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ページ番号:13613
掲載日:2024年8月21日
第2章 明日をになう彩の国の人づくり
-教育活動の充実-
県立高校においては、小人数授業、習熟度別授業等、生徒の実態に応じた教育活動の取組を行い、生徒の学力向上に努めているところである。それぞれの生徒の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じられるよう、さらに教育課程の改善・充実を図る必要がある。
主な課題として、特に、次の点をあげることができる。
(1)個性を伸ばす学習指導の推進
個性を生かす教育は、基礎・基本の徹底とともに、平成11年3月に告示された高等学校学習指導要領の重要な柱である。基礎学力の定着とともに、各学校が個性を伸ばす学習指導を行えるよう、条件整備を図る。
ア 柔軟な「学びのシステム」づくり
生徒の多様な学習ニーズにこたえるとともに、生徒自らが意欲的に学び、主体的に学習に取り組む態度を育成するため、学校内での学習だけでなく、従来からの学校外における「多様な学習成果の単位認定」のシステムの活用を図るとともに、さらに幅広く単位認定ができる、新しい「学びのシステム」を構築するなど、柔軟な「学びのシステム」づくりを推進する。
イ 「総合的な学習の時間(*1)」の推進
新学習指導要領において新設された「総合的な学習の時間」を推進し、自ら学び自ら考える資質や能力の育成に努める。
(2)学力向上の推進
基礎・基本の確実な習得とともに、自ら学び自ら考える力の育成を図るため、授業時数を確保するとともに、指導方法の工夫・改善に努める。また、生徒の学習意欲を高め、基礎学力の定着を図るとともに、生徒の進路希望を実現するため、学力向上の推進に努める。
ア 基礎学力の定着に向けた取組
小人数授業や習熟度別授業等、指導方法の工夫・改善やガイダンス機能の充実などを図り、学習意欲を高めるとともに基礎学力の定着に努める。
イ 進路希望実現に向けた学力の育成(後掲)
生徒の学習意欲の喚起、学習習慣の確立、基礎学力の定着や学力向上を目指した補習・学習合宿、資格取得希望者を対象とした将来の進路選択に役立つセミナーの実施など、各学校の取組に対して必要な支援を行う。
さらに、生徒の学習意欲の喚起と将来の職業選択を援助するため、学校の枠を越えた講座の開設についても検討する。
(3)体験的な学習等の推進
現在の高校生は、様々な生活体験や自然体験などの機会が不足していることから、体験的な学習やボランティア活動などを推進していく。
ア 体験的な学習の推進
体験学習の多くは学校外で行われるため、多様で体験的な学習が各学校において実施できるよう校外行事実施基準の改訂について検討する。
また、勤労、環境や福祉等についての体験学習を生徒に提供できるよう、県の施設など各種施設の利用を検討する。
イ ボランティア活動の推進
ボランティア活動は、単に社会に貢献するということだけではなく、生徒自身の在り方生き方を考えさせる上でも意義ある活動であることから、高校におけるボランティア活動をさらに推進する。
また、生徒が学校外で行うボランティア活動の成果を単位として認定できるようにする。
(4)社会の変化に対応した教育活動の推進
社会の変化に柔軟に対応しうる人間の育成を図るため、国際理解、情報、福祉、環境などに関する基礎的・基本的事項の教育が、これからの高校教育において強く求められている。これらの教育活動は、教科だけでなく、特別活動や「総合的な学習の時間」等、あらゆる機会を通じて行われる必要がある。
ア 国際理解教育の推進
ほぼ全校に配置されたALT(*2)の活用や、インターリンクス事業(*3)等の国際交流の充実を一層図り、異なった言語や文化をもつ人々とのコミュニケーション能力を高めるとともに、我が国の文化や伝統を正しく理解し、広い視野をもって異文化を理解・尊重する態度を育成する。
イ 情報教育の推進
コンピュータや情報通信ネットワーク等の情報手段を主体的に活用し、情報を積極的に収集、活用、伝達、発信するための創造的・実践的な能力と態度を育成するため、新教科「情報」(*4)の充実を図る。また、各学校のコンピュータ等の整備及び指導者の育成などの条件整備を進める。
ウ 福祉教育の推進
これからの高齢社会を生きていく生徒が高齢社会についての理解を深めることができるよう、介護や福祉に関するボランティア活動や養護学校等との交流教育を推進する。
