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掲載日:2023年7月14日
Q 権守幸男 議員(公明)
物流の2024年問題とは、物流業界における慢性的な人材不足や、荷主都合による待機時間、荷物の積み込みや荷下ろしなどの荷役の商慣行から長時間勤務が状態化しているトラック運転手の労働環境を是正するため、国は来年4月、時間外労働の上限を年間960時間に規制します。ただでさえ、物流業界は他業界に比べて総時間が2割長く、賃金が2割低い状況があり、魅力ある仕事場とは言い難く、他業界と比べ労働力不足が一層深刻な状況になってしまいます。
ある事業者では、「人材確保が思うようにできなければ、配送ルートの縮小や、場合によっては廃業を視野に検討せざるを得ない」と切迫した状況をお聞きしました。県経済の発展や県民生活の基盤となる物流業界における人材確保は最重要の課題です。
人材確保について、県として今後どのように取り組むのか、知事の見解を伺います。
また、中小零細の運送事業者は、立場が弱いため荷主との運賃交渉が進んでおらず、今後、運賃交渉を進めるためには、荷主等の関係者に国が示した標準的な運賃の内容を十分理解していただくことが非常に重要です。
県は、昨年9月定例会で可決した補正予算を活用し、荷役や元請けにトラック運送の運賃料金の適切な価格転嫁に協力を呼び掛ける広告を業界8誌に昨年11月、今年の1月と3月に掲載しました。その後、荷主への運賃料金の改定交渉の結果がどうだったかを把握するために実施したアンケートでは、「全ての荷主で運賃料金の改定ができた」が15.7%、「半数以上の荷主で運賃料金の改定ができた」が30.3%、「半数未満の荷主で運賃料金の改定ができた」が38.6%となっており、運賃料金改定が十分進んでいないと思います。
ある事業者では、「単に運賃交渉といっても、それだけでは荷主とはなかなか交渉ができないため、業務改善・効率化の提案をしつつ運賃交渉に臨む用意をしている。うちはまだいいほうで、運賃交渉の場を設けることすらできない事業者がたくさんある」とお聞きしました。
こういった状況を踏まえ、荷主との運賃料金の改定について、県として今後どのように取り組むのか、知事の見解を伺います。
また、コロナ禍を契機にインターネット通販の取扱い数が急激に増えました。新型コロナウイルスの感染防止の観点から置き配が広がりつつありますが、不在の場合の再配達が宅配配達員の長時間労働の原因にもなっていると聞いています。
配達員の負担軽減につながる置き配の推進、置き配ボックスの利用、日時指定で注文するなどを県民に呼び掛けるべきと考えますが、県として今後どのように取り組むのか、知事の見解を伺います。
A 大野元裕 知事
議員御指摘のとおり、来年4月から自動車運転業務に時間外労働の上限規制が適用され、運転者の労働環境改善が図られる一方、運送事業者にとっては更なる人手不足が懸念をされ、人材確保は喫緊の課題となっております。
一般社団法人埼玉県トラック協会では、運転者不足解消の一助とするため、大型トラックなどの免許取得費用や、荷物積み下ろしの負担軽減を図るフォークリフトの運転技能講習受講経費に対して補助を行っています。
県では、協会のこうした取組に対して運輸事業振興助成補助金により支援をしているところであります。
また、県では「企業人材サポートデスク」において、人材確保や定着に関する企業からの相談に対応するとともに、面接会を随時実施し、企業と求職者とのマッチングを行っています。
特に、人手不足業界に特化した取組を実施しており、物流業界向けにも面接会や業界セミナーを開催をしております。
また、国土交通省と連携し、若者に対し、物流業界の魅力を伝える企業説明会も開催をしているところであります。
一方で、こうした人材確保に向けての直接的な取組と並行して、より少ない人員でも対応できるよう、業務の見直しや効率化を図ることも重要であります。
そのためには、デジタル技術の積極的な活用が有効であり、例えば、運行管理システムの導入により労働時間の適正管理が可能となります。
県では、埼玉県DX推進支援ネットワークを活用し、県内中小企業のデジタル化を推進しており、生産性向上に向けた取組に対して相談対応やIT企業のマッチングなどの支援を行っています。
また、デジタル技術を活用した経営革新計画の承認を受け、計画に基づき、生産性向上に資するシステムの導入を行う場合には、その経費に対して補助を行っています。
県といたしましては、人材確保と生産性向上の両面から事業者の取組を支援してまいります。
次に、荷主との運賃・料金の改定について、今後どのように取り組むのかについてでございます。
昨年度の9月補正予算で、県内のトラック運送事業者に対し、燃料価格高騰に対応した緊急的措置として補助を行うとともに、円滑な価格転嫁に向け、「標準的な運賃」の届出を促進する事業を実施をいたしました。
事業者からは、届出を行ったことで「荷主の理解を得ることができた」、「運賃改定が実現した」との声が寄せられました。
埼玉県トラック協会は、今年度、この届出率を60%に引き上げることを最重点施策として掲げており、普及に向けた説明会や運賃交渉に役立つセミナーを開催することとしております。
これらの事業は先ほども申し上げた運輸事業振興助成補助金を活用しており、県としては引き続きトラック協会の取組を後押ししてまいります。
他方、県では、昨年9月に産・官・金・労の12団体で締結した「価格転嫁の円滑化に関する協定」に基づき、埼玉県商工会議所連合会などに「価格転嫁相談窓口」を設置し、事業者からの相談に対応しています。
また、昨年度に引き続き、適正価格の推進やパートナーシップ構築宣言の登録を促進している中、5月臨時会で御議決いただいた補正予算を活用し、発注側である荷主に対してもしっかりと働き掛けてまいります。
さらに、運送事業者も含めた受注側企業に対しては、価格交渉のノウハウ獲得に向けた専門家による伴走型支援を実施する予定であります。
価格転嫁は、長期的に取り組まなければならない構造的な課題であり、今後とも粘り強く働き掛けを行い、物流業界を支援してまいります。
次に、配達員の負担軽減につながる置き配の推進などの取組を県民に呼び掛けるべきと考えるが、今後どのように取り組むのかについてであります。
議員御指摘のとおり、不在の場合の再配達が長時間労働の原因の一つとなっております。
また、再配達のトラックから排出されるCO2の量は年間でおよそ25.4万トンと推計されており、地球環境に対して負荷を与えているとされています。
今月2日には、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」において、荷主企業、物流企業、一般消費者が協力して物流を支えるための「物流革新に向けた政策パッケージ」が決定されました。
このパッケージでは、消費者の意識改革・行動変容を促す取組や令和5年末までに再配達率半減に向けた対策を実施するとしています。
県としては、こうした国の動きを注視するとともに、置き配の推進など配達員の負担軽減につながる取組について、県ホームページやSNS、彩の国だよりなど、広報ツールを活用し、広く県民に呼び掛けてまいりたいと考えています。
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