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掲載日:2023年12月28日
Q 高木功介 議員(自民)
災害は激甚化しています。堤防を高くすれば氾濫を防止できることを前提とした治水は限界を迎えつつあります。平成30年7月豪雨や令和元年東日本台風第19号など、全国各地で豪雨などの水害や土石災害が発生するなど、人命や社会経済への甚大な被害が生じております。
これらを踏まえ、国土交通大臣から社会資本整備審議会会長に対して、気候変動を踏まえた水災害対策の在り方についてが諮問され、令和2年7月に答申がまとめられました。答申では、近年の水災害による甚大な被害を受けて、施設能力を超過する洪水を発生することを前提に、社会全体で洪水に備える水防災意識社会の再構築を一歩進め、気候変動の影響や社会状況の変化などを踏まえ、あらゆる関係者が共同して流域全体で行う流域治水への転換を推奨し、防災減災が主流となる社会を目指すとしており、治水の概念が大きく転換いたしました。
そもそも水害とは、川の能力を超えて雨が降ると、水があふれることです。あふれるほどの降雨が起きたら、上手にためて、あるいは上手にあふれさせて、できる限り被害を少なくする。そのために河川管理者だけではなく、流域のみんなで治水に取り組むのが、このたび国土交通省が示した流域治水であると言えます。リスクを流域全体でシェアすることは、同時に努力をみんなでシェアすることです。どう地域別でシェアしていくのかをきちんと可視化し、平素より備えていくことが、この運命共同体意識を醸成していく第一歩だと防災研究者の加藤孝明東京大学教授も主張しております。
そこで、流域治水を考える上で、下流の自治体、埼玉県で言えば当然、東京都も含まれますが、浸水地域への公的に保障する受益者負担制度の構築は必要であると言えます。どう被害を補償するのかは、豪雨が頻発する現状を踏まえると、先送りにできません。堤防やダムで洪水を防ぐハード依存の従来型治水は、その限界を迎え、令和3年5月10日に施行された流域治水関連法で大きな転換点を迎えています。上手にためて、あるいは上手にあふれさせて、できる限り被害を少なくする際に、受益団体はどのような負担をするのか考えるべき時にきております。埼玉県は、国や下流の自治体と議論をすべきと考えますが、知事の答弁を求めます。
A 大野元裕 知事
本県では、近年の頻発化・激甚化する水災害を受けて、流域のあらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」を推進しています。
まず、降った雨を速やかに「ながす」対策として、河川整備を加速化させています。
また、議員御指摘の川の能力を上回る降雨に対し、地域で「ためる」対策も取り組んでおり、調整池の整備、校庭貯留に加え、近年では田んぼダムの取組も進めています。
しかし、農家の方からは、なぜ市街地のために、なぜ下流のために田んぼで水をためなければならないのか、といった意見も聞いております。
このような「ためる」対策に対し、流域として、特に受益する下流域からの支援が必要と感じております。
このため、私が会長を務め、12の県知事で構成する「命と生活を守る新国土づくり研究会」において、田んぼダム等の貯留機能を保全する取組に対して下流域の自治体が支援を行う制度の創設などを私から提案をし、「流域治水の深化に向けた提言書」として取りまとめました。
この提言書については、11月の研究会において国土交通省堂故茂副大臣、こやり隆史政務官に手渡すとともに、総理官邸を訪問し、岸田文雄内閣総理大臣に対して直接説明してまいりました。
流域治水の目指すところは、上流から下流まで、流域のあらゆる関係者が一丸となって対策を進めることです。
その推進に向けた機運醸成に取り組みながら、貯留機能を保全する方策について、流域治水協議会の場を活用して、下流自治体とも議論するとともに、引き続き研究会などを通じ国に要望してまいります。
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