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掲載日:2025年12月5日
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秋田大介(モデレーター)
はい、まず第一部のオープニングスピーチですけれども、ゲストで来ていただいております株式会社コーミン代表取締役の入江智子さん、よろしくお願いします。皆さん改めて拍手をお願いします。
入江智子(スピーカー)
はい。みなさんこんにちは。大阪からやってまいりました株式会社コーミンの代表取締役 入江と申します。今日はよろしくお願いいたします。30分ぐらいですけれども、大阪でやっている公民連携のまちづくりのお話をさせていただいて、私、いつもまちづくりなので、建築とか土木の方とお話するのが多いんですが、今日は割とソフトの分野の方も多いということで、ちょっと広めに公民連携の話をしていきます。ただ、その一番最初にこの『morineki(もりねき)』っていうまちの話を最初10分ぐらいさせていただきたいと思います。
大阪府大東市は大阪府のあの赤いところなんですけれども、大阪市にも隣接していますし、隣が奈良県の生駒市に接しておりますね。大阪の中でも都心のところからほんの20分ぐらいで行き着く。ただ、ちょっと郊外の町というところです。産業としては、ものづくりの町です。大東市の下に東大阪市という、どちらにしても大東市の後にできたんですけど、同じような名前で、やはり大阪市の方を向いていて、大阪市の東だよと言っているだけの山田太郎みたいな名前の町でして、同じく主たる産業は製造業、倉庫、物流業の、人口が11万人ちょっと、面積は18平方キロというところです。ここにこういう『morineki』というまちを作りました。見えているのが奈良県との県境である生駒山になっております。そこにぱっと開けた1ヘクタールぐらいのエリアがありまして、向かって左の方が借り上げの市営住宅です。市営住宅なんですけれども、建物はコーミンの方が持っておりますので、公が持っている床はありません。右の方が商業施設ですね。こちらも1,500平米ぐらいありまして、お店も8店舗ぐらい入っていて、企業の本社さんが2階にオフィスを構えている。間をつないでいるのが約3,000平米の都市公園というプロジェクトになっています。底地は、全部大東市のものを借りてやっています。
コーミンという会社なんですけれども、この公と民、2つの視点でまち、その中でも日常生活を豊かにするという意味で、目玉焼き、これ双子の卵の目玉焼きで割ったら黄身が2つだったという「ちょっとハッピーだね」という日常をイメージしています。うちは大東市の3セク(第三セクター)です。ただ「ネオ3セク」と自分たちでは言っているんですけれど、特に何かこう管理するべき建物を最初に与えられたわけでもなく、今の建物もちょうど今から5年近く前にできました。会社としては2016年に創業していますので、もう最初の頃は本当に毎日必死でマーケットなんかをやりながらやっていました。
そういう新しい3セクなんですけれども、私自身は大東市役所の職員を18年やっていました。建築職でした。そこを出てきて、これ「Our Purpose」なんですが、『まちを変えるのは、誰だ?あ、私だ!』というのがうちの会社のパーパスです。要は町に、人口減少や低成長が続くこれからの日本で、公民連携という手法を駆使しながら、コーミンは『いつも「はじめの一歩」を踏み出す存在でありたい。』。なので『ほんとうにまちに必要なことだと思ったら、その一歩をためらわず、諦めず、笑顔で前に出す』ということがうちの会社のパーパスです。それに則って様々な事業をやっております。
『morineki』自体はこんな感じですね。普通に商業施設もあるので、火曜日以外は毎日やっていますので、現地に来て見ていただいたらなとは思うのですが、『もりねき住宅』というのが借り上げの市営住宅で、『もりねき広場』と『Keitto(ケイット)』という商業施設ですね。ただ、特にすごい公民連携をやっているわけじゃなくて、基本は市有地の定期借地事業です。そこに我々が地元の枚方信用金庫さんというところから約10億円ぐらいを借りて、大東市からの出資も入れていただいて、事業をして、上屋は全部、建物はコーミンの方で所有をしています。そこで商業施設と都市公園を合わせて整備したというプロジェクトになります。
