地区計画の概要
1)地区計画を定められる土地の区域
1.用途地域が定められている土地の区域
2.用途地域が定められていない土地の区域のうち、次のいずれかに該当するもの
- イ 住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われる、又は行われた土地の区域
- ロ 建築物の建築又はその敷地の造成が無秩序に行われ、又は行われると見込まれる一定の土地の区域で、公共施設の整備の状況、土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が形成されるおそれがあるもの
- ハ 健全な住宅市街地における良好な居住環境その他優れた街区の環境が形成されている土地の区域
2)地区計画の構成
1.地区計画の目標
どのような目標に向かってまちづくりを進めるのかを定めます。
2.区域の整備、開発及び保全に関する方針
地区計画の目標を実現するための方針を定めます。
3.地区整備計画
地区のまちづくりの内容を具体的に定めるものであり、「地区計画の方針」に従って、地区計画区域の全部または一部に必要に応じて、道路、公園、広場などの地区施設の配置や建築物等に関する制限などを詳しく定めます。
3)地区整備計画で定める内容
地区整備計画のイメージ
出典:国土交通省ウェブサイト(www.mlit.go.jp/crd/city/plan/03_mati/08/index.htm)
1.地区施設の配置及び規模
地区の住民が利用する道路、公園、緑地、広場などを地区施設として定めて確保することができます。
2.建築物やその他の敷地などの制限に関すること
- ア 建築物等の用途の制限
地区の目指すまちづくりにそぐわないものを排除するため、建物の使い方を制限することができます。
あるいは伝統産業の工場等を許容する等のため、緩和することができます。
- イ 建築物の容積率の最高限度又は最低限度
- 容積率を制限又は緩和し、周囲に調和した土地の有効利用を進めることができます。
- ウ 建築物の建蔽率の最高限度
庭やオープンスペースが十分にとれたゆとりのある街並みをつくることができます。
- エ 建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度
狭小な敷地による居住環境の悪化を防止、あるいは、共同化等による土地の高度利用を促進することができます。
- オ 建築物の敷地の地盤面の高さの最低限度
敷地の嵩上げにより、水災害のリスクを軽減することができます。
- カ 壁面の位置の制限
道路や隣地への圧迫感をやわらげ、良好な外部空間をつくることができます。
- キ 壁面後退区域における工作物の設置の制限
壁面後退区域内の自動販売機等の工作物の設置を制限し、良好な景観とゆとりある外部空間をつくることができます。
- ク 建築物等の高さの最高限度又は最低限度
街並みの揃った景観の形成や土地の高度利用を促進することができます。
- ケ 建築物の居室の床面の高さの最低限度
居室の高床化により、水災害のリスクを軽減することができます。
- コ 建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限
色や仕上げ、建物のかたち・デザインの調和を図り、まとまりのある街並みをつくることができます。
- サ 建築物の緑化率の最低限度
敷地内において植栽、花壇、樹木などの緑化を推進することができます。
- シ 垣またはさくの構造の制限
垣やさくの材料や形を決めます。生垣にして緑の多い街並みをつくることができます。
3.その他、土地利用の制限
現存する樹林地、草地などの良い環境を守り、壊さないように制限することができます。
また、現存する農地で農業の利便増進と調和した良好な居住環境に必要なものについて、土地の形質の変更等の制限を定めることができます。
4)地区計画の特徴
1.地区レベルでの詳細な計画であること
地域の最小単位である「地区」ごとに、道路・公園等の地区施設、建築物、土地利用に関する事項を総合的かつ詳細に計画するものです。
2.住民の意向を尊重した計画であること
住民にとっては身近で日常生活にも深くかかわる都市計画です。地区計画では土地や建物等の財産権を大きく制限する場合もありますので、計画案の作成にあたって関係権利者の意見を求めることが制度にとり入れられています。
3.計画決定の主体は市町村であること
この制度は地区レベルでの詳細な計画を立てるものであるため、地域の行政を直接担当しその実情に精通している市町村が計画を定める主体となります。これにより地区の実情に応じた、きめの細かいまちづくりが期待できます。
4.計画内容が選べること
地区計画で定められるメニューは、道路・公園等の地区施設の配置や規模、建築物等に関する各種制限、土地の利用の制限などが用意されています。このうち、地区の実情に合わせて、市町村が地元地権者等の意見を聞きながら定めたい内容を選ぶことができます。
5.計画実現方法が選べること
地区計画は計画の実現を担保する方法として、建築・開発の際に届出を義務づけるというものから、その地区だけの条例を制定して建築物等に関する事項をコントロールするもの、さらには予定道路の指定を行うというものまで用意されています。地区の実情に合わせて計画実現の方法を選択することができます。