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掲載日:2024年3月21日
Q 田並尚明 議員(民主フォーラム)
新型コロナウイルスに社会混乱が生じて1年以上が経過しています。いわゆるコロナ禍により、私たちの生活環境は一変してしまいました。今年1月に発令された2回目の緊急事態宣言も3月7日まで延長されており、大人だけでなく子供たちの生活面や精神面にも大きな影響を与えております。
令和3年2月、児童虐待の疑いがあるとして埼玉県警察本部から県内の児童相談所に通告された18歳未満の子供は、前年比426人増の1万177人で、初めて1万人を超えたと読売新聞の見出しにも大きく取り上げられました。このうち、昨年3月から6月の通告件数は、前年比で3割から4割程度増加したとのことです。この時期の通告件数の増加が目立つのは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛要請や学校の休校等で、親子で家にいる時間が増えたことが一因となったと見られています。誰もが置かれている環境次第では、思わず虐待と言われてしまう行為をしてしまう可能性があるのではないかと思います。
虐待を受けてしまった子供たちは、そのトラウマから複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)に長い間、悩まされることがあります。突然気持ちが落ち込み、学校や仕事に行くことができなくなり、転職を重ねてしまうケースも珍しくありません。虐待の体験は、心に深い傷を与えてしまうのです。虐待を受けるなど何らかの理由により家庭で生活することができない子供たちは、社会全体で守り育てていかなければなりません。
こういった中、令和3年度当初予算案では、児童相談所の新設や一時保護所の新設、SNSを活用した相談窓口の開設、さらには児童福祉司や児童心理司を57人増加するなど、県の児童虐待を何とかしたいという執行部の思いが表れているように感じます。また、日々現場で子供たちを守るために御尽力いただいている児童相談所の職員をはじめ、関係者の皆さんに感謝を申し上げます。
国は、平成12年にいわゆる児童虐待防止法を施行しており、児童虐待の定義を身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトの四つとし、住民の通告義務を盛り込むなど子供たちを虐待から守る法整備を行いました。平成28年には児童福祉法を改正し、子供はより家庭に近い環境での養育を優先する家庭養育優先原則を盛り込みました。虐待を受けている子供たちが家庭的な環境で生活をしていくには、何よりも里親を増やしていく必要があると考えます。
里親というと、お金持ちでないとなれないのではないか、専業主婦など時間がある方しかなれないのではないかと、ハードルが非常に高いという誤解があるように感じます。実際には子供の生活費のほとんどは公費で負担されますし、仕事を持っていても里親になることはできます。
そこで、知事にお伺いいたします。
県では、令和2年度から令和6年度まで5年計画である埼玉県子育て応援行動計画を策定しており、里親など委託率を平成30年度の22.1%から令和6年度には32%まで向上させるという目標を掲げています。それを達成するには、まず、里親制度についての正しい情報を広く県民に周知していく必要があると考えます。県としては、里親制度についてどのように周知し、またどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
次に、児童養護施設の整備についてお伺いいたします。
令和元年度の児童虐待に関する相談件数のうち、ネグレクトは2,727人で、対応状況は里親委託17人、施設入所61人、その他は家庭引取りなどとなっております。先ほども述べたとおり、虐待を受けている子供たちが家庭的な環境で生活をしていくには、何よりも里親を増やしていく必要があると考えます。しかし、里親を成立するためには、子供たちが安心して家庭的な環境で幸せに生活できるように相手との相性を見極めるなど、慎重に丁寧に進めていかなければなりませんし、現場でもしっかり時間をかけて里親が成立できるように御尽力いただいております。