これが実は建て替わる前の2018年の写真になります。本当にこういうボロボロの市営住宅が建っておりました。144戸建っていました。すごく色とりどりに見えると思うんですけれども、お風呂がないためにこうやって皆さん自分でね、ベランダにお風呂をつけちゃっているということもあってなかなか、こういう平屋の市営住宅もたくさんありました。これがbeforeの大東市営飯盛園第2住宅でした。こちらをPPPですね、公民連携によって市営住宅の建て替えを行ったんですけれども、大きくこの赤字で書いてあるところを目標に据えました。この赤字で書いてあるところは、どの自治体もこれから必ず必要な3原則なんじゃないかなと思いますけれど、やはりこれからの人口減少の時代にあって、経費を削減し、これは公共の床面積だけではなく、介護保険料、医療費全てだと思います。社会保障費も含めて公が出すお金ですね。経費の部分は削減しながら、しかし、公共サービスとしては絶対質を上げていかないといけないと思います。まだまだ上げる必要がある。そして、最後に税収を加えて増やすことを考える。これを普通は市役所だと別々の課がやっていることが多いんですけど、コーミンでやっている事業は一個一個の事業全部にこの3つが必ず入るように組み立てています。
今回の『morineki』であれば、1番『公営住宅をたたみながら、』、もう既に戸数もさることながら、所有してるものや床面積は0です。で、今回74戸借り上げましたので、144戸からすると半減している。そして、20年という年度を区切っているということでは、経費を削減しています。2つ目の『公共サービスの質』という意味では、市営住宅ってやはりそこに住まわれる入居者さんの生活の質ですね。所得、健康、幸福、色々あると思うんですけれど、そういうものが上がっていない、というのがすごくあると思っていました。バリアフリーで住生活基本法に基づいた快適な『ハコ』は提供しているかもしれませんけれど、なかなか思っていても「来月本当に困ってるんだけどな」という人がすぐ入れているかというとそうでもないですし、入った人が「じゃあ仕事がどんどん行けるようになって、生活が楽になって卒業しました」という声もなかなか聞かないという意味では、入っている方の生活の質を上げるということが、公共サービスの質を高めることかと思っています。加えて、『周辺のエリアを豊かにする』。その敷地だけではなくて、お店を入れることも含め、様々なことを狙ってやっていきました。
もう一つは、なかなか公共のプロジェクトだとそうならないことが多いんですが、やはり『運営者が企画し、開発する』ということが大事だと思います。なので私たちは大東市から「いい住宅街にしてくださいね」というオーダー、ビジョンというのをいただいた中で、そこにはその民間賃貸住宅を20年後に完全に民間賃貸になりますので、最初の借り上げ期間は20年なのでね。しかも10年後ぐらいからは混ざり合って住んでいくという時期を作っています。だんだんこの空いた市営住宅は民間賃貸に戻されていく、というような時期を経て、20年後、こうなった時にもここの市営住宅や民間賃貸住宅が埋まる、満室になるようなエリアをつくっていかなきゃいけないというふうにもすごく考えましたので、やはりそこには適切な店舗があった方がいいですし、緑が豊かできれいだったりとか、周辺環境ですね。そこをすごく考えながら作っていきました。
『もりねき住宅』ですね。これ市営住宅なんですけれども、全部木造で中庭に向かって建っていまして、これですね。このガラスの引き違い戸が玄関です。これ、家の中から中庭を見ている状態なんですけれども、このベンチみたいなのも含めて、その前の植え込みも全部入居者さんが使っていいですよ、という形で、「もうとにかく生活感を出してください」と言っています。そのことでほとんど、高齢者の一人暮らしがスタートでしたので、これ44世帯が高齢者の一人暮らしだったのですが、1LDKが44戸、30世帯の人に「戻ってきたいです」と言われた方は全員戻り入居で受け入れております。今は空いたところは新婚で子育てさんがたくさん入っているので、もう平均年齢は40歳ぐらいまで、最初70オーバーだったんですけれど、下がってきていますが、このガラスの引き違い戸だとお昼過ぎてもこう遮光カーテンが閉まっているとなると、高齢者のおばあちゃんがきっと、「夜中に何かあったのかもしれない」と思ったり、逆に夜中でも煌々と電気がついてレースのカーテンしか閉まっていないとなると、「昼間に何かあったんじゃないか」ということですぐ連絡が来て、私が鍵を持って家に行くと「風邪ひいて寝てたんだ」という場合もあれば、本当に亡くなられてたという場合もありますけれど、すぐに発見されて、皆さんそうなる前から本当にコミュニケーションをたくさんとって、元気に過ごしておられます。
