トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成22年度情報公開審査会答申 > 答申第152号「平成20年度県立学校等管理職候補者選考関係文書」の部分開示決定(平成22年6月22日)
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掲載日:2024年4月2日
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答申第152号(諮問第195号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成21年8月31日付けで行った次の公文書を部分開示とした決定(以下「本件処分」という。)を取り消し、不開示とした部分を開示すべきである。
(1) 平成20年度県立学校等管理職候補者選考関係
(2) 平成20年度県立学校等管理職候補者特別選考関係
2 異議申立て及び審議の経緯
(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成20年8月7日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、以下の公文書の開示請求(以下「本件開示請求」とする。)を行った。
(2) これに対し、実施機関は、本件開示請求に係る公文書について18文書を特定し、うち9文書を開示決定し、残り8文書(以下「8文書」という。)を条例第10条第5号に該当するものとして全部を不開示決定し、1文書を作成していないとして不開示(不存在)決定を行い平成20年8月21日付けで申立人に通知した。
(3) さらに、実施機関は、平成21年8月31日に8文書について、全部を不開示とする決定を取り消し、条例第10条第5号に該当するとして部分開示とする変更決定(以下「本件処分」という。)を行った。
〔不開示とした部分〕
(4) 申立人は、平成21年10月2日付けで本件処分について、不開示とされた部分の開示を求める異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を実施機関に対して行った。
(5) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成21年11月10日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(6) 当審査会は、実施機関から、平成22年1月12日に開示決定等理由説明書(以下「理由説明書」という。)の提出を受けた。
(7) 当審査会は、平成22年2月1日に実施機関の職員から意見聴取を行った。
(8) 当審査会は、申立人から、平成22年2月12日に理由説明書に対する反論書(以下「反論書」という。)の提出を受けた。
(9) 当審査会は、平成22年3月8日に申立人の口頭意見陳述を行った。
3 申立人の主張の要旨
申立人の主張は、概ね以下のとおりである。
(1) 県教委は「配点等を公表することは、選考で重視されている領域が明らかになり、必要以上に競争を煽ったり、受験者の偏った受験対策を助長したりするなど、管理職としての資質や能力、人物を見極める選考のあり方を困難にするおそれがある。」と述べている。
しかし、配点は、重視されている領域とそうでない部分が分かるだけであり重視されている領域において受験対策しようともそうでない部分もおのずと受験対策しなければ競争に勝つことはできない。競争率の高い試験において、受験者は点数や配分が低いからと言って手を抜くであろうか。
(2) また、県教委は「配点等を公表することは、受験者が、人物・実績点に不合格の理由を求めるなど、所属長を含めた評価者との人間関係に悪影響を及ぼすことも危惧され、学校運営・経営上、人事管理上支障が生じる。さらには、人物・実績の配点を受験者が具体的に知るところとなり、評価者が受験者の実績を客観的に評価することを困難にする。」と述べている。
しかし、受験者が、人物・実績点に不合格の理由を求めるなどということがありうるのだろうか。逆に配点等が不明確であるが故に「なぜ、自分は合格しなかったのか」という不信を生みだす原因にもなる。
(3) そもそも選考試験で、評価者が受験者の実績を客観的に評価することを困難にするとは、一体どんな選考試験をしているのであろうか。通常、自ら作り上げた選考試験あるいは一般の試験でも「こういう評価で試験を実施し、こういう試験結果だったので評価した。」と自信を持って述べることが、その試験の信頼性を高めるもので、同時に不合格者は、次年度に向けてより良い管理職になっていくための学びになるものである。
(4) 平成19年度、平成20年度埼玉県公立小・中学校等採用選考1次、2次試験においては、県教委は「選考試験の実施方法、観察の方法、評定及び判定等」を明らかにしてきている。何ゆえ管理職候補者選考の場合では部分不開示となるのか、県教委は、具体的かつ合理的理由を明らかにしなければならないがその理由がまったく示されていない。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関の主張の内容は、概ね以下のとおりである。
(1) 県立学校の校長など学校管理職に求められるのは、各学校の諸課題を解決し保護者や地域から信頼される特色ある学校づくりの実現のために教職員を束ねる組織運営能力である。
この能力とは、筆答試験や面接試験のような一時的な試験で評価できる知識や対応力だけでなく、その本質は職務上の経験や実践において培われる実践力であるといえる。この能力についての評価は学校における実践の場以外で観察することは難しい。
そのため、受験者の所属長である校長が作成する調書は受験者の管理職としての適格性を評価する上で重要な判断材料となる。
このような状況において、個別の試験項目の配点等を受験者に公表すれば、受験者が評価者による評価を推測し評価者の評価に不合格の理由を求めるなど、評価者である校長との人間関係に悪影響を及ぼすことも危惧され、学校運営・経営上、人事管理上支障を生じる。さらには、評価に係る配点を受験者が具体的に知るところとなり、評価者が受験者の実績を客観的に評価することを困難にする。
