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掲載日:2023年12月18日

令和2年12月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(井上航議員)

新型コロナウイルス感染症対策について - 新型コロナ対策に関する県条例の制定について

Q  井上航  議員(県民

知事はこのコロナ禍において、県民が最も欲しているものは何だと思いますか。それは目の前に起きた課題への対症療法的な対策の積み重ねではなく、この難局を乗り越えるための戦略です。そして、知事のリーダーシップの下、県民の理解を得ながら県民全体の総意としてコロナ対策に取り組むには、戦略を担保する法的な根拠が必要です。私は、この質問を通して戦略を担保する法的根拠、つまり新型コロナウイルス感染症対策条例制定の必要性を訴えさせていただきます。
現在、地方自治体で新型コロナウイルスに関する条例の制定や検討が進んでいます。条例にも大きく二つの傾向があり、一つは、新型コロナウイルスに感染した人や医療従事者を差別や誹謗中傷から守るために差別禁止を盛り込んだ条例、もう一つは、福岡県議会や東京都議会で検討されているような調査や検査協力等を義務化し、罰則を伴い、感染症対策を強化することを目的とした条例です。また、千葉市のように違反への罰則は設けないものの、その双方の視点を盛り込んだ条例もあります。
この間の埼玉県で発生した事案を振り返ると、まず令和2年7月30日夜間に、県内医療機関に入院中だった新型コロナウイルス感染症患者が入院先の医療機関を無断で外出し、一時行方不明となる事例が発生しました。また、10月23日、新型コロナウイルスに感染した外国籍の男性が宿泊療養先の加須市内のホテルから無断外出し、立ち寄った東松山市内の大型量販店で暴行事件を起こし、県警に逮捕される事案も発生しました。
これらの事案では、特に宿泊療養施設については、そこにいるよう法的根拠を伴っての命令ができないことに課題がありました。大野知事は、こうした事案の対策として国に感染症法の改正を求めることを表明されています。私も全国一律に適用される法改正が望ましいと考えますが、残念ながら肝心の国はといえば、「終息したときには、特措法の改正も含めて政府の対応をしっかり検証していく必要がある」と、当時官房長官であった菅総理が発言しており、早期の改正は期待できず、改正するかどうかも不透明な状況です。
さきに述べた事案の再発防止だけでなく、知事は感染拡大の状況に合わせて様々なメッセージを県民に向けて発信しています。しかし、その多くは言ってみればお願いベースの話であり、その要請を守るかどうかは県民の良識に託されています。これに対し、条例を制定し、罰則はなくとも、例えば県民や事業者の責務は、感染予防を行い、蔓延防止に必要な調査や対策に協力することと定まっていれば、知事の発信も、県の政策もより重みを増します。
そのほかにも、例えば彩の国「新しい生活様式」安心宣言に協力する店舗にマスクを着用しない客が来るとします。現時点では、その客に対して法的根拠を持って拒否することはできません。しかし、条例が制定され、仮に努力義務規定だとしても明文化されれば、店側もマスクを着用しない客にも対応しやすくなります。条例制定は、こうした蔓延防止に協力する事業者を守ることにもつながります。
大野知事は、参議院の議員立法の約1割を起案、提出した時期もあるとのことで、全国の知事の中でも立法に精通していると承知しております。知事就任から1年が経過し、県政に不可欠な条例制定、改正は多数行ってきているものの、国でいうところの政策立法、すなわち県における政策条例の制定はこれからです。
新型コロナ対策を県民とともに戦略を持って推進するためにも、是非とも新型コロナウイルス感染症対策に関する条例を制定すべきと考えます。
以上、知事の御所見を伺います。

A  大野元裕  知事
新型インフルエンザ等対策特別措置法第4条には、事業者及び国民の責務を努力義務とすることについて明確に規定があります。
他方、議員御指摘のとおり、戦略を担保する法的な根拠は必要であり、努力義務を規定する条例の制定は有効な選択肢の一つと考えます。
しかしながら、国民の権利を制限する可能性がある事項を含め、県知事として新型コロナウイルス感染症に対応するためには、法改正を検討するべき部分は多岐にわたっており、改正には、法規範に則った包括的な見直しが適切と考えております。
例えば、対策実施に関し必要な協力を定めた特措法第24条第9項に基づき「酒類

 

の提供を行う飲食店」及び「カラオケ店」の営業時間の短縮を要請しましたが、本項の立法の趣旨は営業や個人の行動制限を想定するものではなく、本来は、あくまでも対策実施に向けた一般的な協力要請であり、検討が必要と思いままた、特措法第3条第1項においては、国は「国全体として万全の体制を整備する責務を有する」と規定しているにもかかわらず、事業者への協力要請に対する補償の問題や、協力要請に応じない場合の罰則などの実効性を担保する規定がありません。
また、宿泊療養施設への入所の勧告など、感染症のまん延防止に実効のある措置が定められていないばかりか、そもそも宿泊療養施設の規定は見当たりません。
こうした様々な課題を抱える法体系を抜本的に見直すことが必要であり、見直しを行った上で、更に地域で定めるべき事項がある場合には、議員御指摘の条例を制定するべきと考えております。
県といたしましては、まず、国に対し法体系の抜本的な見直しを強く求めてまいります。