配置図で見るとこんな感じで、実は特徴的なのは公園の形がこんな形に散りばめられてるということです。散りばめられてるというか、普通「公園というのはこう四角くて、ここがパークPFIでカフェを建てているんでしょ」と言われるんですけど、実はそうでは全くなくて。最初に企画する時から一緒にやっていますので、公園の方がより商業施設の売り上げ商機を上げるような配置にするためにはどうしたらいいかということを考えて、こういう形に芝生の公園を計画しました。大東市の方には「こんな計画でお願いします」というのを提出して、「いいね」となってやるという、このように何度も提案をするというのをやってきました。
しかも、その境界の上には何も柵があったり、遮るものはありませんので、境界はすごく曖昧です。行ってみたらここですよと言われない限り、その境界が分からないみたいな。そうするとその曖昧な境界が結構当事者意識を生むというか、「この辺まで使っていいのかな」とか、「ここからもう出てしまえ」みたいなこともあって、コンフォートゾーンから一歩出る、ということがウェルビーイングだと思っています。なので、入居者さんも知らない間にお部屋から中庭に出てしまう。そこから公園に出てお店に行ったり、駅に行って買い物に、お仕事に行ったりっていうようなことが起きています。実際、「所得が上がったので出ていきます」とか「再計算してください」、みたいな方も生まれています。
路線価も25%アップしまして、子供の数が激増しました。もう保育園も待機児童がいっぱいで、あの団地にというばかりではなくて、周辺にどんどん戸建てが建て替わっているんですね。団地にも子育て世帯も来ていますけれども、周辺にどんどん戸建てが建て替わっていって、子供の数が増加しています。そして大東市はなんと令和6年度、19年ぶりに転入の方が転出を上回って転入増になりました。なので、エリアを豊かにするという最後の目標ですね。そちらの方も色々叶ってきたのかなと思っています。うちは大東市の出資もいただいてる会社ですけれども、そうじゃなくてもたくさんの民間の工務店さんとかでも、地元企業さんがこういうことにコミットされるというパターンも増えてきています。
そして、「どんなところと一緒にやった方がいいですか?」と自治体の方によく聞かれるのですが、私はその時は「『そこで得た利益をエリアの維持発展に再投資する』。そんな会社さんがいいところなんじゃないですか」という風にお伝えしています。大東市は公民連携に関する条例というのを作っていますので、空いている市有地とか、使われてない公共施設があった場合、いろんな公民連携事業を市に提案できるようになっています。その時にはこの5箇条をですね、「地域の課題を解決する事業ですよ」とか。これソフト事業でもOKにしています。教育事業とか様々な事業でこういう提案があることもあります。
実際うちはこの四条畷駅っていうところから今、これだけの事業を展開しております。ここが『morineki』ですね。当然ここの広場のところでは、来月も『珈琲ビーンズフェス』みたいなこともやりますし、『もりねき書店』というのはこの向かい側に商業施設を、空き店舗を買いまして、ここでブックカフェをやっています。少し離れた山裾にはマウンテンバイクコースの社会実験。これはまだ社会実験なんですけど、ちゃんと土地代を払ってやっています。
ここは『morineki 2』なんですけど、これ最近ちょうど議会を通りました。実はここに団地があと6棟あるんですけれども、これの真ん中のところを今度はコーミンの方に市から有償譲渡していただいた上で、こちらの方でリノベーションですね。エレベーターも耐震もリノベーションをして、また市に『morineki』と全く同じ形で20年間を上限として借り上げてもらうという、そしてまたどんどん民間賃貸に戻していくという『morineki2』、これは壊さないバージョンの市営住宅の畳み方ですね。団地は畳まれますので、このエリアのこの6棟が解決するというプロジェクトになります。
この『うどん竹なか』はこれはもともとここに50年ぐらいオープンしていたうどんとお好み焼きのお店なんですが、ここも実はうちの方が承継することになりまして、ここは『もりねき住宅』でとても元気になったおばあちゃんたちにここで働いてもらおうというプロジェクトで、高齢者の働く場として老舗のうどん屋さんを継ぐというような、ボランティアの人もいるでしょうし、いろいろな働き方でここを再開していくというプロジェクトを考えています。
