インタビュー・コラム
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掲載日:2024年12月26日
女性リーダーから学ぶチーム作り
働く女性応援講座 ~特別講座~ いつかはなりたい自分へ
埼玉県女性キャリアセンターでは、2023年2月13日に「働く女性応援講座~特別講座~」を開催しました。埼玉県内で活躍する3名の女性経営者を招き、働く女性のキャリア形成についての意識・モチベーションや、職場の悩み解消法についてお話しいただきました。3名とも民間企業・団体での勤務を経て経営者となられた方で、その過程において様々な苦労や難題を乗り越えてきた経験を持つ女性です。今回の講座では、今年度働く女性応援講座に参加された方々から寄せられた質問に、それぞれの視点からお答えいただきました。
■パネリスト
赤井 美津江氏(アンカルク株式会社 代表取締役) 写真右
横山 由紀子氏(有限会社福祉ネットワークさくら 代表取締役) 写真左
■コーディネーター
宇梶 純江氏(すみえ社会保険労務士事務所 代表) 写真中央
<略歴>
赤井 美津江氏
銀行に勤務し、女性渉外係として活躍するものの、子育てを理由に退職。子育てと同時に義理の父母と過ごす。晩年の介護も終わり、近所の大手企業で派遣社員・契約社員としての勤務を経て、2011年に宮代町にて、WEB・印刷物デザイン、事務代行のアンカルク株式会社を設立。2020年、デザインの仕事を通じて、地域内外の橋渡しをするような場所を宮代町につくりたいという想いで「道案内カフェnoumachi 」をオープン。宮代町を中心に、物・事・人、様々な交流が生まれる場所づくりに取り組んでいる。
横山 由紀子氏
さいたま市(旧浦和市)で創業者である実母、小川志津子の長女として生まれる。母校女子栄養大学副学長秘書、埼玉県内公立高等学校家庭科教員、管理栄養士と様々な職を経験後、2000年より介護の道へ進む。パート社員から正社員、役員へと立場を変え、2012年に事業承継し社長となる。社長となってからは高齢者事業に併せて、障害者事業を展開している。
宇梶 純江氏
電機製造メーカーにて、人事・労務の仕事に13年間従事したキャリアを活かし、社会保険労務士資格を取得。2011年に独立開業。人事・労務について経営者の健全な事業運営をサポートし、現在企業の抱える問題点に気づき、雇用リスクに対応する就業規則、社内規定づくり及び運用に定評がある。お客様とじっくり向き合うのが好きで、サポート内容は通常の社労士業務に留まらず、事務部門における仕事の効率化、マニュアルの標準化、人事業務の内製化及び人材育成の仕組みづくりなど活動の幅を広げている。
経営する企業等の情報は、各ホームページにてご確認ください。
アンカルク株式会社http://ancalcu-noumachi.com/
有限会社福祉ネットワークさくらhttps://www.net-sakura.jp/
すみえ社会保険労務士事務所https://www.sumiesr.com/
何事にも自信がなく、自己肯定感がないのですが、自己肯定感を上げるにはどうしたらいいですか?
<赤井>
私も自己肯定感があるとは思っていないのですが、意識していることがあります。いろいろ試すことが大切で、前向きな失敗はしてもいいと思っています。そして他人の評価を気にしすぎないようにしています。
他人から評価されようと思うと、自分の基準が高くなってしまい、それに満たないことに対して、反省することばかりで、どんどん自信がなくなっていく気がします。人を褒めてあげるように自分も褒めてあげることが一番いいのではないでしょうか。「よくやっているよ、私。」と客観的に見て頑張っていることは、心の中で自分を沢山褒めてあげるといいですよ。
<宇梶>
どうしても人と比較してしまい、あの人と比べると自分はできてないと思ってしまい、自分を苦しめてしまった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
<横山>
比較することは、人間の本能なのですかね。赤井さんも話していましたが、自分のいいところは何かを考えて自分を好きになるとか、小さなことでも自分を褒めてあげるとか、ちょっとしたことから自分を認めることが大切です。自己肯定感を上げられない人は、他人も認められないので、何よりまず自分を認めて自分を好きになることから始めるといい気がします。
リーダーに推薦されています。自信がなくて推薦を辞退したいのですが、どうしたらいいですか?
