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掲載日:2023年1月24日
この記事はニュースレター第45号(令和元年11月発行)に掲載したものです。
温暖化によって気温が上昇すると埼玉県の農作物にどのような影響を与えるのでしょうか?
自然環境担当 米倉 哲志
農作物だけでなく植物にとって気温(生育温度)はとても重要です。植物はそれぞれ生育するのに適している温度があり、それは植物の種類によって大きく異なっていますし、農作物では品種間でも異なる場合もあります。近年、世界的に温暖化が進行しており、日本でも今までの最高気温が頻繁に更新されるなど、気温上昇が着実に進んでいます。この高温化が埼玉県に関わりが深い農作物に及ぼす影響などについて幾つか紹介します。
埼玉県の野菜生産は、農業産出額の約5割を占め、主な作目となっています。その中でもホウレンソウの生産量は全国2位です。ホウレンソウでは、高温によって病害や抽だい(花茎が伸張・分枝する現象)が増加します。また高温が成長にも影響し、気温が3℃上昇すると成長量は12~18%程度減少するとの予測もあります。よって今後、温暖化が進行すると生産量の減少が予想されるため、埼玉県の野菜生産への悪影響が懸念されます。その他の野菜では、ナスやトマトの高温による着花・着果不良などの生育不良も懸念されています。
埼玉県では「コシヒカリ」や「彩のかがやき」、「キヌヒカリ」などいろいろな品種が作られています。米の栽培において、高温の影響が大きいのは開花時期や、穂が出た後の期間です。開花期に高温になると受精障がいにより実が入らない不稔籾 (もみ) が多発します(写真(1)左)。また多くの品種で、穂が出て数週間の昼の温度が35℃、平均気温が27℃を超えると米に高温障がいが発生し、白未熟粒と呼ばれる白く濁った米が増えてしまうため、品質が大きく低下する原因となります(写真(1)右)。そのため最近では、このような高温による品質低下が起こりにくい埼玉県の新しい品種として「彩のきずな」が2014年に登録され、生産され始めています。
ブドウは埼玉県の観光農業の主力品目です。ブドウで問題になるのは、高温によって果皮に色が付かなくなる現象です(写真(2))。この着色不良はブドウの商品価値を大きく下げてしまいます。埼玉で生産量の多い品種「巨峰」は、気温が30℃以上になると着色不良が発生しやすく、特に夜の温度が高いと発生しやすくなります。果樹は、多年生作物なので、一度植えると数十年に渡って生産を続けます。しかしながら、温暖化の影響により栽培適地が変化することが予測されています。例えば、温州ミカンの栽培適地は、現在は九州や四国などの西南暖地の沿岸地域ですが、温暖化が進行すると、2040年以降には関東地方や北陸の一部も栽培適地になるとの予測もあります。よって温暖化が進行すると、埼玉県は温州ミカンの生産適地となる可能性があります。
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