もう一つ、『ズンチャッチャ夜市』というナイトマーケットもやっています。これは隣の住道駅というとこでやっているんですが、こちらではこういう駅前のデッキ、これ道路ですね、公共空間。今度は何もない空間を活用したプロジェクトです。ここで「住道駅周辺の課題は?」とか、「住道を楽しんでいるのはどんな人だろう?」みたいなことを500個ぐらい出してみるみたいなことをやりました。そうすると、駅前に結構大きな川が流れていて、そこに沈む夕日とかがきれいだし、平日でも飲んだり、アクティブな40代女子がまちを楽しんでいるということが分かりました。なので、ここで欄干バーみたいなことをやってみたりとかして、このナイトマーケットを始めることにしました。
この時に、これはたまたますごく主観的な話で、大阪の話なので。今日、こちらでは「大東がどんなまちの方向にいったらいいのかな?」ということを考えまして、『素敵な住宅街に住むマダム』、宝塚とか箕面とか生駒ではないよねとか。『都会の綺麗なお姉さん』みたいな、梅田とかね、今のグラングリーンみたいなものでもないよなとか。じゃあ、下町の本当に『じゃりン子チエ』みたいなおばちゃんのまちかなというと、そっちでもない。じゃあ、結構自然もあるけど地元感もあるよねという温いまちに住む『すっぴん女子』という架空のターゲット層を決めました。その人はどんな人かというと、『ブランド志向ではないんだけど、いいものは求める』とか、地元のバイローカルな暮らしで、地元のものを買ったりとかして楽しむ。みんながちょっと憧れる存在であったり、すごくこう分け隔てなく、このすごく良い調味料で握った、美味しいお塩で握ったおにぎりをみんなに配るみたいなイメージですね。ちょっとおばちゃんっぽくなってしまうので、もう少しこう憧れ感を持って、大東にも既にそういう人って住んでるよね、という人ですね。そして、もっと増えてくれたらいいのになみたいな。そんな人に向けてナイトマーケットをやっています。これ今月も最終水曜日の29日にやるんですけれども、こんな感じで駅前デッキに50店舗ぐらいを配置して、でもすごくこうデザインして配置をしますので、これも建築的に私の大学の時のメンバーでデザインしてやっているんですけれど、お店にもちゃんとドレスコードを着せていまして、しっかりこのお店もデザインしてもらっている。言わば『1日限りの仮想の商店街』みたいな形で出して、こうやって植栽を用意したり、テントに飾ってステージを作ったりしています。こんなことも、『大東ズンチャッチャ夜市』みたいなこともやっています。これが住道駅周辺でやっていることで、こういった風に『ズンチャッチャ夜市』もやっています。ストリートピアノも月3回ちゃんとお客さんを呼んでやっています。扇温泉。これももう閉めてしまうということになった銭湯を、こちらの方も継業しまして、『morineki』風にロビーも改装して、銭湯活動家の『ゆとなみ社』さんて言うところに今やっていただいていまして、ちょうど1年ぐらいなんですが、その裏に今度、文化住宅という、木造の共同住宅みたいものが3棟建っていましたので、ここを今ホテルと商業と賃貸住宅というものにリノベーションをしています。
こんな形で、結構しっかり土地にコミットしてやっているんですけれども、公民連携、官民連携、両方あると思うんですけれども、特に公民連携という風に言う時に私たちが意識してるのは、『民間が公を担う』ということが公民連携かなと思っています。特に『地域の価値を上げる』ということで考えた時に、さっきの『ズンチャッチャ夜市』みたいなものをイメージしてもらったらいいと思うんですけれど、やはりあそこすごく、「大東に飲食店を出す人はまず『ズンチャッチャ夜市』に出せよ」、みたいなことにもうなっていて、1店舗あたり多いところは25万円ぐらい。3000人から4000人ぐらい、毎回お客さんが来ますので、売り上がるということもあって。人気のお店はですけれどね。すごくいいんです。そういう、こう何か、あれを1個やることで1石5鳥ぐらいの、住民全体の利益や幸福につながるということを考えてやっています。かつ、慈善活動ではないもの。あれもちゃんと出店者さんの出店料と本部でクラフトビールを売っていますので、それらで最低限の運営費は売上からしっかりちゃんと賄えている。