また、各学校での福祉に関する教科・科目の開設を進める。
エ 環境教育の推進
生徒が、学校や家庭・地域での生活において、節電や節水、ゴミの減量化やリサイクルなど環境保全への取組を行うことができるよう、広く環境教育を推進するとともに、県教育委員会が設定した、教科「環境」(*5)の活用を図る。
オ 科学的素養を育成する教育の推進
「科学技術離れ」や「理科離れ」の現状にかんがみ、生徒に科学的なものの見方や考え方などの豊かな科学的素養を育成する。
(*1)総合的な学習の時間:国際化、情報化を始め、社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するため、教科の枠を越えた横断的・総合的な学習を行う時間。
(*2)ALT:Assistant Language Teacher の略。高校で外国語を教える外国語指導助手。
(*3)インターリンクス事業:県立高校が外国の高校と学校単位の国際交流を行うことにより、相互理解や友好の絆を深めることを目的とした事業で、派遣事業と受入れ事業とがある。
(*4)新教科「情報」:新学習指導要領で新たに設定された、すべての生徒が学習する教科。
(*5)教科「環境」:環境や環境問題を総合的・体系的に捉えて、問題の解決と環境保全に向け、思考力、判断力及び態度の育成を推進するために、平成8年度、埼玉県において、「その他特に必要な教科」として設定された。
現在の高校生には、興味・関心、能力・適性の多様化や学校生活に対する目的意識の希薄化などの状況が見られる。また、高校生の体力も年々低下傾向の状況が見られ、生涯にわたり健康の保持増進を図る上からも危惧されている。このようなことから、心身ともに健康な生徒の育成が必要である。
生徒の心身の発達段階を考慮し、調和のとれた人間の育成を目指すためには、次の点が課題となっている。
(1)心と体の教育の推進
学校不適応、中途退学、問題行動などの背景として、自ら学び自ら考える力、正義感や倫理観等の豊かな人間性、健康や体力などの「生きる力」の不足が指摘されている。生徒の個性を伸ばすとともに、社会の一員としての自覚を深めさせるなど、「生きる力」をはぐくむ教育をより一層推進する。
ア 人間としての在り方生き方の教育の充実
生徒が自己探求と自己実現に努め、集団の一員としての自覚を養うための教育活動の充実を図る。
イ 心豊かな生徒の育成
学校、家庭、地域社会との連携を通して、美しいものや自然に感動する心、正義感や公正さを重んじる心、基本的な倫理観、自立心や責任感、他者への思いやりなどの豊かな人間性の育成を図る。
ウ 言葉を大切にする教育の推進
生徒が望ましい人間関係を結び、円滑な社会生活を営んでいくため、教育活動のあらゆる場面を通して、「話すことや聞くこと」など言葉を大切にする態度を養い、言語生活を豊かにさせるとともに、「伝え合う力」など、コミュニケーション能力の育成に努める。
エ 健康・体力づくりを図る教育の充実
生徒が自らの心身の健康や体力に対する理解や認識を深め、健全な態度や行動を身に付ける教育などの充実を図る。
オ 問題行動の防止
学校における生徒指導体制の一層の整備・充実を図る。
また、学校のみで問題を抱え込むのではなく、家庭はもとより地域社会における教育力を高めるとともに、関係諸機関との連携により、問題行動の防止に努める。
(2)教育相談体制の整備
学校不適応や問題行動の発生を未然に防止するとともに、すべての生徒の心の健康を増進し、よりよい人格の発達を図るため、教職員が一体となった教育相談体制の整備・充実及び関係諸機関との連携による相談体制の充実を図る。
ア 教員のカウンセリング能力の育成と活用
教員のカウンセリング能力の向上を図るため、研修体制を一層充実させ、その修了者の効果的な活用を図る。
イ 専門カウンセラーの配置
生徒の心の悩みや臨床相談について、専門的知識・経験を有するカウンセラーの配置を図る。
(3)中途退学問題への対応
生徒の学力や進路希望が多様化し、生徒の中には、基礎的な学力の不足や基本的な生活習慣の欠如、学校生活に対する目的意識の希薄化などの状況が見られる。その結果、「学校生活・学業不適応」や「進路変更」などの理由による中途退学者も増加している。多様な生徒に対応した教育の在り方、教育相談や生徒指導など一人一人の生徒への援助の在り方が課題である。