<横山>
リーダーになることへの不安な気持ちはよくわかります。
ただ、次のステージにチャレンジした時に見える景色を見てから考えてもいいのではないかと思います。リーダーになってほしいと言われる人は、能力や可能性を認められた限られた人なので、光栄だと思って引き受けてほしいです。会社や上司としても、能力や可能性がない人を推薦することはありません。新しい立場になり、今までよりも大変になることがありますが、その山を乗り越えた時に見ることができる新たな景色をぜひ味わって欲しいなと思っています。選ばれたことに自信を持ってほしいです。一度しかない人生です。自分の可能性に蓋をしないで、チャレンジしてください。
<宇梶>
リーダーになることへの怖さを感じる方も多いと思います。仕事自体への怖さ、仕事と家庭の両立についての不安を感じる方もいるでしょう。
<赤井>
私が仕事を頼む時は、できそうもない人には頼みません。頼まれた時点で、きっとあなたはできる人なのです。
ただ、新しいことを頼まれた時、ほとんどの方は、何らかの不安を抱えていると思います。初めから自信満々の人の方が逆に怖くないですか。皆さん多分、自信がないところからスタートすると思うのですよね。だからまずやってみることをお勧めします(笑)。
自分にはできないと思う時は、できないと考える理由がたくさんあると思うので、私は自分に対して「どうして?」と聞いていきます。「だって忙しいから。」どうして?「だって家庭のことがあるから。」のようにそれを掘り下げていくと、課題が見つかるので、課題解決に向けた一歩を踏み出すことができます。
「私は何でできないと思うのだろう」と自分に聞いてあげることがいいと思います。
<宇梶>
その恐怖や自信のなさについて、人に答えを求めるのではなくて、自分と対話をすることで、一つ一つ課題が整理でき答えが見えてくるということですね。素敵な考え方ですね。
私は、プロジェクトリーダーを任されてとてもやる気になっています。ただ、仕事はチームの仲間と一緒にやるものですので、仲間にもモチベーションを上げてほしいと考えています。どのようにしたらいいですか?
<横山>
一つは、ここの役割をこの人に任せたらきっと成功するだろうと思えるような、適材適所の配置を考えるといいです。まずは、人をよく見て観察することから始めてみましょう。
二つ目は、先ほども話にでていますが褒めることです。
皆の前で褒めることもいいですが、一人ひとり個々に褒めることは部下のモチベーションを上げる効果が大きいです。「小さなことでも褒める」を続けることは大変ですが、それを繰り返し続けることが大切です。
三つ目は、上司として一番大事なことで、部下を絶対的に信頼することです。少しでも駄目だろうと思っていると部下に伝わってしまいます。そして、万が一失敗してしまったら自分が守ってあげるという姿勢が大事です。
新しい仕事に不安を抱えている部下も多いので、なるべく失敗しないところから頼んで、成功体験を積み重ねることから始めるといいでしょう。
<赤井>
目的を共有することがとても大切です。何のためにこれをやっているかがわからないと、みんなモチベーションが上がりません。「こういうことだからこれをやりたいのだよね、私達は!」と思えることを共有することが大切だと思っています。
あとは、リーダーは楽しそうにやることです。つまらないことに人はついてきません。何でも楽しんでやることによって、他のメンバーも面白くなっていくのではないかという気がします。
楽しいことイコール楽ではありません。辛く苦しいことを我慢してやるのが仕事でもありません。仕事ができる楽しさ、嬉しさをメンバーで共有できたら、仲間のモチベーションもきっとアップしますよね。
<宇梶>
誰かに認めてもらえることや褒めてもらえることは嬉しいことです。また、自分の気づかないところで、誰かが自分の頑張っている姿を見ていることがわかると、もっと嬉しく感じます。周囲の人がいつも当たり前のようにやっていることに、ちょっとした感謝の言葉を伝えることもすごく大事なことかもしれないですね。
年齢差、世代ギャップがある上司・部下とのコミュニケーションで、何か工夫していることはありますか?