やはり、一方的な企業の地域貢献というものだけではなかなか使う人達はすごく敏感というか、しっかりお金が回っているところはやはり魅力的な場所なので、慈善活動ではないもの。あと誰でも参加できて、入り口からお金がかからないものですね。やはり『ズンチャッチャ夜市』、中を通って見ているだけでも楽しいですし、そこで「今日は飲むぞ」と思ったら、何万円も使う人もいれば、ジャムだけ買って帰るという人もいますし、そんな感じ。かつ、さっきの話で言うと横に通り道があるので、別に会場内を入らなくてもいいんですけれど、ただ6万人の乗降客数がある駅なので、みんな横から見て帰っているんですね。けれども、傍から見てても格好良くて心地いい、例えば爆音の音楽が流れているわけでもなく、いい感じにアコースティックギターでステージがあったり、開かれた空間ですよね。だからこれ、別に『ズンチャッチャ夜市』じゃなくてもいいんですけれど、例えば店舗をギャラリーにするとかですね。『morineki書店』も別に買わなくてもいい、とりあえず入ってほしいという感じです。入ってもらってふらっと楽しんで、もし気に入ったものがあれば買ってもらったらいいかなみたいな、そういう開かれた空間で行われているものですね。入場料があったりしないみたいな。地元の良さを再発見できるものみたいなところが、結構地域の価値を上げる公民連携なんじゃないか。これを民間さんが頑張ってすれば。さらに地域に根ざすとなってくると、もう少し『地域の資源を活用している』であったり、得た利益を『エリアに再投資』とか。自然体で近所の子供や高齢者、結局、徒歩5分圏内でやってくるのは小学生と高齢者ですね。もう若い人達はどこにでもいけますし。埼玉に来ようと思ったら来れる。けれど、そういう人達が気軽に訪ねて来れるような場所になるというのが地域に根ざすということかなと思います。そして、関わっている人達の公、公に対する意識が変わるというのもいい公民連携だと思います。実際、『morineki書店』は実はその移転してきた『ノースオブジェクト』さんというアパレルメーカーさんの方が会社を辞めて始められたということで、私と関わっているうちにすごくこう、パブリックに対する意識が変わって、そしてやる側に回ったんですね。そして、そんな人がどんどん増えてきて、だから『morineki書店』のDIYに関わった子が今度まちづくりに目覚めて、大学はまちづくりの学部に行かれて、今一緒にやっているとか。そういう出会いがあったり、面白い人達が集まってきたり、助け合いとか新たな事業とか文化が生まれるというのがいいんじゃないかなと思っています。
最後に、ソフト的な公民連携もやっていまして、大東には『元気でまっせ体操』という住民主体の体操の通いの場が142グループもあります。なので、歩いて5分圏内にこれだけあるという形です。コーミンは実は2019年から大東市の地域包括支援センターの高齢者の総合相談窓口業務を担っていまして、テーマが『長生きを長イキイキに。』ということでやっております。ここの部分がヘルスケアの方とかに関する、公民連携の頑張ってほしい場所かなと思っています。要は高齢者の自立支援をすごく目的にやっています。その自立支援の目的の裏目的はやはりこの『介護人材不足の解消』と『社会保障費の削減』ということです。なので大東市の戦略としては、『介護保険サービスの新たな担い手を創出する』ということをすごく主眼に置いてやっています。
戦略としては、まず住民さんには「このままいくと大変ですよ」というね、自助互助活動の重要性を出前講座で、もう最初の年なんか年間200回とか行きました。そして、ここ相談窓口なので、高齢者が何でも相談に来ますよね。「うちのおばあちゃん、ちょっと足腰が弱っちゃって」みたいな。そのような相談に対しては、1がこれ『元気でまっせ体操』、先ほどの住民主体の活動ですね。その次に2、ここが民間事業者が提案する。そして3番、これが本当の介護。普通、多分うち以外のところだと、いきなりこの介護保険サービスを紹介してしまうことしか分からないので、それを使うにはどうしたらいいですかというので、みんな来ちゃうと思うんですけれども、そうではなくて、1→2→3の順番に紹介するというようにしています。住民さんにとっても、3よりも2、2よりも1が魅力的なもの、金額的にも内容的にもなるようにちゃんと制度設計をしています。
