インタビュー・コラム

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掲載日:2024年12月26日

株式会社萬年

企業の取組file7_株式会社萬年

プロフィール

1987年に台湾で萬年の前身となる鉄スクラップ事業を開始。台湾の工業化を支える大切な静脈産業の担い手として同業者と切磋琢磨するも、鉄スクラップ事業に対して規制がかかる。さまざまな葛藤があったが、2009年に株式会社萬年として日本で事業をスタート。電子廃棄物をリサイクル・リユースすることでサーキュラーエコノミーを実現するとともに、SDGsにも力を入れている。
従業員:48名うち女性31.2%(2023年9月現在、役員含む)
女性管理職比率:25%(課長以上)

〇取材対象者〇
   取締役:望月 雄太(もちづきゆうた)さん
   メディア・ブランディング担当:福田 貴恵(ふくだきえ)さん

   URL: https://www.mannen.jp/

平均年齢32歳!!柔軟な改革と活発な社内コミュニケーション

5年前までは、役員を含めて6名の会社でした。仕事をいただくことが増える中で、最初はアルバイトを雇い、現場の従業員を増やしていきましたが、結婚や子育て、住宅ローンを組みたいなどそれぞれのライフプランを考える従業員も増えてきました。従業員のライフプランを聞く中で、アルバイトではなく正社員にした方が安心して働けると考え、3年前に、当時アルバイトで入った人も全員、一律に正社員に切り替えました。今では48名(役員3名、正社員40名、パート5名2023年9月末現在)まで増え、現在も事業拡大に伴い複数のポジションで正社員募集をおこなっています。外国人従業員も15名ほどおり、ダイバーシティな会社となりました。

また、会社全体の平均年齢も若いです。取締役は32歳と33歳の2名で、部長は4名いますが平均年齢は34歳。従業員の平均年齢も32歳です。「我が社はこうである」という文化があまりないため、従業員が気づいたことを管理職が吸い上げて解決・改善するまでの時間が短く、思い切った改革ができていると思います。フラットに物事を見て、こうしよう!まずはやってみよう!という考えです。

実例として、就業時間の変更がありました。もともと、8時から17時30分の就業時間で、お昼の1時間休憩とは別に2時間ごとに15分の休憩があったのですが、子供の保育園・幼稚園のお迎えなどがあるとの従業員の声を聞き、休憩時間を短くして、終了時刻を17時に早めることにしました。すると、休憩時間を短くして17時に上がっても生産性は落ちず、また、こちらの方が良いという意見が多かったので、就業時間を変えることにしました。

こうした取り組みは、中間管理職が部下の意見を吸い上げることはもちろんですが、社内の工夫したコミュニケーションのあり方がポイントになっていると考えます。今までは人数が少なかったためLINEで社内の連絡や情報共有をしていましたが、人数が多くなるにつれLINEだと社内意思疎通がうまくできないという声があったため、「Slack(スラック)」を導入するとともに、正社員に会社用のスマートフォンを支給しました。業務上の改善につながる問題はもちろん、気づいたことやヒヤリハットなどを全従業員が参加しているチャンネルで発言してもらい、その場で話し合うようにしています。そのため、発言した本人も意図していなかったであろう些細な一言が、全社を巻き込む大胆な改革につながるようなこともあります。

                    BBQ

会社側から従業員のために情報発信

弊社には、月に1回発行の社内広報誌があります。コンテンツが3つあり、従業員がコラムを書いたり、従業員へインタビューをして記事にしたり、従業員の○〇ランキングなど従業員のことをメインにした社内広報誌にしています。弊社は本社の他にいくつか事業所があり、従業員同士のコミュニケーションが前より取りづらくなっているのが現状です。そこで、社内広報誌で従業員を取り上げることによりお互いを知ってもらい、普段会わない従業員が会ったときに話題にできるようにしました。作って終わりではなく、従業員同士のコミュニケーションツールとしても活用しています。

また、社内広報誌では社会保険制度や育児休業制度、金融リテラシーについての情報も発信しています。弊社には顧問社会保険労務士がおり、役員は労務関連の知識も勉強しています。制度によっては、会社側から申請しないといけない制度、個人で申請しないといけない制度があります。一般的に認知されていない制度について、「こういう使い方できるよ」、「こういう制度が使えるよ」など、会社側が情報収集をして従業員へ発信・周知していくことを徹底しています。資産形成も、NISAやふるさと納税、iDeCoなどありますが、従業員が時代に乗り遅れないよう会社から資産形成の方法の例として情報提供をしています。

