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掲載日:2024年7月3日
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講師 秋田 大介
私の方から第一部の講義ということで「共創を実現するための心得」というところで喋らせていただきたいと思っています。秋田です。よろしくお願いします。
いつも僕が大事だよと言っているのは、デンマークで「クアトロ・ヘリックス」という言葉があるんですけれども、合意形成の場ですね。今、社会課題がすごく複雑なので、要するに行政だけではできないと、さっき(挨拶の中でエネルギー環境課の)課長さんも言われていました。
やっぱり官民連携、それだけじゃなくて、実は市民とも一緒に協働しなきゃいけないし、特に大学みたいなアカデミックなところも入れていかなきゃいけないので、日本でいうと産官学民連携というのですけれども、一番大事なのが対話だということで、いろいろ事前に話をして、「こういうのが本当に解決しなきゃいけない社会問題ですよね」というのをお互いに理解する、同じようなゴールを、遠くでいいので「見る」ということがすごく大事になってきます。そういうことを、デンマークではこういう合意形成をしようみたいな話をしています。よく例に挙げるんですけれども。
私、ちょっと自己紹介をします。1年ちょっと前まで神戸市の職員をやっていましたけれども、辞めまして、今はいろいろなところで行政と民間の間に入って、社会課題をコーディネートするみたいなことをやっております。
官民連携が求められる背景というのがあるんですけれども、基本的には社会課題が今めちゃくちゃ複雑になってきています。元々あった社会課題なんですけれども、個別化しているとか、さらに自治体でいうと人もいないし、予算も無いしみたいな状態がすごく増えてきています。例えば性別だけとっても、男女と昔は言われていたのにLGBTが出てきて、Qが出てきて、+(プラス)が出てきてと、どんどん複雑化していく、個別化していくというふうになっていて、その対応が求められているというような状態です。
一方で、企業さんの方は、昔はみんなが買ってもらえるものを作ればいいんだみたいな商売があったと思うんですけれども、今はそうではなくて、やはり何かしら社会課題みたいなところに取り組んでいないと選んでもらえないみたいな状況が出てきまして、ESGとかSDGsとかパーパスとかエシカルとか、いろいろな企業を評価する指標が出てきたなというふうに思っています。なので、ここはうまいことを協働できるのではないかなというのが、官民の連携が求められる背景ですね。
ただ、自治体といろいろ組んでいる企業さんもあると思うんですけれども、組んだのだけどうまく進まないみたいなのがめちゃくちゃあって、「包括連携協定を締結したけど、包括って何をしたらいいかわからない」とか典型的な例ではあります。行政も「組んでみたんだけれども、ずっと営業ばっかりされる」みたいなことがあって、なかなかうまく進んでいないというのが官民連携事業の現状かなというふうに思っています。
これは、東北経済産業局の資料にある指標なんですけれども、いろんな壁がある。前例踏襲主義の壁とか、うまくやっていたと思ったら人事異動で変わっちゃったとか、予算が結局付かなかったとか、いろいろな壁がありますので、それをお互いに乗り越えていかなきゃいけないということがあります。
やっぱり連携のイメージとしては、課題とか、課題ってビジネスのある意味ネタだと思うので、最近ソーシャルビジネスという言葉も結構流行ってきていますけれども、ある意味それを提供できるのが自治体の強みだとは思いますし、実証の場も今回、いろいろやりましょうと言っていますので、そういう場も用意できますし、市民・町民と一緒に連携してやる場合に信用してもらいやすいというのが行政の強みでもあります。民間企業としては解決案をたくさん持っていたり、これまで培ってきたノウハウとかナレッジとか、新しいものを生み出す力は、民間企業はかなり強いので、そういったところで一緒に組めるんじゃないかなと思っています。
大事なのは、やはり一番初めのクワトロ・ヘリックスというのがあったんですけども、対話。行政というのはどういうことを思って、どういう課題に当たっているんだろうとか、逆に民間企業というのはどういう課題に当たりながら、どうやってビジネスにしていくんだろうみたいな、お互いにお互いの事情をちゃんと話すというのがすごく大事でして、対話を繰り返しながら、「じゃあ、これとこれだったら組めるんじゃないか」みたいなところで小さく組んで小さなスタートをするというのがすごく大事だと感じています。(資料に)小さく書いていますが、中間支援って僕らの役割なんですが、これも実は重要なのでアピールしておきます。
よく言うのは、官民連携の肝というところで、行政の方にいつも言っていることなんですけれども、なかなか行政から連携を持ちかけるだけではうまくいかないんですよ。「これをやってください」と言うと、ほぼ委託になっちゃうので。仕様書を決めるわけではなくて、「この問題を解決したい」「これがしたいんだ」「これを何とかしたいんだ」というところをできるだけ開いた状態で民間に相談できるかどうかって、結構肝でして。何でもいいというわけじゃないですけれども、「ツールがわからないのでお願いします」というような開き方が大事なのかなというふうに思っています。
