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掲載日:2020年7月10日

令和2年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(杉島理一郎議員)

教育政策の「検証と反転」について

Q  杉島理一郎  議員(自民)

3月で退任された小松前教育長の後を受けて就任された現場を知る高田教育長には、ぜひとも「検証と反転」で本県教育の立て直しに御尽力をいただきたいと思っております。
さて、社会的な議論となった9月入学への移行については、積極的に議論をリードした他県と異なり、本県が教育改革やグローバル教育に消極的な印象も与えてしまったように思います。ぜひ今後、本県も真剣に議論していただきたいと思いますが、一方でこの課題の本質に向き合うなら、9月入学制だけに捉われず、本県がグローバル教育を推進していくために取り得る方策はあると思っております。
その一つが、国際バカロレア認定校の推進であります。昨年12月の一般質問で、藤井議員が大阪市の事例を挙げて、本県も推進すべきだと投げかけたのに対し、小松前教育長は財源などの問題から更に研究を進めていくと後ろ向きな答弁をされています。また、導入は難しくとも、そのエッセンスを抽出して英語教育に生かしていきたいとも語られておりましたが、現状で現場に変化は見られません。
教員になったのは高校時代のすばらしい英語教師との出会いがきっかけであるという高田教育長には、ぜひとも課題を克服して積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、国際バカロレア認定校の推進について、教育長の見解を伺います。併せて、導入するまでの間、どのようにそのエッセンスを反映させていくのか、お伺いいたします。
また、もう一つの取り得る方策が単位制などの活用です。実は日本においても1年なら大学への飛び入学が可能です。また、高卒認定試験を受けることで、3月の卒業を待たずとも海外の大学へ進学することも可能になります。現在では留学の期間も日本の単位として認められており、高校生での留学がしやすくなっておりますし、単位制を積極的に活用すれば、より留学に合わせた学び方も可能であると考えます。
また、本県では、グローバルリーダー育成プロジェクトのように高校生が留学や海外進学を目指すきっかけとなるような良い事業も展開しており、今後は更なる拡充やPRが求められていると感じております。
そこで、本県には大学進学重視型の単位制高校が導入されておりますので、例えば留学重視型の単位制高校を設置して高校生の海外留学を積極的に促せば、埼玉県がグローバル教育の先進県であると全国に発信できるのではないでしょうか。単位制の吹上秋桜高校を初代校長として立ち上げられた高田教育長の御経験を今こそ生かすときではないかと考えますが、単位制も活用したグローバル教育への可能性について、教育長のお考えを伺います。
次に、高等学校入学者選抜の課題についてお伺いいたします。
今、特に中学3年生は入試に対して大きな不安を抱えていることと思います。他県では学力検査の出題範囲を一部削除すると既に発表されており、本県も1日も早い公表が求められております。その際、文科省通知では最終学年では学校教育法に定めた標準授業時間数を下回っても良いとされておりますので、ぜひこれを積極的に運用して出題範囲を縮小し、その範囲に合わせた授業とするよう方針を出すべきだと思います。
また、併せて第2波で更に休校となった場合も見越して、例えば休校期間が1カ月ならここまでと、期間に応じた出題範囲の縮小を事前に取り決めて、今回、同時に公表しておくべきだと考えます。
そこで、本県としては第2波まで見据えた入試の出題範囲をどのように検討し、7月上旬に発表するつもりなのか。また、文科省通知に基づき中学3年生の学びについて柔軟に運用することについてどう考えるか。教育長の見解を伺います。
次に、現行の入試制度の課題についてお伺いいたします。
本県は、平成24年から推薦入試や前期・後期制の入試制度を改め、入試日を後ろにずらして一回だけの入試を採用しておりますが、これは県立高校にとって都合の良い制度になってはいないでしょうか。それもあってか、一部の中学校では必ず入学するという前提がなければ、県立高校に出願できないような進路指導の実態があるようです。
実は県立高校には受験する前に取り下げることのできる事前取消しという制度があります。例えば私立高校が第1志望で県立高校が第2志望の場合、第1志望の私立高校に合格すれば、県立高校への出願を取消しすることができます。
しかしながら、事前取消しには中学校長の許可が要ることも影響しているのか、約半数が私立に進む中で過去四年間の事前取消し件数は平均56件、受験者数の約0.13%しかありません。県立高校からの何らかのプレッシャーがないのであれば、それは制度の不備や運用上の問題があるのではないでしょうか。私立でも公立でも、生徒が夢や希望を持って志望する進路に寄り添ってあげられるか、それを制度としてもバックアップしてあげられるかが重要だと考えます。
そこで、こうした実態もあることを踏まえて、1回募集の入試制度や事前取消しが事実上許されないような高等学校入学者選抜の在り方が本当に生徒のためになっているのか、今後の制度の見直しなども含めて、教育長の見解を伺います。

