トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成22年度情報公開審査会答申 > 答申第161号 「平成19年度埼玉県立図書館協議会委員の募集要領に基づき提出された作文のうち14名分」等についての不開示決定(平成23年3月11日)
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掲載日:2023年12月11日
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答申第161号(諮問第211号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成22年6月30日付けで行った、「平成19年度埼玉県立図書館協議会委員の募集要領に基づき提出された作文のうち14名分」及び「平成21年度埼玉県立図書館協議会委員の募集要領に基づき提出された作文のうち18名分」(以下「本件対象文書」という。)の不開示決定については妥当である。
2 異議申立て及び審議の経緯
(1) 本件開示請求者(以下「申立人」という。)は、平成22年5月27日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し次の開示請求を行った。
埼玉県立図書館協議会委員の公募選考に係る応募者の「作文」(ただし応募者の「氏名」を除く)。ア.2009年募集分、イ.2007年募集分。
(2) これに対し実施機関は、本件対象文書を特定し、これらについて平成22年6月30日付けで条例第10条第1号に該当するとして不開示決定を行い、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成22年8月30日付けで、実施機関に対し、不開示決定の変更を求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成22年10月8日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会は、実施機関から、平成22年11月11日に開示決定等理由説明書の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成22年11月22日に実施機関の職員から意見聴取を行った。
(7) 当審査会は、申立人から、平成22年12月20日に反論書の提出を受けた。
(8) 当審査会は、平成22年12月20日に申立人の口頭意見陳述を聴取した。
3 申立人の主張の要旨
申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 個人の氏名の開示を求めておらず、そもそも作文用紙の中に氏名欄を設けていること自体がルール違反といえる。
(2) 「社会的関心に基づく意見や活動」に関する情報は個人の氏名と容易に分離可能であり、また、それらの情報は「公にすることが予定されている情報」に該当する。
(3) 「個人の権利利益を害するおそれがある情報」という主張には、具体的かつ明確な説明がない。
(4) 本件対象文書は、開示されるべき公益性が高く、公にすることが予定されている。
4 実施機関の主張の要旨
(1) 埼玉県立図書館協議会委員の公募は、予め応募者に提出された作文を公開すると告知しておらず、過去において作文を公開したことはない。
(2) 応募者は、作文を提出するに当たり、それが後に公にされることは予測せずに、自由に各人の意見等を述べているもので、公にすることが予定されている情報に該当するとは見なし得ない。
(3) 仮に応募された作文が開示されることになると、次回の公募からは、応募者は、公開されることを前提とした作文を作成することとなり、各人の経験や思想信条等の自由な記述が阻まれるおそれがある。
(4) 応募者が作成した作文は、各人の人格、思想、社会観等と密接に結びついたものであることが明らかであるから、それらの意見等を対社会に開示すべきかどうか、社会のどの範囲に開示すべきかについては、元来各応募者が自ら決すべき利益を有していると認めるのが相当であり、公にすれば個人の正当な利益を害するおそれがある。
5 審査会の判断
(1) 本件異議申立てについて
本件異議申立ては、本件対象文書について、実施機関が不開示決定を行ったところ、これに対して申立人が基本的に条例第10条第1号に該当しないとして異議申立てを行ったものである。
(2) 本件対象文書について
本件対象文書は、平成19年度の募集要領に基づき提出された「これからの県立図書館に望むこと」の作文14名分と、平成21年度の募集要領に基づき提出された「これからの県立図書館に求められる役割について」の作文18名分である。
また、実施機関の説明によると、埼玉県立図書館協議会委員の公募は、あらかじめ応募者に提出された作文を公開すると告知しておらず、過去において作文を公開したことはないため、応募者は作文を提出するに当たり、それが後に公にされることは予測せずに、自由に各人の意見等を述べているとのことである。
(3) 条例第10条第1号について
条例第10条第1号は、不開示情報として特定の個人を識別することができるものを掲げ、さらに「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を不開示とすべきとしている。これは、個人が識別されない部分であっても、それを開示することが個人の権利利益を害することがありうるという前提に立ち、かかる部分は開示を禁じる趣旨である。これは、個人の人格と密接に関係する情報については、当該個人がその情報をコントロールすることが可能であるべきであり、本人の同意なしに第三者に流通させることは適切でなく、個人識別性がない場合であっても、開示されるべきではないからである。
(4) 条例第10条第1号の該当性について
埼玉県立図書館協議会は、埼玉県立図書館の運営に関し、館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき館長に意見を述べる附属機関として、埼玉県立図書館協議会条例第1条の規定に基づき、埼玉県教育委員会が設置しているものである。委員は15名以内とされており、そのうちの2名以内を、図書館運営について広く県民の方々から意見等を聴くため、平成15年度から公募しているものである。公募委員の選任に当たっては、募集要領に基づき提出された、申込者全員の作文審査をする第1次選考を実施し、第1次選考を通過したものを対象に、面接による第2次選考を実施し選任している。
本件対象文書は、上記の募集要領に基づき提出された14名分(平成19年度)及び18名分(平成21年度)であり、いずれもテーマに添って自らの意見や提案を記述した、手書き又はワープロ打ちの文書であり、冒頭に氏名が記載されている。
本件対象文書には、応募者の氏名、図書館についての意見、感想、要望、提案、あるいは自己の経験などが記載されており、その全体が条例第10条第1号に規定する個人情報である。
そして、本件対象文書に記載されている意見等は、たとえ氏名などの個人が識別できる記述がなくても個人の人格と密接に関係するものと認められるものであるから、「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当する。
また、本件対象文書は、各応募者がこれが一般に公開されることを予想し、あるいは公開されたことを承諾して提出したものとは到底認められない。
したがって、本件対象文書は条例第10条第1号本文後段「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当し、全部不開示とすべきとする実施機関の主張は妥当である。
なお、これらの情報は、同号ただし書イの「法令若しくは他の条例により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」とはいえず、同号ロ及びハにも該当しない。
(5) 実施機関は、4(3)において、仮に応募された作文が開示されることになると、次回の公募からは、応募者は公開されることを前提とした作文を作成することとなり、各人の経験や思想信条等の自由な記述が阻まれるおそれがあると主張するが、本件は個人情報であることを理由に不開示が妥当と判断できるものであり、この主張については判断するまでもない。
(6) 以上のことから、実施機関が本件対象文書についてその全部を不開示としたことは妥当である。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
磯部 哲、尾崎 康、加々美 光子
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成22年10月8日 |
諮問を受ける(諮問第211号) |
平成22年11月12日 |
実施機関から開示決定等理由説明書を受理 |
平成22年11月22日 |
実施機関から説明及び審議(第二部会第61回審査会) |
平成22年12月20日 |
申立人から意見陳述聴取及び審議(第二部会第62回審査会) |
平成23年1月24日 |
審議(第二部会第63回審査会) |
平成23年2月22日 |
審議(第二部会第64回審査会) |
平成23年3月11日 |
答申 |
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