さらに育児休業を当たり前に取得できる環境の整備に力を入れています。本人が取得したいのに「休んだら業務が回らなくなるから育児休業を取得できない」という環境になってしまうのは、会社の責任だと考えています。また、環境整備によって会社への「帰属意識」がさらに強くなるとも考えています。育児休業を取っても、業務が回るように、その人に依存しない仕組みを意識して作ろうとしてますし、会社内でのポジションも確保し、復帰しやすい環境づくりにも意識しています。

昨年出産し、10か月ほどの育児休業を経て今年6月に職場復帰した従業員がいます。現在は3歳と1歳の子供を育てながら、SDGsやサーキュラーエコノミーに関する会社の取組みを発信する事業(ブランディング)をメイン担当として手掛けています。子育てをしながらフルタイムで働いていますが、子どもの突発的な状況にも対応できるよう、テレワークに切り替えられるようにしたり、週のうち1日は余裕が持てるような業務管理を心掛けていたりと工夫をしています。

人財への投資そして社会貢献へ

会社として人材育成をして、スキルが高い従業員が増えて生産性が上がるのはすごくいいことですが、従業員自身のことを考えると、どこに行っても「引く手数多な人財」になることも目指したいと思っています。スキルが高い人財がいる会社は、取引先に「クオリティが高い会社」と評価してもらえますし、万が一弊社にもしものことがあったとしても、労働市場にすぐに戻れるような人財を育てることを目指して、従業員に投資をしています。以前は、約6000講座を受けられるeラーニングを提供していましたが、自主性に任せ過ぎてしまい結局管理ができていませんでした。今後のリスキリングや社内研修としてeラーニングをパッケージ化したものを導入することを検討しています。例えばITパスポート取得に向けた講座や階層別のマネジメントに関する研修を想定しています。従業員自身、スキルアップを自分のためにやるのはもちろんですが、最初のきっかけは会社に言われたから…でいいと思っています。数年後、異なる環境下になった時に、「あの時学んでおいて良かった」と思われるように会社として学べる環境を提供していきたいです。

また、会社の成長や今後のあるべき姿を考えたときに、環境問題について微力ながら貢献したい、社会を良くできるような活動を行いたいと思うようになりました。事業に関わる電子廃棄物に関する内容はもちろん、さまざまな環境問題の周知、改善に向けた情報発信をしていくために、SDGs、サーキュラーエコノミーについて、日本はもちろん、世界各国の事例や取り組みなどをご紹介するメディアの公開を予定しています。

  仕事1 仕事2

柔軟な改革から見えてきた課題

弊社は、従業員の声を聞きスピード感をもって改革してきました。良くいえば「柔軟」、悪くいえば「頻繁に変わる」改革です。会社としては、「慣れ」よりも「より効率よくしていきたい」という思いでやっています。中には賛成できない従業員もいますが、その意見も大切にしていかなくてはならないなとも考えています。

また、組織が大きくなると合意形成するのに時間がかかると思いますが、弊社はフラットすぎて、雑談の中で出た議題がそのまま「確かに良くないね。変えてみよう!」となり、その日のうちに業務のやり方が変わることも実際ありました。それが積み重なると、話だけが先行してしまっていたり、決まってもいないことが決まっているかのように伝わっていたり…と不具合も生じてきます。そういうところを改善するために、今後はきちんと書面に残すよう徹底していこうと考えています。今後も従業員が多くなる、組織が大きくなっていくことを見込んで、稟議を作成し、最終決裁者を定めていく仕組みづくりが課題です。

そして今後重要になるのは、中間管理職の機能です。事業拡大に伴い新しい事業所を建てるスタイルで拡大しているのですが、従業員の勤務場所が分散しているのが現状です。今までは顔を見て話すコミュニケーションが取れていたのですが、事業所が複数できたことにより直接会う機会が減ってきています。それに起因して、業務に支障がでてきたり、社員同士がぎくしゃくしたりしないか、という心配があります。そこで中間管理職がきちんと従業員と話をして、プライベートの悩みや仕事の悩み、ストレスなどをきちんと把握しフォローをしてほしいと考えています。何か問題があったけれど、会社側の認知・把握が遅れてしまい、フォローができていないとなると、従業員が本来の力を発揮して働けないと思うので、中間管理職のマネジメントや人とのコミュニケーションなども社内研修として取り入れていきたいと考えています。

                   リサイクルセンター

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