よって、これらを開示することにより管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、条例第10条第5号に該当するものとし不開示としたものである。
(2) 教員採用試験と管理職選考は性格が異なるため、まったく同様に扱うことはできない。
なぜなら、教員採用試験は、試験員と受験者が互いに直接的に触れ合うことをとおして、教員にふさわしい人物を採用するというねらいで実施しているため、受験希望者をはじめ広く県民等に対して採用後の処遇をはじめ採用試験に係る情報についてもできるだけ公表していくことが必要だからである。
一方、管理職選考は、既に県教育委員会と受験者との間に雇用関係があることを前提に、受験者の知識や能力、人物に加え、日ごろの学校運営・教育実践などの実績も含めた学校管理職としての適否を総合的に判断するものであり、教員採用試験とねらいを異にするものである。
5 審査会の判断
(1) 条例第10条第5号該当性について
条例第10条本文では、「実施機関は,開示請求があったときは、開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(次条から第13条までにおいて「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対し、当該公文書を開示しなければならない。」と規定しており、同条第5号は、県の機関等が行う事務又は事業の適正な遂行を確保するために不開示とする情報について次のように定められている。
「県、国若しくは他の地方公共団体の機関、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」
上記引用中の「次に掲げるおそれ」としてイからホまでに掲げられた「おそれ」は、いずれも典型的な例示とされている。
よって、以下では,本件対象文書1から8について、条例第10条第5号に該当するとしている実施機関の主張について、個別に検討する。
(2) 本件対象文書1について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の一次選考試験における運用を定めた文書であり、調書、実践報告書及び選考基準細則における各配点及び人数割合等が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「調書の各配点」、「多様な経験の例」、「その他の事項の例示」、「担当評価のA領域の人数割合等」、「実践報告書の配点等」及び「選考基準の細則における配点等」について、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するとして不開示とした。
これらの不開示部分は、平成20年度県立学校等管理職候補者を選考するに当たって、実施機関が調書及び実践報告書の配点等をどれくらいにするか、また選考の基準はどのようにするのかの方針が記載されているに過ぎない。また、当該選考は既に実施済みである。
このため、これらの不開示部分を開示したとしても、受験者と評価者である校長との人間関係に悪影響を及ぼしたり、また評価者が受験者の実績を客観的に評価することが困難になるなど、管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある、とまでは認められない。
したがって、当該不開示部分は開示とすることが妥当である。
(3) 本件対象文書2について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の第一次選考試験選考基準を定めた文書であり、第一次合格予定者数及び選考基準が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「選考試験の各配点」、「各領域等の人数の割合」及び「不合格とする者の例示」について、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するとして不開示とした。
これらの不開示部分は,平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の第一次選考試験において、実施機関が配点等をどれくらいにするかが記載されているに過ぎない。また、当該選考は既に実施済みである。
このため、これらの不開示部分を開示したとしても、受験者と評価者である校長との人間関係に悪影響を及ぼしたり、また評価者が受験者の実績を客観的に評価することが困難になるなど、管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある、とまでは認められない。
したがって、当該不開示部分は開示とすることが妥当である。
(4) 本件対象文書3について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験問題採点の手引きであり、小問及び法規の問題並びに採点をするに当たっての基準及び配点等が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「選考試験問題の各配点」について、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するとして不開示とした。
これらの不開示部分は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験問題において、実施機関が配点をどれくらいにするかの方針が記載されているに過ぎない。また、当該選考は既に実施済みである。
このため、これらの不開示部分を開示したとしても、受験者と評価者である校長との人間関係に悪影響を及ぼしたり、また評価者が受験者の実績を客観的に評価することが困難になるなど、管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると、までは認められない。