ただ、こうしている間にも虐待で苦しんでいる子供たちがいるのも事実です。私は、そういう子供たちを守っていくためにも、児童養護施設を整備していくことも必要があると考えます。国では、新たに「新しい社会的養育ビジョン」が取りまとめられ、それに基づき県でも埼玉県子育て応援行動計画を策定しております。その中では、今後、児童養護施設整備については小規模かつ地域分散型の施設を進めていく方針のようですが、子供たちが本当に安心できる環境を考えると、そのことに異を唱えるものではありません。
ただ、先ほども申し上げましたとおり、今こうしている間にも苦しんでいる子供たちがいるのも確かです。一時保護所で1年以上も保護されている子供たちもいる現状を考えると、その方針では施設の整備が進むのには時間がかかってしまうのではないかという危惧があるのも正直な気持ちです。
そこで、お伺いいたします。現在、埼玉県において施設での養育が必要な子供の人数はどのぐらいいるのでしょうか。そして、今後県ではどのように施設を整備していくのか、お伺いいたします。また、現場からは、現在も施設の人材が足りないと聞いております。施設を整備するには人材の確保も必要と考えますが、今後どのように人材を確保していくのか、お伺いいたします。
次に、児童福祉司や児童心理司の現場での教育体制についてお伺いいたします。
児童相談所では現在も職員の方の業務量が多忙を極めている中、今年度、児童福祉司や児童心理司が57人増員されることは、苦しんでいる子供たちのことも考えると大変ありがたいことです。子供たちが受けてきた心の傷は、一人一人様々であるでしょうし、性格も違います。また、親との対話等、現場では様々な対応を適切にしていくことが求められます。子供たちの人生がかかっている大事な業務だと思います。
そのような大切な業務には、知識と併せて経験が必要だと考えます。そこで、現場では中堅の職員さんが新人の教育を担っているため、中堅の職員さんたちは新人教育と本来の業務を兼ねているために、その負担と責任は大きなものとなっています。
そこで、お伺いいたします。中堅の職員さんがその経験を生かし、本来の子供たちの業務に集中できるよう、新人の教育には経験が豊富なOBを活用するなど、何か新しい対策が必要と考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。
最後に、虐待を受けた子供は、里親や児童養護施設から巣立った後にもうまく自立することができないケースもあります。子供たちが希望のある明るい社会生活を送ることができるよう、県ではどのような支援をしていくのか、併せてお伺いいたします。
A 大野元裕 知事
里親制度についてどのように県民に周知し、またどのように取り組んでいくのかについてでございます。
議員お話しのとおり、里親委託を進めるためには里親制度を広く県民に周知し、多くの方に里親登録していただくことが必要となります。
そこで、彩の国だよりやテレビ・ラジオ、SNSなどによる情報提供をはじめ、多くの県民が利用する郵便局やショッピングセンターなどでのポスター掲示やチラシ配布などを行っています。
さらに、来年度、里親制度を分かりやすく紹介する専用のホームページを新たに立ち上げ、周知の強化を図ります。
今年度は新型コロナウイルスの感染が拡大したことから、県内各地で開催してきた里親入門講座を、新たに動画として、県のホームページにアップし、周知を図っています。
里親制度に関心のある方々が気軽に都合の良い時間にアクセスできることから、本年1月までに約2,000回視聴され、新たな掘り起こしにつながっています。
また、里親を増やす取組としては、平成30年度からNPOと連携し里親の募集から研修、登録など一貫した支援をきめ細やかに行っております。
今後も、里親制度についてあらゆる媒体を活用した情報の周知を行うとともに、NPOと連携した周知を強化するなど、様々な取組を実施して一人でも多くの方に里親登録をしていただけるよう取り組んでまいります。
次に、埼玉県において児童養護施設での養育が必要な子供の人数はどの位いるのかについてでございます。
県では、虐待などによって、保護者が養育することができない子供については家庭養育を優先する観点から、里親の下で生活できるよう努めております。
施設への入所は、「保護者又は子供自身が里親委託に反対している場合」や「子供の情緒行動上の問題がある場合」などで、施設での生活が望ましいと児童相談所が判断した子供が中心となります。
施設での養育が必要かどうかについては、子供本人の適性や保護者の意向などを慎重に見極めて判断する必要があることから、施設養育が必要な子供の具体的な人数を導き出すことは難しい状況であります。
