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掲載日:2023年1月13日
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埼玉県教育委員会では平成22年度から、東京大学CoREFと連携し、生徒が潜在的に持っている「学ぶ力」を有効に引き出すことができる学び「協調学習」を取り入れた授業改善(「教え込みの授業」から「学び合いの授業」への「学びの改革」:主体的・対話的で深い学びの実現)に関する研究に取り組んでいます。
(1) 生徒が主体的に学ぶ意欲をはぐくむ授業案等の研究・開発及び検証を行う。
(2) ICTの効果的活用に関する研究を行う。
(3) 評価の標準化と一般化に向けた研究を行う。
(4) 授業案等の共同開発や情報共有を行う教員ネットワークを構築する。
(5) CoREFをはじめ、大学や研究機関、企業等の持つ知見を教育現場に活用する。
多様な高校生に対応し、学力向上を目指した新たな授業形態と改善の方策の提言を目指し、平成22年度に「県立高校学力向上基盤形成事業(平成22年度~平成23年度)」を立ち上げ、CoREFと研究連携し、「協調学習」の手法の研究と実践を通じて、県立高校における生徒の学力向上につながる授業改善に着手しました。その後、事業名を「未来を拓く「学び」推進事業(平成24年度~平成26年度)」、「未来を拓く「学び」プロジェクト(平成27年度~現在)」と変更しながら、学習者の視点に立った、自ら学ぶ意欲をはぐくむ教材の研究・開発に取り組んでいます。
令和2年度からは、さらに「主体的・対話的で深い学び」を実現するための取組を行い、進化と深化による新しい学びによる授業改善を実行します。
授業実践や教材の研究・開発のネットワークは、全ての県立高校及び中学校(高139校、中1校)に広がり、学校・教科の枠を超えた「協調学習」の授業づくりに取り組んでいます。
授業づくり、教材づくりにあたっては、情報交換Webサイトを活用しています。
教員の授業力の向上を図り、各校における授業実践を支援するため、若手教員からベテラン教員、学校管理職に至る学校職員全体を対象とする各種研修を実施しています。
例)
高等学校初任者研修「授業力向上研修」
協調学習入門研修会
協調学習マイスター認定研修会
管理職対象授業力向上マネジメント研修会
CoREFと自治体で組織する「新しい学びプロジェクト」に参加し、地域や校種を超えて「協調学習」を引き起こす授業づくりや、実践・評価などの研究に取り組んでいます。
「協調学習」の授業づくりが始まった平成22年度に10校で行われた取組は、令和元年度には、全県立高校(139校)に広がりました。
授業改善に取り組んだ学校数とともに、「協調学習」の授業づくりに従事した教員は、年々増加しています。令和元年度は、「協調学習」の授業づくりに取り組んでいる学校(研究開発校)に646名の授業実践者が在籍しています。
令和元年度末の段階で、15教科17科目で1710教材が開発されています。
「知識構成型ジグソー法」は、「話す」、「聞く」、「考える」といった、一連の活動を繰り返し、考え方や学び方そのものを学習活動の中で学べる「協調学習」のための方法の一つです。
授業の展開としては、まず、生徒は課題を受け取り、自分自身で答えを考えることからスタートする。生徒は、今現在の知識や経験を生かして、与えられた課題に対する答えをまとめます。
その後、課題を解決するためのヒントとなる数種類の教材を用いて、グループでの話し合い活動を行います。このグループ活動には、同じ教材を読み合うエキスパート活動、違う教材を持ち寄り話し合うジグソー活動の2種類があります。エキスパート活動では、与えられた教材(ヒント)をグループ内で意見交換しながら、その教材に書かれている内容や意味について理解を深めます。この活動をとおして、生徒は教材に関する専門家(エキスパート)になります。次に、違う教材を学んだ生徒で新しいグループをつくり、エキスパート活動で知り得た知識を組み合わせ、初めに与えられた課題の答えを求めていきます。異なる知識一つ一つがピースとしてつながり、知識が融合されることで、与えられた課題の答えにたどり着きます。まさにジグソーパズルを行っているような活動といえます。
その後、グループで話し合われた内容や導き出された答えなどは、グループ相互の意見交換(クロストーク)を通して情報共有を行います。
グループ活動後は、その活動を通して広げ深めた考えを基に、与えられた課題に再び向き合い、最後は一人で課題に対する答えをまとめていきます。
※「知識構成型ジグソー法は、東京大学CoREF故三宅なほみ氏が考案した授業手法である。
未来を拓く「学び」プロジェクトが目指す「これからの埼玉教育」について、また、今後の取組に関する具体的な内容について説明を行います。また、各教科で、年間の研究計画等を検討します。
新規の教材開発や蓄積されている教材の再開発などを行い各校において「協調学習」の授業実践に取り組みます。
見とりの観点や生徒の学びの様子などをもとに、各教科で研究授業や実践授業に対する研究協議を行います。
年間の授業実践から得られた成果を各教科でまとめます。また、教科を越えた意見交換のための教科間交流を行います。「協調学習の評価」や「単元の流れにおけるジグソー授業の効果的な配置」など、協調学習を実施する上での疑問や悩みを解消するための情報交換・情報共有も行います。
今後の教育動向に関する基調講演や新しい発想で取り組まれた授業実践報告を行います。また、各教科部会における一年間のまとめ(授業実践に関する報告)を行います。次年度に向けての課題や各教科の研究の進め方についても検討します。
【教員の感想】
○生徒の学びを中心とした授業デザインを意識できるようになった。
○生徒達の会話の観察を通して、生徒の学びをイメージすることができるようになり、1時間1時間の授業を以前
より深く考えるようになった。
○「知識構成型ジグソー法」という型があることで、教科や年齢、学校の垣根を超えた授業研究が行えるように
なった。
【生徒の感想】
○責任感が生まれるから、積極的に理解しようと自然と思えた。
○何度も文章を読むことで振り返りができ、いろいろな角度で文章を見ることができた。
○一人で考えていることが勉強だと思い、やりたくなかったが、実際に授業を受けて考えの違う人と話をしてい
る中で自分の考えがよくなっていたことがわかった。
○授業の後も自分の答えに納得がいかず、いろいろ調べ物をした。
生徒が潜在的に持っている「学ぶ力」を有効に引き出すことができる「協調学習」の授業づくりを、県立高校を中心として全県的に取り組んでいる「Saitamaモデル」は、時代が求める学び、次期学習指導要領が目指す学び「主体的・対話的で深い学び」を実現するものであり、全国を、更には世界をリードする教育実践です。
平成29年1月14日 戸田市民文化会館で開催された平成28年度 未来を拓く「学び」プロジェクト シンポジウムの鼎談(ていだん)の中で、本県の取組について文部科学省 初等中等教育局教育課程課長合田 哲雄氏(当時)は次のようにコメントしています。
「(前略)・・・日本教育の良さを全体的にしっかりと底上げしながら、教育をもう一歩前に踏み出すことができるのは、世界の中でもこの国しかないと思っていますし、それを牽引しておられるのが埼玉県だと思っていますので、引き続き先生方の御指導を頂きながら、指導要領の改訂にしっかり取り組ませていただきたいと思っています。」 鼎談「『主体的・対話的で深い学び』をいかに実現するか」 合田哲雄(文部科学省 初等中等教育局教育課程課長) 白水始(東京大学CoREF機構長) 羽田邦弘(県立学校部高校教育指導課長) ※肩書は当時のものです |
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