開いたんですけれども「何かわからないITの手法が来ます」とか、「新しいツールがやってきたけどよくわからないから無理です」みたいなのではなくて、それを何とか受け入れて連携していくみたいな度量が必要かなと思っていますし、一番大事なのは、この(資料の)一番下のお互いの立場を分かり合って信頼関係を結ぶというのがすごく大事でして、特に行政職員は民間が持っているリスクというのはあまり分かっていないことが多いので、そのあたりをしっかりお互い話して理解してあげる、そしてリスペクトを持ってあげるというのが大事だなと思っています。
民間の方によく言っているのは、これも一緒なんですけれども、「これだ!と思って窓口に行くんですけど、つながらない」みたいな話が結構多くて、「どうしたらつながりますかね?」と言われるんですが、僕は人の方が大事だなと思っていて、ちゃんと民間のことも分かっていて、ちゃんとした部署につないでいただける人に自治体としては出会うのが大事です。
実際に言うと、今回ここにいる埼玉県の人たちは、かなり優秀な人材がいっぱいいるなと思っていて、参加していらっしゃる各地方自治体の方も多分、これから結構揉まれてくるので、どんどんどんどんそういう人材になっていくと思うんですけど、そういう人材とつながることができればその人が異動してしまっても、その人が果たせる役割ってすごく強いんですね。「うちの部署ではないんですけれども、僕ちょっと説明してきます」みたいなことが言える職員とつながっていくのは大事な話で、ドンピシャの部署にいてもなかなかつながらないんですね。
2つ目、これもよくあるんですけれども、「うちの会社でこんなソリューションあります、これをこうすればこういうふうにできます!」と決めつけだけで持ってくると、なかなか受け入れられない。ちょっとずつ事情が違うとか、自治体の方もいろいろな思惑がありますので、そこを合わせられるぐらいちょっと柔軟な提案を心がけてほしいなというふうに思います。
やっぱりすごくいいものがあっても、いきなり予算をつけられないというのが行政の事情で、小さな成功を積み重ねていかなければいけないので、本当に小さなスモールスタートから実績を積んでいって、「これが今年できたから来年はこうしよう」「来年これができたからもう1個こうしよう」みたいな、ちょっと長めのステップを組んでもらえると、すごく組みやすいと思います。
最後ですけども、お互いの立場から言うと、信頼関係ですね。行政は税金を使って仕事をしているので、別にそれは楽をしているわけではなくて、税金を使って仕事をするというのは大変なんですね、説明が。議会も通さなきゃいけないし、たったボールペン1本買うのでも何か承認が要るとかいう部署もあるんですね。そういうのもあって、なかなか思うように進まないです。時間がかかるというのがあるので、その辺も分かってあげると、すごく理解はできると思います。「こういうことを意思決定して、行政はお金を取ってきているんだ」みたいなのが分かると、すごく組みやすくなりますので、是非、対話の中でそれぞれの事情を聞いていただければなというふうに思っています。
少し事例を話しますと、神戸市のときは『つなぐ課』といって、社会課題だけ「ぽん」と持ってこられて、それを解決するためにいろいろな部署をつないだり、民間の方と行政をつないだりというようなところの、何か特命課長という肩書がついていますけれども、そんなことをずっとやっていました。
やっぱり行政って、すごい縦割りが多いんですね。だから、今回も自治体の方がいろいろな課題を出すと思うんですけれども、それを出した部署だけでは解決できないことが多くて、他の部署を巻き込みながらやらなきゃいけないんですけれども、そういうところもいろいろ勉強しながら進めていけたらなというふうに思っています。
ちょっと面白い事例を1個だけ。これも民間企業とくっついたわけではないですけれども、今どこでもやっている空き家問題。空き家問題ってめちゃくちゃ難しいんですよ。空き家をひとつとっても、いろいろな原因があるんです。例えば仏壇があって移動できないとか、相続人が誰か分からないとか、ごみ屋敷みたいになっているとか、何か思い入れが強すぎて渡せないとか、いろいろなパターンがあるので、かなり寄り添って空き家は流通させていかなきゃいけないんですけれども、行政がやると大体補助金を出すことしかできないんですよ。「仏壇撤去するんだったら補助金出します!」とか、そのぐらいしかできないので、全然動かないことが多いんですけれども、これを僕らは寄り添ってくれるプレイヤーと一緒にやろうということで、寄り添いの人たちに神戸市の肩書を与えたんですね。「空き家おこし協力隊」という名前をつけたんですけれども。
それで民間の人たちが1軒1軒、いろいろなところで勝手にプレイヤーとして空き家を起こしていく、それに対して神戸市は報奨金を払うみたいなパターンを作ってみたんですね。趣味で空き家を動かす人が出てきたり、空き家を動かしている人もお金をもらえるし、神戸市の肩書ももらえるということで、結構進んだ事例です。
こういったコーディネートの仕方というのをいろいろ工夫しながらやっていくのは、すごく楽しいですね。これが別に全国で使えるかどうかわからないし、神戸市もこれからこれで解決するかどうか分からないですけれども、1万人が空き家おこし協力隊に指定してもお金かからないんですよ。成功報酬なので。1万人が1軒ずつで1万件空き家が動くみたいな仕組みなんですけれども、そういったいろんな行政の事情、それから民間の事情、それから市民の方の事情みたいなのを組み合わせると、何か新しい動きができてくるみたいなことを、今回の埼玉版スーパー・シティプロジェクトの中でも、新しい自治体と民間企業の組み方みたいなのができるとおもしろいなというふうに思っています。
ということで、1個だけ事例がしゃべれたのでよかったんですけれども、これで私の方は講義を終わります。