例えばで言うと、代表的なのが通所系と訪問系があると思うんですけど、通所系の代表がデイサービスとしたら、うちはこの1の住民さんには『元気でまっせ体操』。これは住民さんたちが自治会館とかでやっているので、ほぼほぼ市の出費は0なんですね。体力測定とか、それぐらいしかしてないというところでいくと。でも、この間に例えば民間のホテルさんとか、お風呂が入れるところがありますよね。その利用者さんが使っていない、お客さんが使ってない時間にお風呂を開放していただいて、『お風呂で元気事業』を、『元気でまっせ体操』にお風呂がついたパターン。デイサービスでやるのだとお風呂に入りに行ったりしちゃうパターンを民間事業者さんと連携してやっています。公的負担で言うと、これ(3)はもうガッツリ税金と保険料と、そして国費と市費も入っています。ここ(2)は市の方が総合事業と言うんですけれども、大東市の方が一部出費しながら、民間のホテルさんとか、あと移送ですね。今日、(会場に)多分交通系の方もおられると思うんですけれど、こういうのを提供して、デイサービスと『でまっせ体操』の間のサービスを作っています。1は『でまっせ体操』に行ってくれたら、「一番楽しいし、地元だし、いいよね」というのを啓発してますね。
訪問系で行くと、介護サービスでいうとヘルパーさん。だけど、一番いいのは住民さん同士が2~30分250円で助け合う『生活サポート事業』というのをやっています。まずはこっちを勧めるんだけれど、なかなか「気難しすぎて」とか、住民さんではお部屋のお掃除が成り立たないような人に関して言うと、ここにうちでいうと『ロイヤルマネージャー』さんとか『ダスキン』さんのようなお掃除業者さんに入っていただいてたりとか。こういうこの住民さん主体の活動が一番お勧めだけれども、1と3を、介護サービスをつなぐ間の上乗せではなくて、この住民さん活動の補完みたいな感じですね。こういうところにたくさん民間企業さんが入ってきていただくと、この介護保険という県や市、国がお金を出している部分が抑えられます。大東市はすごい介護保険料も安いです。6,300円ぐらい。大阪市内だと9,000円以上なんですけれどね。そんな感じです。当然その第10期の介護保険のサービスの計画というのが今立てられ、国でも協議されてますけれども、こういう『地域ケア会議』みたいな組織体に、うちはここに『高齢者の生活支援に関する協議体』というのを作っていて、ここにさっきの民間企業さんに入っていただいております。このように、すごい建築的な話もできますけど、こういうソフト的なところでも使えますよ、という話です。
最後に、今みたいな話で町と町を使う人を元気にする仕事ということで、『公民連携エージェント』という本も書いていますので、そちらに今日のお話とかも入っているかなと思います。これですね、もしよかったら。
秋田大介
今日新幹線で読みながら来ましたけど、とても分かりやすいです。さっきの話は全部分かります。
入江智子
はい。以上になります。
秋田大介
はい、入江さんありがとうございます。
じゃあ、立ち話をしましょう、(内容を)掘りながら。是非この本、読んでみてください。僕、今読んでいますけど、さっきの話がものすごく詳しく書いています。めちゃくちゃ細かく、結構詰めて書いていますよね、中身。
入江智子
そうですね、はい。
秋田大介
質問で、分かりにくかったかもですけど、市営住宅が減っていく仕組みというのが結構秀逸だなと僕は思っていて、皆さん分かりましたか?あれ、市営住宅を行政が立てるんじゃなくて、代わりに立てているんです、民間施設として。それを市営住宅に貸しているので、今のところ市営住宅は減らないんですよね。
入江智子
そうですね。ただちょっと、さらに減らした上で借りていますね。そのまま借りてはいなくて。
秋田大介
じゃあ1段階ちょっと減っているけれども、その次にだんだん減っていくみたいな。
入江智子
そうですね。でももう既に持ってる所有床は0になっちゃっていますね。
秋田大介
なるほど。行政としては市営住宅のサービスはそんなに落としてないけれども、自分らが持ってるアセットとしては減っている。将来的にはグッともうそれも数が減るみたいな。
入江智子
そう。20年後も、一切今後の建て替えのことは考えなくていいわけですよね、市役所としたら。地域住宅として地域の方でアフォーダブルな賃貸住宅としてやっていくという形になります。
秋田大介
さっき公民連携というのは、民間の方がいわゆる公をやるという、公のサービスをやるって大きなヒントだなと思っていて、民間企業の方、今日たくさん来ていると思うんですけど、何か自分らのサービスを売る、というよりは、そのサービスとか強みを使って、今行政がやっていることをどうやって奪っていけるんだろうみたいな視点で考えるといいかもしれませんね。色々質問が来ているんですけど、最初に来てたのは「投影資料が欲しい」ということなんですけど。