<横山>
母から事業を受け継いだ時、部下のほとんどが私より年上の人でした。今では80代の社員もいます。年齢差がいくつあっても、同じ人間ですので、必ず共通点があります。その共通の話題で盛り上がるように話します。先ほどの話と重複しますが、人をよく観察して、その人の良い点を見つけるようにしています。仕事以外でも他人が見ていないところで、ちょっとした気遣いをしている社員が多いので、そのような場面ではさりげなく感謝の言葉を伝えています。仕事のことでも仕事以外でも、ちょっとしたことでコミュニケーションを取るように心掛けています。
<赤井>
私は60歳になったのですが、世代ギャップはものすごく感じています。「え、そのように思うんだ!」と気づくことがたくさんあります。逆に、それが何かの発見であるように、「私たちはこのように感じているけど、この世代はこのように考えるのだな」と思えて、とても面白いです。
一つの考え方に統一しようとすると、自分の常識に合わせてもらうことを優先してしまい、世代ギャップについてマイナスのイメージを持ってしまうと思います。世代ごとで違うことが当たり前だと思っていると、「年齢は違ってもここは一緒なんだね」とか、「なんか私も若い考えにちょっとついていけた」とか、自然と世代ギャップを受け入れることができるようになります。
<宇梶>
私たちも若い時は、何らかの世代ギャップは感じていたでしょう。年上の人たちを見て「何かおかしい」と思ったこともありました。今は逆に上の世代になって、若い人たちに対して、「自分、古くないかしら」とか、「ダサくないかしら」とか、意識してしまうことがあります。赤井さんの考えでは、世代の違いはどうでも良く、私達と違う若い人の感性を楽しんで、受入れてしまうということですね。
<横山>
ある女性社員にスキルアップ研修に参加してもらいたく、参加を促したのですが、家庭の事情で断られてしまいました。その社員との話の中で、教育や家事についての考えに世代ギャップがあることに気づきました。今では男性もイクメンで、育児休業を取得することが当たり前の時代だから、母親の考え方や価値観も、私の若い頃とは異なっていて当たり前です。改めて私も変わらないといけないと思いました。
皆が忙しく働いている中、何もしていない無能な上司(そのように見える上司)がいます。同僚も皆、イライラしています。そして、何でこの人が上司なのだろうとモヤモヤしています。このような気持ちをどのように受けとめたらいいですか?
<赤井>
私が無能な上司なので、社員はきっと皆モヤモヤしていると思います(笑)。
無能に見えても100%駄目な上司はいないと思っています。この人の良いところはどこだろうと逆に探してみると、99%駄目だけど、1%のいいところが必ずどこか見つかるはずです。それに、大体上司になっている方は、全く無能の人ではないのではないでしょうか。
きっと、私たちがその人を見ている角度が違っていたり、自分の価値観と合わないだけの部分もあるでしょう。でも、そのように理解したとしても、結局モヤモヤすると思います。私よりいっぱいお給料をもらっているし・・・(笑)。
そのようにモヤモヤしている時でも、「こういうところはいいところなんだ」とか、「こういうところは、自分のためになってもらえるな」とか、自分の為に少しだけでもプラスに考えてその場を乗り越えてほしいと思います。
<横山>
その上司をどうやったらやる気にさせることができるかを勉強してもいいですよね。
イライラしているよりも「今日はここまでやってくれたじゃん」とプラスに捉え、ゲーム感覚で楽しくなるように考えてみたらいかがでしょうか。
<宇梶>
割り切って考えて、その上司のナンバー2としてサポート役に徹してしまうのもいかがでしょうか。無能な上司を有能な上司に変えることができた「私」がいたらすごいですよね。
会社員である以上、一緒に働くメンバーは自分で選べません。職場にはそりの合わない人もいて、苦痛を感じる人もいるでしょう。ただ、人間関係が嫌で退職してしまうことは本当にもったいないです。考え方を変えることで、嫌な思いを少しでも解消できたらいいですね。
<赤井>
私は相手を自分の基準に合わせないようにしています。それでも、嫌いな人は嫌いで仕方ないと思います。そのような人とは、ちょっと距離を置けばいい気がします。仕事だけの関係として大人の対応をしましょう。
<横山>
私は嫌な人がいると、自分からその人に近づいて、どれだけ嫌な人か知りたくなってしまいます(笑)。そうすると意外と思っていたほど嫌な人ではないことが多いです。少し仲良くなることで、相手の嫌な部分を冗談を交えて伝えることができるようになります。いろいろな人がいるので、やはり自分の価値観に合わせず、お互いを認め合う姿勢も大切です。
応援メッセージ
<横山>
自分の仕事に誇りを持つこと、自信を持つこと!
人生は1回です。人生の中で、働いている時間はかなりのウエイトを占めます。その働いている時間を上機嫌で過ごすのか、不機嫌に過ごすのかは気の持ちようで変わります。ぜひ上機嫌で過ごせるようにしてほしいです。また、自分の可能性に蓋をせずいろいろなことにチャレンジするとともに仕事に誇りを持って、一緒に輝いていきましょう。
<赤井>
たった1回の人生なので、嫌な仕事を我慢して続ける必要はありません。
自分がどうしたいかを考え、自分がやりたい仕事を選んでほしいと思います。自分が決めたことに対しての責任を自分で取っていけばいいだけなのです。どんどん面白いと思うことや、やってみたいことに挑戦してほしいです。
女性活躍推進の時代と言われることもありますが、女性だから何かやらなきゃいけないんじゃないかとか思う必要はなく、本当に自分がやりたいことなのか、これをやることによって自分のキャリアが上がるのかなどを考えて、自分の道を決めたらよいのではないかと思います。