インタビュー・コラム
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掲載日:2024年12月26日
武田 直之(たけだ ただゆき)さん
プロフィール
埼玉県川口市在住。3児の父。
2005年、NTTドコモ入社。以来システムエンジニアとして、オンラインショッピングサイトやスマートフォン向けサービス、食領域における新規事業開発に従事。現在はサービスデザイン部にてインターネット接続や認証サービスに関するシステム開発を担当。
・ベビーサイン パパアドバイザー
・地元学習ボランティア「スタディルーム」講師
・小学生向けプログラミング講師
コミュニケーションサービスへの興味から入社。リモートワークで育児両立
今の会社には新卒で入りました。学生時代は情報処理を専門に勉強していました。当時は電話やメール、絵文字などを使ったコミュニケーションをサービスにしている会社が珍しかったこともあり、「新しいコミュニケーション文化を創造する」という企業理念に共感して入社しました。その後、システムエンジニアとして様々なサービス開発に携わり、現在は、スマートフォンをインターネットにつなぎ、多様なサービスをお客様に届ける仕組みに携わっています。
現在、9歳、6歳、3歳と3人の子どもがいます。妻が出産するタイミングで計3回育休を取得し、2016年から現在までリモートワークを行っています。仕事がIT関連ということもあり、業務の調整をしながら在宅勤務ができる環境が整っていて助かっています。
妻は1人目の子を妊娠中に離職し、現在は個人事業主として活動しています。家事や育児は分担していますが、妻の方が負担が大きいと思います。休みの日の分担は半々くらいですが、妻が仕事の日は私が家事育児を担当しています。
育児教室参加がターニングポイント。自分のスキルを地域に還元
妻が1人目の子を出産後、夫婦で「ベビーサイン」教室に参加しました。これが大きなターニングポイントでした。ベビーサインとは、まだ言葉が話せない赤ちゃんと手話やジェスチャーを使って話をする育児法です。その取組に共感し、2013年に日本ベビーサイン協会認定資格「ベビーサイン パパアドバイザー」を取得しました。同時期に、妻も「ベビーサイン 認定講師」の資格を取得しています。
パパアドバイザーとして県内各地でベビーサイン体験会を開いているうちに、会場である児童館の館長と懇意になり、通ってくる子どもたちの境遇が多様であることを知りました。家庭教師経験があった私は、学習支援を提案しました。自習室のような形で、無料で参加できる学習塾です。子どもたちは個々に宿題やドリルをやり、分からないところを中心に教えてあげるというスタイルで、2016年から学習ボランティアとして月2回活動しています。
本業がIT関連ということもあり、学習支援と自分のスキルを掛け合わせて何かできないかと考えていたところ、文部科学省で小中学生のプログラミング教育が提唱されるようになったことをきっかけに、小学生向けのプログラミング講座を始めました。参加者は無料、私は施設から講師料をいただく形で開催しています。
女性は出産や育児でキャリアを中断されてしまうことが多いですが、児童館や公民館で様々な講座が開かれているのを見て、個人のスキルを地域や身近な人に還元できたらいいと思いました。自分だったらどのようにできるか、と考えて具現化したのがこれらの取組です。
社内における男性育児休業のロールモデルに
9年前、1人目の子を妊娠していた妻が切迫早産で入院をして、私は病院に通いました。働きながらの看護は大変でしたが、そのときに子どもが生まれてからを想像して、「これは、仕事を休まないと成り立たない」と思ったのです。
会社に育児休業申請をするに当たり、どの段階で何をするかが書かれたToDoリストとガイドラインがダイバーシティ推進室から提供されていましたが、実際にはとても心細かったのを覚えています。男性が育休を取得した事例を聞いたことがなかったので、上司に相談しながら手続きを進めました。その後、ダイバーシティ推進室で、両立支援のためのワーキンググループが立ち上げられた際、私もそこに参画し、パパママコミュニティづくりを行いました。
今では、同じ部署の男性社員から育児休業について相談を受けることが多くなりました。職場には子育て現役世代が沢山いるので、日常的な子育ての悩みについては親しいメンバー同士で相談しているようです。育休取得については私の経験が次のパパたちに生かしてもらえて、嬉しいです。