なお、県内22カ所の児童養護施設の定員は約1,400人でありますが、実際に施設で生活をしている子供は、令和3年2月1日現在で1,253人となっております。
次に、今後どのように児童養護施設を整備していくのかについてでございます。
本県の社会的養育推進計画に位置付けられている埼玉県子育て応援行動計画では、家庭養育優先の原則により、まずは里親委託を進めることとしています。
しかし、虐待により心に傷を負っている特別なケアが必要な子供が増えており、今後児童養護施設の整備が必要となる可能性もあると考えております。
施設が必要となった場合には、家庭養育優先の原則を踏まえ、家庭的な環境に近い生活ができる小規模な施設整備が求められます。
先ほどご説明したとおり、施設での養育が望ましいと判断された子どもたちが、施設の不足により入所できていないということは、現在ありませんが、県としては、児童養護施設整備の必要性を適切に見極め、子供が安心して生活できる場所が不足することがないように取り組んでまいります。
次に、児童養護施設の人材を今後どのように確保していくのかについてでございます。
議員お話しのとおり、子供たちへきめ細やかなケアを行うために、児童養護施設の人材確保は重要です。
そこで、県内22カ所ある全ての児童養護施設が参加する職員採用合同説明会を埼玉県児童福祉施設協議会と県が共同開催しており、今年度はリモートで行うことを予定しております。
多くの施設が参加することや県が共催することが、より多くの方に来ていただけることにつながり、結果として前回は100名を超える参加者がございました。
また、県では保育士の養成施設に在学する学生で、資格取得後に県内の児童養護施設で5年間保育士業務に従事することで学費や入学金など最大160万円が返済免除となる制度を設けております。
さらに、新たに保育士資格を取得した方が児童養護施設職員として採用された場合に20万円の就職準備金制度もございます。
これら一連の取組を通じ、今後も児童養護施設の人材確保に向け支援を行ってまいります。
次に、児童福祉司や児童心理司の現場での教育体制についてでございます。
増加する児童虐待に迅速かつ適切に対応するには、児童福祉司や児童心理司を増員していくことが重要であります。
しかし、近年の採用拡大により、児童福祉司については全国の割合より低いものの経験年数3年未満の職員が38%に上るなど、職員の育成が課題となっております。
このため、中堅職員のOJTに関わる負担が増えている状況にあります。
そこで、議員お話しのとおり、経験豊富な児童相談所OBを再任用職員として若手職員の育成に活用することは大変有効な手立てであると考えており、更なる配置の拡大に努めてまいります。
また、虐待対応事案は困難化しており、弁護士など外部の専門家による研修を積極的に取り入れたいと考えております。
このことにより、職員全体の職務遂行能力の底上げを図るとともに、所内で指導的役割を担っている中堅・ベテラン職員の負担軽減にもつなげてまいります。
次に、子供達が希望のある明るい社会生活を送ることができるよう県ではどのような支援をしていくのかについてでございます。
里親や児童養護施設から巣立ったあとの自立への準備、さらには進学及び就職など多方面からの手厚い支援が必要であります。
自立のための支援として県では、自動車運転免許の取得費用や施設退所後の家賃・生活費を貸し付けるなどしております。
進学支援としては、塾に要する費用や教材費、受験料の補助を行っています。
また、大学生などに対し、民間アパートを借り上げ、低額で貸し付けるとともに、生活相談支援員がマンツーマンで日常の悩みに対応する「希望の家」事業を県内で4カ所運営をしております。
就職支援としては、職業意識やコミュニケーション能力を身に付けるセミナーの開催や、就職後に支援員が職場を訪問し、本人からの悩みなどの相談に応じるフォローアップも行っております。
これらの支援に加え、施設退所後の子供たちの居場所である退所児童等アフターケア事業所「クローバーハウス」をさいたま市内に設置し、仲間と気軽に交流したり、悩みを相談するための場所となっています。
今後も、子供本人や里親、児童養護施設の方からの意見をお聞きし、更なる支援策を通じ、子供達が生まれ育った環境に左右されずに、希望を持って社会生活を送ることができるよう全力で取り組んでまいります。
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