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掲載日:2022年7月12日
Q 高木功介 議員(自民)
2月24日、ロシアによるウクライナ侵略で、国際秩序は大きな転換期を迎えたと言えます。2つの世界大戦を経て、多くの犠牲の上に人類が築き上げてきた国際法に基づく国際秩序が破壊されてしまいました。しかも、国連安全保障理事会常任理事国であるロシアがこのような侵略戦争を行うことに、悔しさと憤りを感じます。国際秩序の崩壊は、すなわち戦争の時代に突入する可能性を意味し、我々は、国民の生命、財産を守るための備えが必要であると思います。
中でも、北朝鮮の度重なる弾道ミサイル発射は、我が国に実際起こっている脅威であり、今年に入って半年足らずで計17回と、1年間で最も多かった年の数に達しています。そのため、万が一弾道ミサイルが着弾した際の対処について考えたいと思います。
まず、防災放送やスマートフォンで全国瞬時警戒システム、Jアラートが鳴り、国民に避難を呼び掛けます。しかし、仮に今この時点でJアラートが鳴ったら、どれだけの方が適切に動けるでしょうか。地震があったときは身を守れ、津波が来たときは高い建物に避難しろという周知徹底に比較し、即座に適切な場所に避難できる国民は大変少ないのではないかと懸念いたします。
一時避難場所に関して、国民保護法施行令第35条で定めている基準は、1つ、「公園、広場その他の公共施設又は学校、公民館、駐車場、地下街その他の公益的施設であること。」、2つ目に、「避難住民等を受け入れ、又はその救援を行うために必要かつ適切な規模のものであること。」とあり、埼玉県がこれに従い指定した施設は3,158か所あります。一見、十分な数のように思えますが、実は大半が学校や公民館であり、弾道ミサイルなど防爆に有効とされる地下避難施設に関して言えば、僅か15件です。しかも、これも町の中心から離れた公共施設が大半です。都市や町なかにいる人が、僅か数分で郊外の公共施設へ逃げ込むことは果たしてできるでしょうか。このような現状になっている要因は、次の2つあると考えられます。
まず1つ目に、一時避難所の設置基準が、国民保護法施行令第35条に定める避難施設の基準と都道府県の地域防災計画で定められている避難施設の基準に類似点が多いことです。2つ目に、指定に当たって施設管理者の同意を得る必要があることから、地域防災計画で定められている避難施設のほぼ全てを国民保護における避難施設と定めたためと考えられます。
一方で、内閣官房では、警報が鳴ったら丈夫な建物に避難しろと言っています。不思議なことに、政府が指定した建物には避難しろと言っていません。つまり、そもそも政府の指定した施設に逃げ込むことは難しいのです。
東京都は、5月末に、弾道ミサイル落下に備え、爆風などから身を守るための緊急一時避難施設として、地下鉄の駅をはじめ、様々な場所を指定いたしました。指定されたのは、都営地下鉄と東京メトロの駅のうち、事業者が単独で管理している駅など合わせて105か所で、このほか西新宿や上野の4か所の地下道も指定されました。
私は先日、東京都危機管理監と意見交換しました。その際、都は今後、施設を含めた、ほかの地下の駅や地下街など民間地についても指定していきたいとのことでした。埼玉県では、地下鉄は浦和や大宮など人口が集中した都市部にはありません。町なかにある民間地を含む場所の指定が必要だと言えます。
しかし、民間地を避難場所に指定するには、当然民間事業者の協力が必要になります。例えば、避難の際に建物の附属物が原因で負傷者が出た場合、慌てて行って階段から転げ落ちたとかいう場合ですね、建物の所有者に責任を負わせるならば、その建物の所有者は避難者の受入れを歓迎することはないでしょう。そうした施設の各種免責などの整備はあらかじめ必要になってまいります。そして、一時避難施設に指定された場所が瞬時に分かるように、標識を設置することが必要だと思います。特に都市部や観光地では土地に不慣れな人が多いため、重要です。Jアラートが鳴った際の一時避難場所の民間地を含めた施設の指定及び避難誘導のための標識を設置すべきと考えますが、知事の答弁を求めます。
さて、武力攻撃事態などのように突然発生する事態に対して、的確かつ迅速に国民保護のための措置を実施するためには、平素から十分に訓練しておくことが重要であり、国民保護法第42条においても、訓練の実施について規定されています。総務省の国民保護計画にも規定があります。
弾道ミサイルが発射され、万が一我が国に落下する可能性がある場合における情報伝達方式やその内容及び行動計画、避難行動などを周知するため、2017年3月17日に秋田県男鹿市で実施したのを最初に、国と公共団体の共同で弾道ミサイルを想定した住民避難訓練が実施されました。国と地方公共団体の共同訓練は25都道県、29市区町で実施いたしておりますが、埼玉県では、2017年8月に東松山市において県内で実施されて以来、実施されておりません。
政府は、自治体と共同で住民の避難訓練を約4年ぶりに再開する方向で調整している旨を本年4月15日の内閣官房長官発表で発表されました。是非、埼玉県で国と共同開催すべきと考えますが、知事の答弁を求めます。
A 大野元裕 知事
施設の指定及び標識の設置についてであります。
弾道ミサイル攻撃が発生した場合、県民が迅速かつ安全に避難するためには、議員御提案の民間施設を含めた避難施設の追加や避難誘導のための標識設置は、一定程度有効な手段であります。
国民保護法における地方公共団体の事務は法定受託事務であり、国が方針を定め、全国統一的な対応を行うべきであります。
そこで、本年5月25日、全国知事会から国に対して、施設管理者に負担が生じないよう、事故や損害発生時の責任、補償についての統一的な見解を検討し、基本指針などで明示すること及び避難施設の表示を導入することを要望したところであります。