ア 進路指導における中学校と高校の連携
中学生やその保護者が、将来の生き方や進路選択について理解を深めることができるよう、十分な進路情報を提供するとともに、中学校における進路指導の改善・充実を目指す事業の推進を図る。
イ 教育課程の改善・充実
生徒の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じ、生徒の個性を生かし、伸ばすために、選択科目の拡大、履修と修得の差を設ける等、単位制の活用を図るとともに、基礎学力の定着に努めながら、「生きる力」の育成を図る。
ウ 再び学べる高校のシステムの充実
中途退学者の再入学制度(*2)や転編入学制度(*3)の一層の弾力的運営を図る。また、学ぶ意欲と熱意をもつ者がいつでもどこでも学べる、昼夜開講の単位制による新しい発想の定時制・通信制高校の設置(後掲)を推進する。
(*1)「彩の国5つのふれあい県民運動」:自然体験や生活体験などの体験活動が不足している現代の子供たちに、学校、家庭、地域社会が一体となり、「自然」「人」「本」「家族」「地域」との5つのふれあいを通して、他を思いやる心などをはぐくもうとする本県独自の運動。平成11年度から実施されている。
(*2)再入学制度:高校を中途退学した者が、同じ高校で再び学びたい希望がある場合、入学を認める制度。
(*3)転編入学制度:転入学は、高校に在籍している生徒が他の高校の第1学年の途中または第2学年以上に入学することを認める制度。編入学は、中途退学者や帰国子女など、高校に在籍していない者を第1学年の途中または第2学年以上に入学することを認める制度。
現在、高校には多様な能力・適性、進路希望等をもつ生徒が入学している。これらの生徒一人一人の個性や能力を生かし、その夢や希望を実現する進路指導を推進するためには、次の点が課題となっている。
(1)「志を育てる教育」の推進
将来の在り方生き方について考えながら、主体的に進路を選択できる能力・態度を育成する「志を育てる教育」を推進する。
高校教育においては、職業や進路に関わる様々な啓発的な体験や適切な進路情報の収集と活用等を通して、生徒が自己理解や自己啓発を進め、自己の「生き方」や「人生設計」について考えながら、主体的に進路の選択・決定ができるよう、計画的、継続的に指導・援助する。
ア 体験的な学習・啓発的な経験の充実
生徒に職業や将来の進路について考えさせるため、就業体験(インターンシップ(*1))、ボランティア活動などの体験的な学習、大学・短大・専門学校等への体験入学や企業への体験入社などの啓発的経験を充実させる。
イ 大学・企業や地域社会との連携
大学や企業などの関係者、地域の専門家あるいは経験豊かな講師などによる進路意識啓発講演会の開催を支援する。
また、生徒の興味・関心を喚起し、主体的に学習に取り組む態度の育成を図るため、大学の教員が高校を訪れ、専門分野の学問の紹介や講義を行ったり、高校生が大学での講義を聴講できる機会を設けたりするなど、大学レベルの教育を履修する機会などを拡大する。
ウ 進路情報の収集・活用と進路相談の充実
生徒が自らの進路に関し、必要な情報を収集し、理解することができるよう、進路情報資料を収集・整理し、有効に活用するため、資料室の整備を進めるとともに、図書館や情報通信ネットワークの活用を推進する。
また、生徒がいつでも進路についての相談ができるよう、進路相談体制の充実を図るとともに、ガイダンス、カウンセリング機能の一層の充実を図るため、進路指導のアドバイザーの導入等について検討する。
(2)進路希望実現の支援
生徒の進路希望を実現させるため、各学校の取組に対して必要な支援に努める。また、卒業後についても、関係機関との連携を図り、引き続き指導・援助を行う。
ア 進路希望実現に向けた学力の育成
生徒の学習意欲の喚起、学習習慣の確立、基礎学力の定着や学力向上を目指した補習・学習合宿、資格取得希望者を対象とした、将来の進路選択に役立つセミナーの実施など、各学校の取組について必要な支援を行う。
さらに、生徒の学習意欲の喚起と将来の職業選択を援助するため、学校の枠を越えた講座の開設についても検討する。
イ 就職指導促進の支援
新規高校卒業者の就職が厳しい状況にあることから、就職希望者の多い高校を対象に、新卒者の採用枠の拡大や求人開拓などができるよう、積極的な支援・援助を行う。また、卒業後についても、ハローワーク(公共職業安定所)や関係企業等と連携をとり、引き続き指導・援助に努める。