したがって、当該不開示部分は開示とすることが妥当である。
(5) 本件対象文書4について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の第二次選考試験選考基準を定めた文書であり、第二次合格予定者数及び選考基準が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「選考試験の各配点」、「人数の割合」及び「不合格者の例示」については、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するとして不開示とした。
これらの不開示部分は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の第二次選考基準の各配点等であって、(3)本件対象文書2について(以下「(3)について」という。)判断したとおり、開示とすることが妥当である。
(6) 本件対象文書5について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の第二次選考試験の配点・2次調書及び選考基準の運用を定めた文書であり、論文・面接・プレゼンテーションの配点、2次調書の評定及び選考基準の細則が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「選考試験の各配点」、「評定尺度」及び「選考基準細則の例示」について、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するとして不開示とした。
これらの不開示部分は、平成20年度県立学校等管理職候補者の第二次選考試験において、実施機関が配点等をどれくらいにするかの方針が記載されているに過ぎない。また、当該選考は既に実施済みである。
このため、これらの不開示部分を開示したとしても、受験者と評価者である校長との人間関係に悪影響を及ぼしたり、また評価者が受験者の実績を客観的に評価することが困難になるなど、管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある、とまでは認められない。
したがって、当該不開示部分は開示とすることが妥当である。
(7) 本件対象文書6について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職第二次試験問題採点の手引きであり、問題、出題の趣旨及び採点の観点が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「採点の観点のポイント」について、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するとして不開示とした。
これらの不開示部分は、平成20年度県立学校等管理職候補者の第二次選考試験において、実施機関が採点の観点ポイントをどれくらいにするかの方針が記載されているに過ぎない。また、当該選考は既に実施済みである。
このため、これらの不開示部分を開示したとしても、受験者と評価者である校長との人間関係に悪影響を及ぼしたり、また評価者が受験者の実績を客観的に評価することが困難になるなど、管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある、とまでは認められない。
したがって、当該不開示部分は開示とすることが妥当である。
(8) 本件対象文書7について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の特別選考の選考基準であり、合格予定者数及び選考の具体的基準が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「選考試験の各配点」、「人数の割合」及び「不合格者の例示」について、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するため不開示とした。
これらの不開示部分は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の特別選考の基準の各配点等であって、(3)について判断したとおり、開示とすることが妥当である。
(9) 本件対象文書8について
当該文書は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の特別選考の選考基準運用を定めた文書であり、論文・面接・調書の各配点等及び選考基準の細則が記載されている。
実施機関は、本件処分において、「選考試験の各配点」、「多様な経験の例示」、「人数の割合」、「担当評価の項目」及び「選考基準の細則の例示」については、それぞれ管理職選考試験の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第10条第5号に該当するため不開示とした。
これらの不開示部分は、平成20年度県立学校等管理職候補者選考試験の特別選考をするに当たっての各配点等であって、(2)本件対象文書1について判断したとおり、開示とすることが妥当である。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
鈴木 幸子、田村 泰俊、早川 和宏
年月日 |
内容 |
---|---|
平成21年11月10日 |
諮問を受ける(諮問第195号) |
平成22年1月12日 |
実施機関から開示決定等理由説明書を受理 |
平成22年2月1日 |
実施機関から意見聴取及び審議(第三部会第56回審査会) |
平成22年2月12日 |
申立人から反論書を受理 |
平成22年3月8日 |
申立人の口頭意見陳述及び審議(第三部会第57回審査会) |
平成22年4月27日 |
審議(第三部会第58回審査会) |
平成22年6月22日 |
答申(答申第152号) |
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