 

再Q  井上航  議員(県民

 

 先ほどの答弁をお伺いしていますと、まずは法改正を促していく。条例の必要性は否定しないけれども、まずは法改正を促して、その上でカバーできない部分を条例でというようなお考えだったと思います。
 一方で、東京都議会の例を質問の中でも出しました。議員提案による改正というのは見送りになったと聞いておりますが、執行部提案の東京都新型コロナウイルス感染症対策条例というものは存在しています。東京都は条例を持っています。また、同じく例に出しましたが、千葉市では今やっている議会で条例提案がされておりまして、この千葉市の条例を提案した熊谷千葉市長は、千葉県知事選挙に立候補を表明されている方です。仮に熊谷氏が千葉県知事に就任した場合、千葉県にも同様の新型コロナ対策条例が提案されることは想像にかたくないのではないかなと推察いたします。
 そのような状況になると、埼玉県はこの対策条例制定の動きから遅れてしまうのではないかというふうに考えます。他県との連携や足並みをそろえること、知事が大切にされている視点かと思います。
 こうした隣接都県の状況を考慮して、知事には踏み込んだ判断をしていただきたいと思います。再度、御答弁をお願いいたします。

 

再A  大野元裕  知事

 

議員お考えの条例の制定について、私は否定していません。また、法律改正を優先させるべきである、まさにその通りの考え方でございます。
それについて、2点ご説明をさせていただきます。
まず1点目は、後段の御質問の、他県との連携の関係について、9都県がすでに条例を制定しております。これらのうち条例を制定している首都圏の都県については、他県との連携を図る上で、条例がなければできない項目は一つもないと現時点では考えております。
他方で、条例は法律を上回ることがないのが一般的な理解でございまして、その意味では、特措法の第4条で努力義務等が規定されていますので、それぞれの地域の状況によって、必要かどうかという観点は当然あると思います。ただ、その一方でまず法律がある、ということが前提です。
2つ目に、今回の法律の運用に関しては大きな困難がございました。
特措法第24条第9項に関しては、本来は、都道府県知事が、当時の新型インフルエンザ感染症等の対応を行う体制を組む上で、一般的な協力を求めるものであり、本来は個人や団体の権利を自粛させる、例えば今回の営業時間の短縮を求めるといったものに使うことは想定されていませんでした。
その想定は、第45条第2項という緊急事態宣言が出された上で行われるべきもので、同項に紐づけされた施行令の11条に、それぞれこういった業界には要請ができると紐づけられています。第24条第9項にはありませんでした。
ところが、現場の都道府県知事として、これをどうしても使わなければいけない状況が、緊急事態宣言前に出たために、本来の法律と違う運用がなされました。
ところが、その後、その運用を政府は後追いで承認しました。法律と政令と現場の解釈と条例が食い違っていました。だからこそ、今回は法律を改正することが妥当であり、改正しないといつまでたっても、現場の混乱は収まらない、と私は考えております。
ですから、私は、幾度にも渡り、大臣に対し、また、知事会等も通じて、法律が必要であると申し上げているところですので、御理解を賜れればと思います。

 

再々Q  井上航  議員(県民

 

法改正をしていくことが妥当だというそのお考えは、今の再質問に対する答弁で非常によく分かりました。また、この間、知事会であるとかアクションを起こしていただいていることも承知しておりますが、先ほど質問の中で例示したように、当時なのかもしれませんが、政府はこの終息が終わった後というふうにいっております。そんな余裕はないと思います。
知事もこれまでアクションを起こしていただいておりますが、知事がそこまで早く改正しなければ対応がならないというふうにおっしゃっていただいておりますので、それを改正を実現するに当たって、知事は今後どのように活動なさるのか、最後にお伺いしたいと思います。

 

再々A  大野元裕  知事

 

第24条第9項の話を先程申し上げましたが、政府に法の解釈権はあり、今、法の解釈を変えた、というところだと私は理解しております。
当初との整合性を含めて、やはり、早期に現場の混乱を可能な限り避けるよう対応するのが、政府の役割であり、都道府県知事はそれを受けて、万全の体制を敷くのが役目だと思っています。
まずは、現場の当面の対応を優先させなければいけませんが、その一方で粘り強く政府に対しては、法律そのものの改正を求めたいと思っています。
同様に、第24条第9項だけではありませんが、療養施設の規定等もしっかりと法に定めることをお願いしていきたいと考えております。

 

  •  上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

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議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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