(3)進路指導の充実に向けた事業の推進
ア 進路指導充実推進校の指定
生徒が自らの在り方生き方を考え、自己の進路を主体的に選択し、進路希望を実現できるよう、進路指導充実推進校を指定し、計画的・組織的な進路指導について実践的な研究を行う。また、その先進的な研究の成果を、すべての高校に広げ、県立高校全体の進路指導の充実を図る。
イ 進学対策の充実
大学への進学希望者が増加している現状を踏まえ、普通科、専門学科、総合学科の各高校において、それぞれの実態に応じた進学指導を充実させるとともに、高校と大学との役割分担に基づいた両者の連携を進めることができるよう、高校と大学との接続のあり方について改善を図る。
(*1)インターンシップ:実際的な知識や技術・技能にふれ、主体的な職業選択の力や職業意識を育成するため、地元の企業等の協力を得て行う職業現場での就業体験活動。
部活動の教育的意義は、スポーツ・文化にふれる楽しさに加え、体力の向上や人間的な成長、友達づくりなど生徒、保護者、教員のいずれからも高く評価され、その価値が認められている。しかしながら、少子化に伴う生徒数の減少や顧問の高齢化、部活動に対する生徒の価値観の多様化や意識の変化などにより、運動部及び文化部の加入の状況は停滞傾向にある。
一人一人の個性や能力を生かす場である部活動を推進するためには、次の点が課題となっている。
(1)生徒の個性や能力を生かす部活動の推進
生徒の心と体の発達や仲間づくり、教科を離れた教員とのふれあいの場として意義がある部活動を展開するため、一人一人の生徒の個性を十分生かした効果的で柔軟な運営を推進する。
ア 生徒の個性の尊重と柔軟な部活動の運営
社会の変化に伴う生徒の部活動に対する考え方を的確に捉えるとともに、一部の勝利中心的な考えに基づき強制的に行う部活動の在り方を見直すなど、生徒の自主的な活動を促進するよう、適切な部活動の運営を図る。
また、各学校では、部活動のねらいを明確にし、学校の実態に応じて活動日数、活動時間、休養日を設定するとともに、学習時間の確保及び適切な入部の在り方等について十分に配慮する。
イ 実技指導力の向上
顧問の指導力が向上することにより、生徒の技能が高まるとともに相互の信頼感が強くなる。指導経験の浅い教員には、運動部活動指導者講習会に積極的に参加させるなどして、実技指導力の向上を図ることに努める。
(2)開かれた部活動などの推進
部活動を通して、地域・保護者からの学校に対する信頼や協力を得ることは、地域に開かれた学校づくりに資するものである。このため、埼玉県スポーツ振興計画「彩の国スポーツプラン2010」(*1)等に基づき、学校外の指導者の活用を図るなど、開かれた部活動の推進に努める。
ア 地域指導者の活用や地域のクラブ活動との交流
多様な生徒のスポーツ・文化のニーズにこたえるため、各学校の実情に応じて、地域の専門的な外部指導者の協力を得るなど、校内組織を踏まえ、生徒・外部指導者と一体となった運営に努める。また、各学校の実態を捉え、地域スポーツクラブとの連携を図り、運動部活動の適切な展開に向けて、生徒のニーズにこたえる環境づくりに努める。
イ 複数学校間の連携の推進
生徒数の減少などにより、その学校だけでは部活動を運営し難い場合、スポーツを愛好したい生徒や文化的な活動をしたい生徒の願いにこたえるため、同じ地域の学校との合同部活動を推進する。その際、学校や指導者のねらい、運営の方法などを明確にし、学校や顧問の間で十分連携を図り、一人一人への配慮が行き届くようにする。また、合同チームによる大会への参加ができるよう、大会参加規定の弾力化を図るよう努める。
ウ スポーツ・文化活動の国際交流
国際化が進む今日、生徒がスポーツや文化活動を通して、日本の文化やスポーツはもとより世界の文化・スポーツに対する認識と理解を深めるよう指導に努める。
また、部活動を「する」のみでなく「みる」観点からも捉え、競技会や文化交流会等に積極的な参加を促す指導に努める。
(*1)「彩の国スポーツプラン2010」:すべての県民が、生涯にわたって、より活発にスポーツ活動に親しめるよう、長期的展望に立った本県スポーツ振興の指針となる計画。期間は平成11年度(1999年)から平成22年度(2010年)までの12年間。
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