今後も、避難施設として、民間施設を指定しやすくなるよう、国に対し、働き掛けを行ってまいります。
他方、弾道ミサイル攻撃が発生した場合の避難行動では、緊急一時避難施設を前提とすることが現実的かどうかについては疑問でもあります。
Jアラートでその情報が瞬時に伝達をされますが、北朝鮮から最も効率的な飛翔パターンである「ミニマムエナジー軌道」でミサイルが発射される場合、着弾までに約4分程度、Jアラートによる情報発出後の余裕は最長でも数分と見られるところ、緊急一時避難施設に避難することは極めて困難かもしれません。
また、そもそも、緊急一時避難施設はミサイルによる攻撃に特化して想定されたものでもございません。
1991年の湾岸戦争でイラクからイスラエルに着弾したミサイルが39発、それに対し、ミサイルによる直接の死者は2名にとどまりました。初動におけるそれぞれの国民の行動が命に直結することを示しています。
イスラエルの事例に学べば、緊急時には、近くの頑丈な建物や地下施設に避難するだけではなく、それが困難であっても物陰に身を隠したり、地面に伏せて頭部を守る行動を取っていただくなど、可能な避難措置をとることが徹底されたことによって、生存確率が高まりました。
イスラエルのケースでは、地下街や頑丈な建物の指定よりも、様々な状況での避難行動の啓発のほうが、はるかに重要であることを示しています。
県民の皆様には、まず緊急時に可能な避難行動をとっていただくことについて、県ホームページへの掲載や、市町村による情報発信などにより、周知・啓発を図るとともに、国は様々な場所における避難行動を示しておりますが、命を救うためにより実効的となるよう、一時避難所を必ずしも前提としない避難行動の啓発について、国に要望してまいります。
次に、避難訓練の国との共同開催についてでございます。
弾道ミサイルを想定した訓練は、平成29年度に県と鶴ヶ島市が共催で、東松山市など5市が単独で実動訓練を実施しました。
さらに、本年になってからも、5月18日には、5年ぶりに、国主催、県と三芳町の参加による図上訓練を行いました。
有事の際の対応能力向上には、訓練を着実に実施し、教訓を積み重ねるとともに、一人ひとりに緊急時の意識を啓発することが重要であることから、実効的な避難措置が可能になるよう、国の啓発に対する要望とともに、県としても今後、ミサイルを想定した訓練の実施に努めてまいります。
再Q 高木功介 議員(自民)
法定受託事務というふうなことで、結局、国に全て基準があるからこそ、埼玉としてはできないというようなニュアンスに私は捉えたんですけれども、今、国がそれだけ、いわゆる国の基準に沿って避難施設というかそういうふうなもの自身を指定したところが役に立たないから、私はそれは問題なのではないかというふうなことで質問させていただきました。
そういうふうなことから考えますと、埼玉県独自というか、埼玉県としても、ここの部分に避難すれば大丈夫だよというようなことは指定することができないものなのか。
又は、もう1点というか、同じことなんですけれども、Jアラート鳴ったときに、知事は、避難施設に避難をするより、身をかがめたりとかそういうふうなことが有効であるというふうなことをおっしゃいましたけれども、イラク戦争から随分時間がたっておりますので、また、今とは結構兵器の内容も変わってきていることがあるのではないかということで、少し昔のエビデンスなのかなというふうに捉えました。
そういうふうなものを踏まえまして、埼玉県独自の、法定受託事務というふうなことは承知しておりますけれども、つくるようなお気持ちはあるかというところを再質問させていただきたいと思います。お願いいたします。
再A 大野元裕 知事
御質問は2点だったと理解いたします。
1点目は法定受託事務であるが、埼玉県独自で定める必要があるのではないか。また、2つ目については、エビデンスが古いので新しく検討する必要があるのではないかの2点と理解させていただき、御質問にお答え申し上げます。
まず最初の国民保護法あるいはJアラートによる情報が発出された際の県の事務は法定受託事務でございますので、やはり国において一律の基準を定めるべきと考えます。
他方で、埼玉県において、例えば訓練等において知り得た知見やより適切なものについては、県として国に対してしっかりとお伝えをし、要望することによって、法定受託事務であるものの、より良い方向にもっていくべきではないかというふうに考えているところでございます。
また、避難するより身を屈めろという訳ではなく、一時避難施設を前提とした退避が全てではないと思っております。
私も存じ上げているイラクの例は、ミサイルが着弾した場所を拝見したのは20か所程度しかございません。
いわゆる旧来のスカッド系ミサイルが着弾した地点においては、地下に退避することも重要ですけれども、実はある地点では、詳細については申し上げにくいのですけれども、地下のシェルターに退避したがために、バンカーバスターでやられて、その上にいた人は助かって、地下のシェルターの中にいた人は全て焼き尽くされたといった状況も私は実際に確認しております。
先ほどの答弁で申し上げた、生存の確率がどのような状況においても高まるものということを我々はまず第一に考える必要があると考えておりますので、現場に最も近いところにいる我々、地方自治体においては、より人の命を救えるような提言をしていきたいというふうに考えています。
これも国に伝えながら、法定受託事務を全国一律で進めていただけるようお願いしてまいりたいと考えています。
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