入江智子
そうですね。個別に連絡頂けたら。そんな大した資料じゃないけど。
秋田大介
是非交流会とかも含めて声かけてもらって、資料ももらえたらという感じですね。
元々入江さんは行政の職員だったから勝手を知っている部分もあると思うんですけど、いきなり民間からやるのも大変だと思うんですけど、やはり「(民間が公を)担うメリットというのはどういうものがありますか?」という質問が来ているんですけど。
入江智子
メリットって別に。何でしょうね。
秋田大介
お金儲けじゃないですよね。
入江智子
そうですね。元々市役所にいた時から、まちづくりのイメージはですよ。大きなな木を登っていて、何かクルンと反対側に回って、同じ木をまた登っているというか。なんでしょう。
秋田大介
同じ目標を民でやっている。
入江智子
そうですね。だから、どちらかというと自治体が目指していることをやっているということもありますし、どうでしょうね。でも、民間企業としても面白いというか、純民間企業よりもちょっとニッチな、ちょっとしたブルーオーシャンみたいな仕事でもあるので、今は完全に民間企業としてやっているんですけれども、競争がたくさんある世界というよりは、結構強みを活かしてチャレンジしてみたら、工夫次第では面白い分野なんじゃないかなというのは思いますね。
秋田大介
そういう意味では、まちに対する思いは行政の頃から民間になっても変わらないということですね。逆に言うと、今民間、元々民間の人がどういう思いで公民連携に入ってくるといいのかと言ったら、どう説明されますか?
入江智子
いや、結構快感だと思いますよ、ということを伝えたい。何か民間が公を担うって、私『でまっせ体操』の住民さんにも言っているんですよ。住民さん達も結構そう思っていて、一市民でも自分達が体操して、要はあれは一般介護予防という風な場所になるんですけれども、その場が実はデイサービスに取って変わっているんだみたいな、変われるんだみたいな。単純に言うと、一市民にもそれを感じてもらうし、企業としてもこういう分野で活動すると、「公的なサービスを実は民の自分達がやっているんだ」と思うのは、それが指定管理とか委託ではないところで実はやれちゃっている。
秋田大介
最初から金儲けのための委託とかではなく、やはり自分らの力を出してまちに関わって。お金は当然儲けなきゃ、さっき言ったようにちゃんとお金が回っていないと意味がないというのはあるんですけど。それがまちにプラスになっているというのが楽しい。
入江智子
そうだと思います。ロイヤルマネージャーさんというお掃除の会社さんが「すごい楽しいんですよこの仕事」って。普通にやってもいるんですよ、普通の民間の仕事でも。この部分に関していくと、住民さんがよりお掃除をできるように、自立を促すようなことも一緒に教えてくれたりとか、やり方を教えてくれたりとかして。ヘルパーさんだと本当にもう「やってあげます」という感じになっちゃうんですけど、そうじゃなく。住民同士のサポート事業に関しては、もっとじゃないですか。何かもっと「サービスしてくれる人が来るかな」と思ったら、自分より年上の男性とかが来て、何かお風呂とかワ―って洗ってくれたりすると、自分も何かしないといけないかなと思ったりする、みたいな。何かこう、プロじゃない人たちがやることの何か意味があるなと思ってます。
秋田大介
なるほど。そういう意味ではここの質問には無い話なんですけど、何か一つの事業をきっかけに、横に広がっていくイメージですよね。皆さんもそうだと思うんです。これから官民連携やる企業さん、強みを1個持っているので、それで行政と組んだ時に絶対派生が出てきますよね。そんなイメージないですか。僕、ずっとそういうイメージかなと思っていて。最初は市営住宅の話だけだったのに、今はガンガン話が広がって。
入江智子
そうなんです。本当にもう、うどん屋やるとかお風呂屋さんやるなんて全く思っていなかったんですけど、大きな意味ではまちの資源を使って、今までにないものを作っているという最初のパーパスには全部かなっているというか、そういうことはどんどん広がっていっていますね。
秋田大介
