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掲載日:2023年11月28日
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私は、大学を1年間休学し、令和5年6月3日から令和5年8月26日までの3ヶ月、スペインのバルセロナにて語学留学をしました。現地では、ガウディ建築の一つで世界遺産にも登録されているカサ・ミラから徒歩2分の語学学校に通い、チリ人とアルゼンチン人のご夫妻のご自宅にホームステイをしました。この修学レポートでは、主にバルセロナでの滞在経験を元にスペイン の政治状況や経済、社会状況、食文化などを紹介します。
スペインは、イベリア半島(ヨーロッパ大陸の南西端)に位置し、西部にポルトガル、東部にフランス、ジブラルタル海峡を挟み南部にはモロッコがあります。また、世界第二位の観光大国で (World Tourism Organization 2019調べ)世界中から観光客が集まる個性豊かな国です。日本の約1.3倍の面積を有し、オリーブやトマト、オレンジやぶどうなどの生産が盛んです。スペイン (カスティージャ)語以外にも、バスク語、カタルーニャ語、ガリシア語、バレンシア語、アラン語がそれぞれ公用語として認められています。
滞在期間中の7月23日にスペイン総選挙があったため、授業のテーマとしてスペインの政治状況や選挙制度について学ぶ機会がありました。今回は特に、バケーション期間中という異例の時期に選挙が行われ、極右政党・ボックス(Vox)による政権交代の可能性も示唆されており、選挙前から非常な盛り上がりをみせていました(投票率は70パーセント)。しかし事前の世論調査や出口調査に反し、結果は右左ともに過半数に届かず、左派政権連投か再選挙かの結果になりました。バルセロナ出身で在住の先生も、この結果には少し驚いているようでした。また、 授業の一環として、学校周辺にいるバルセロナ市民に、今回の選挙に期待することやスペイン政治、ロシアのウクライナ侵攻などの世界情勢に対する意見などをインタビューしました。若い方から大人まで、ランダムに5人のかたにお話を聞きましたが、全体的に選挙や政治に対する関心が高く、それぞれが世界市民としての認識をしっかりと抱いている印象を受けました。
スペインは2008年の世界金融危機以降、失業率が上昇し、特に若者の失業率はEU内でも高いと言われています。特にコロナ禍以降の失業率は顕著で、2021年12月の若年層の失業率 は30.6%と非常に高い数字を記録しています。実際に現地で出会ったスペイン在住の20代前後の若者に話を聞くと、「今は仕事を探している」と言っている人が多いように感じました。また、バルセロナの物価はスペイン国内でも特に高く、ほとんどの人がシェアハウスをして暮らしていました。語学学校の先生の多くも、一人暮らしがしたいけどバルセロナでは到底できないと嘆い ていました。
バルセロナはミロやガウデイ等多くの著名な芸術家を輩出した都市として有名で、バルセロナ市内にはいくつも世界遺産や歴史的建築、美術館や博物館などがあります。幸運にも、世界遺 産のサクラダファミリアやサン・パウロ病院、カサ・ミラ等が通学路にあったため、ほぼ毎日ガウ ディ建築に触れる機会がありました。しか残念なことに、どの入場料も非常に高い傾向にあり、全ての建築を見物することはできませんでした。
2026年完成予定のサクラダファミリア(入場料は最大40€)
「芸術は人を癒す」と言う言葉で有名な芸術家、リュイス・ドメネク・モンタネールのサン・パウロ病院
スペイン料理といえばパエリアやトルティーヤ、新鮮な海鮮などが有名ですが、それ以外にも 多くの魅力的な料理があります。
パエリアは、スペイン東部に位置するバレンシア州発祥の郷土料理です。
大体のレストランでは二人以上から注文するのが定番
スペイン王位アカデミーによると、タパスとは ”una pequeña porción de algún alimento que sirve como acompañamiento de una bebida(お酒のお供として出される小皿料理)”と定義されていて、いわば「おつまみ」のようなものです。また、タパスに似たものにピンチョスがあります。これは、一切れのパンの上に魚や肉、チーズなどがのせてつまようじで刺して固定したもので、「Pinchar(突き刺す)」が語源と言われています。
カタルーニャ広場近くのピンチョス屋さんにて
スペイン語で血を意味するangreが語源のサングリアというカクテルがあります。
サングリアの入った大きなグラス
〜スペイン語はEspañol(エスパニョール)ではなくCastellano(カステジャーノ)〜 スペインでは所謂スペイン語(以下カステジャーノ又はCastellano)以外にも地域ごとに異なる言語が話されており、現在はカステジャーノ語、カタルーニャ語、ガリシア語、バスク語 の四つが公用語として認定されています。そのため、スペイン(特にバルセロナ)ではスペイン語を「Español」とは呼ばず「Castellano」と呼びます。現地ではスペイン語を話すアジア人は珍しいため、なぜスペインが話せるのか?と質問されることがしばしばありましたが、その場合は必ず ”Porque ahora estoy estudiando castellano(スペイン語を勉強しているからだよ)”と返答するようにしていました。特にスペインからの独立問題で揉めているバルセロナでスペイン語をEspañol(エスパニョール)と呼ぶのは、バルセロナはおろかスペインの文化、歴史、人々、文化を尊重していないと思われる可能性があります。
▼観光名所の解説看板には、必ずカスティジャーノ語とカタルーニャ語の説明があります
渡航前に読んだガイドブックに、「スペイン人は一日5食」と書かれていて驚いたことがあります が、実際に現地のスペイン人の生活やホストファミリーの生活を見ると、確かに一日5食とっている人は多いように感じました。具体的には、朝食(Desayunno)は日本と変わらず8時〜9時にすませますが、お昼(Comida)は14時とかなり遅い時間になります。そのため、10時〜11時にかけてマフィンやサンドイッチ(Bocadillo)といった軽食(Almuerzo)を食べます。また、一般的に夕食(Cena)は21時以降になるため、必然的に仕事や学校後に、家族や友人と甘いものやお酒とタパスといった軽食(Merienda)をとることになります。また、スペイン人はテラス席を好 み、金曜日や週末の夜は家族や友人と夜遅くまでテラス席で談笑して過ごします。
加えて、バルセロナには多くのバーやディスコ、カラオケがあり、特に若年層や留学生は飲ん だり話したり踊ったりして夜を明かします。
ディスコやバーは24時からスタートするのが一般的。
3ヶ月という短い留学でしたが、様々な国の人や文化が混ざり合うコスモポリタン・シティ、バル ロナでの3ヶ月は文字通り非常に濃い日々でした。特に語学学校では、フランスやドイツ、イタ リア、スイスなどのヨーロッパ圏以外にも、トルコやイスラエル、ブラジルなどの様々な出身の人と共にスペイン語を学び、バルセロナを探索しました。もちろんスペイン語が全くわからなかった初めの1ヶ月は、授業に加え、ホストファミリーとのコミュニケーションやレストランでの店員とのやりとりで、悔しい思いをたくさんしました。しかし、スペインから遠く離れたアジアの島国、日本 出身ということに関わらず、バルセロナで出会った多くのかたが、それぞれの時にあって私を支え てくれました。その一人ひとりの寛容さを通して、日本人でありながら世界市民の一人という認識が生まれ、世界市民の一人としての責任を感じました。このような何ものにも変え難い留学という経験を、より多くのかたが体験できますように。また、このような奨学金制度が継続され、留学を目指す学生の励みとなることを願っています。
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