不測の事態に備え、普段から状況を伝えて理解を得る
妻が妊娠中に体調を崩した時期は、とても大変でした。妻の看護と子の面倒と家事と仕事を全て背負うことになるからです。そういった時期は何度かあり、その都度大変な負担を感じました。
今は今で、テレワークをしていると別の悩みがあります。平日の日中は私が2階、妻と子どもたちが1階で過ごしていますが、騒がしいと仕事に集中しづらいですし、深刻な打ち合わせをしている最中に子どもが2階に上がってきて「おむつ替えて」「トイレに行きたい」などと話しかけてくることもあります。プライベートと仕事を完全に分けるのはなかなか難しいです。
社内には単身者もいますし、既婚者でも子どもがいない人もいるので、私が置かれている状況は、他のメンバーには想像しにくいかもしれません。「子どもが3人いて大変ですね」と言われますが、「どう大変か」はできるだけ言葉にして周りに伝えるよう努めてきました。
自分が置かれている状況を普段から発信することで「どうして急に休むのか」「なぜ18時以降の打ち合わせに出られないのか」ということに理解が得られるよう、伝える工夫をしています。
職場は上司、プライベートは「パパ友」との共感が助けに
仕事と家庭とのバランスを取るために、相談相手として大きかったのは、会社の上司の存在です。
妻が3人目を妊娠し切迫流産で絶対安静となったときの上司は女性で、ご自身が妊娠中の入院経験をもたれていたので、私の状況を非常に理解していただき、助けられました。
今の上司は男性で、入社以来の先輩です。つき合いが長いこともあり私の考えをよく理解してくれます。ご自身も2人のお子さんがいるので事情を察し、「無理をしないように」と声をかけていただいています。
プライベートで助けてくれるのは、パパ友です。ベビーサイン教室に通っていたとき、私たちと同様に夫婦で参加している家族がいて、パパ同士のネットワークができました。最近はコロナ禍で行けていませんが、たまに集まってお酒を酌み交わし、悩みを打ち明けあっています。年代が同じ子どもの成長やママとの関係など、共感してもらえて気持ちが軽くなります。
子どもは夫婦のイノベーションの成果。期間限定のゴールデンタイム
私は関西生まれで、子どもの頃は共働きの両親と祖父母がいる家で、3人兄弟の末っ子として育ちました。保育園の送迎を祖父母がしてくれたり、姉が相手をしてくれたりという恵まれた環境でした。子育てを誰がやるという役割分担について、あまり固定観念がなかったのかもしれません。
自分が埼玉で子どもを育てることになり、幼少期の自分の環境と比較して圧倒的に大人の手が足りないと感じました。男性が育児休業を取った例が少なくても、「休まなければ」と思ったのは自然の流れだったと思います。
また、私たち夫婦は価値観が同じ部分が多い一方で、私は細かくまめな性格で、妻は直感的な性格といった具合で、性格が異なる部分もあり、バランスがとれていると感じています。夫婦にも個性があって、子どもはその色の掛け合わせで多様な色合いを見せてくれます。3人の子どもたちは、いわば私たち夫婦のイノベーションのようなものです。育児にこのようなイメージを持っているので、子育ての時間はかけがえのない期間限定のゴールデンタイムだと思っています。取り逃すともったいないし、日々発見がある。もっと楽しみたい。そんな気持ちが大きかったので、父親が育児にかかわることに特別な理由は必要ありませんでした。
私にとって、育児と仕事の両立は、子育てを楽しむための手段の一つです。それは働く妻をサポートするという側面もありますが、私にとって当然のことです。時が経って親の介護をするときが来たら、きっと同じような目線で介護との両立という手段を考えると思います。
自分にしかできない役割を楽しんで欲しい
子育ては、母親はもちろん、父親にとっても大変だと思います。人それぞれ置かれている状況は違うと思うので、一概にがんばれとは言えません。ですので、是非楽しんで向き合ってくださいと伝えたいです。今しかできない貴重な経験。母親には母親にしかできないこと、父親には父親にしかできないことがあると思うんです。
私の場合は実家が遠いですが、日頃から周囲の手を借りられる環境であれば頼った方がいいと思います。頼りたくないと思えばもちろん頼らなくてもいいと思います。そして、がんばらなくてはいけない、ということもない。どんな状況でも、「子育ては今しかない」と思って、楽しんで欲しいです。