この質問ね、よく出るんですよ、民の方から。「熱量ある人たち」って重要だと思いますけど、いわゆる大東市でいうと入江さんがキーマンになっていて。行政側にもまあまあ面白い人はいると思うんですけど、「どうやって見つけるんですか?」みたいなのは結構よく聞かれる質問なんですけどね。どう答えます?これ結構難しいと思うんですけど。
入江智子
まずは自分の熱量を上げることではないですかね。やはり熱量が高い人達のところに熱量の高い人は集まってくるみたいなところはあるので、自分の熱量を上げて、何か見つけるということはあまりしてないんですけど、何か知らぬ間につながって、お声がかかって、ということと、でも一つ一つの関係性は結構大事にしている方かもしれないですね。つながれるようなことがありそうな気がすると思ったら、結構つながったりしてみたら。
秋田大介
なんか熱量を持ってあちこちで「こんなことやりたいね」なんて言っていたら、誰かがくっついてくる、熱意を持った人がくっついてくるみたいな。
入江智子
そんな感じです。
秋田大介
はい、ありがとうございます。ちょっと時間ギリギリなんですけど、もう一個聞きたいな。何か気になるあります?『「まちのビジョン」を決めるって結構難しいな、って思うんですが、どうやってコンセンサスを得たのでしょうか?』、これ結構大変そうですよね。大東市で次また2個目の今度市営住宅をやろうという話があったと思うんですけど。
入江智子
まちのビジョンは自治体が決めるべきなんですけど、今主流のもうワークショップとかやりまくって、住民さんの意見聞きまくってというよりかは、割と市の方でしっかり考えて出しているところが多いのかな。その時に、うちは『デザイン会議』というものをやったんですけれども、やはりまちづくりの実践者みたいな人とか、今日もここを貸してくれたりするファイナンスの、金融機関さんとかに入ってもらったりとかして。金融機関さんは結構ちゃんと「そんなとこに企業来ませんから」とか言ってくれるので、そのような形でぼやっと作って。あとはやはり手を挙げてくれる民間さんによってビジョンも多少変わっていったりするので、あまり作り込まずに柔軟にリリースしてしまって、そこからつながった民間さんとそこの民間さんの強みも活かしたようなビジョンを作っていくみたいなのでもいいんじゃないかなって思っています。
秋田大介
はい、ありがとうございます。最後、ここ(当日の参加者で)自治体の職員さんが2〜3割、プラス企業さんが多い。企業さんの方に何かいいアドバイスを、「こんなこと考えて行政と付き合うと進んでいきますよ」なのか。あまり営業が上がるとかいう話じゃないと思うんですよ。まちで自分がコミットできる方法みたいなものをいただけるとありがたいかなと。さっきの話ですね、「熱量がないといけない」というのはあると思うんですけど。
入江智子
そうですね。市役所にそういう公民連携窓口みたいなのがあったら、もうそこにどんどんアイデアを持ち込むというのも一つだし、さっきのマーケットみたいなことを立ち上げて、公共空間で何かやってみたりとかすると、そこでまちの元気な人とか、市役所の中でもちょっと尖っている人とかが出てきたりするので、何かそういう場を作ってみるとか。朝活の場所とか作ったりされている人が。
秋田大介
何か来ますよね。アンテナを張ってる自治体職員がそういうところに来たりしますよね。
入江智子
そう。結局ね、市役所の中に座っているだけの方って、『異動したら終わりかな』みたいな人なんですけど、やはり町に出てきて、町の美味しいお店、オススメなところとかね。いっぱい町にお金を落としている人というか、地域のいろんなイベントに顔を出しているような人じゃないと、やはり結局つながったとしても自分の課からいなくなったらという感じの。
秋田大介
そういう意味では部署関係なしですね。
入江智子
そうですね。そういう人をつかむみたいなのがいいんじゃないでしょうか。
秋田大介
ありがとうございます。めっちゃ聞きたいことがあるんですが、時間が来たのでこれで終わります。今日僕、新幹線でこれもう一回読みながら来たんですけど、ファイナンスの話とかめちゃくちゃ細かく書いてあって、「本当に行政の人だったのかな」と思うぐらい、銀行とやり合って色々大変な思いもされているので。これ本当におすすめです。見ていただくと、特に行政職員は本当に知らないことが多いと思います。民間企業の方が当たり前にやっているお金の話とかもちゃんと知るきっかけになるのかなと思っているので、良ければ読んでくださいということで。
じゃあ一部はこれで終わりたいと思います。入江さんありがとうございました。
入江智子
ありがとうございました。