卵した場所には産まない習性があるため、流れに対して直角に波状の構造に産卵床を造成した結果、ウグイ親魚は場所を換え長期間産卵した(図1)。
- (5)産卵床の造成場所は、早瀬から淵に落ち込む「かけ上り」という比較的水深の浅い場所であるが、水深1m~0.3mの範囲内では水深の深い部分での産卵が多かった。
- (6)人工産卵床を4か所造成した結果では、産卵推定数は42万粒、96万粒、128万粒、158万粒であった。
- (7)ウグイふ化稚魚は、80%以上が流速10cm/s以下の緩流部に生息することが判明したため、ふ化稚魚の歩留り向上には、産卵床造成場所の下流部に流れの停滞部(ワンド)や緩流部があることが必要である。
具体的データ
図1 産卵床の構造
写真1 工事用重機によるウグイの人工産卵床造成
適用地域
河川中流域のウグイ生息水域
普及指導上の留意点
- (1)ウグイの産卵行動は、水温が11~13℃に上昇する4月下旬から5月上旬に始まるため、この時期に合わせて産卵床を造成する。
- (2)産卵床造成に使用する砕石は、きれいに洗浄する。
- (3)ウグイ卵は、水温13℃前後で約3週間かかってふ化し、浮上するので、その間、産卵床は自然状態にしておく。