A  高田直芳 教育長

まず、国際バカロレア教育認定校の推進と、どのようにバカロレア教育のエッセンスを反映させていくかについてでございます。
県では、これまで、国際バカロレア教育について研究した成果を踏まえて、その理念に通ずる探究型学習、教科横断型の学習などを、スーパー・グローバル・ハイスクールに指定された学校を中心に展開してまいりました。
また、今年度から、英語を母語とする外国人を、本採用教員として和光国際高校に配置し、他教科と連携した授業実践に取り組んでまいります。
こうした取組は、国際バカロレア教育の手法に通じるものであると考えておりますので、このようなエッセンスを本県の教育活動に反映させてまいります。
私は、生徒が互いの多様な文化を認め合いながら、探究心やコミュニケーション能力を育むという、国際バカロレアのプログラムの教育理念に共感をいたしております。
教育長として、私なりに国際バカロレア認定校の設置の可能性について、幅広く検討してまいります。
次に、単位制も活用したグローバル教育への可能性についてでございます。
本県では、生徒の進路選択に合わせて、様々な選択科目が用意されている単位制高校がございます。
こうした学校では、自身の興味・関心に応じた科目選択を生かし、自らの可能性を開くことができ、在学中に留学したり、卒業後に海外大学へ進学している生徒もおります。
また、単位制高校の生徒に限らず、学校独自の海外派遣プログラムや、県のグローバルリーダー育成プロジェクトに参加し、留学や海外大学への進学を目指す生徒もおります。
令和元年度は、19校で446人の高校生が学校独自の海外派遣プログラムに参加し、実施後のアンケートでは、77%の生徒が留学を希望すると答えております。
また、県のグローバルリーダー育成プロジェクトに参加した40名の生徒のうち、93%が留学に興味を持ったと回答しております。
今後、単位制なども活用して、生徒の興味・関心に応じた教育を展開し、留学や海外大学への進学にチャレンジする生徒を、幅広く増やすよう取り組んでまいります。
次に、第2波まで見据えた入試の出題範囲をどのように検討し、7月上旬に発表するつもりなのかについてでございます。
高等学校入学者選抜は、生徒のその後の生活に大きな影響を与える重要なものであると考えております。
国からの通知では、臨時休業の状況などを考慮して、出題範囲や内容、出題方法について必要に応じて工夫するよう求めており、県としても、受験生一人一人が安心して受験に臨めるよう、柔軟な対応を図る必要があると考えております。
このため、各市町村における教育活動の再開状況などを確認した上で、学力検査における出題範囲や、受験生にとって必要な配慮について、7月上旬を目途に公表できるよう鋭意検討を進めております。
なお、今後、長期間の臨時休業が再度必要となった場合につきましては、学力検査等の更なる配慮について適切に判断し、対応してまいります。
次に、文科省通知に基づき、中学校3年生の学びについて柔軟に運用することについてどう考えるかについてでございます。
今年度は、例年と比べ、短い期間での学習となり、かつ、中学3年生は年度内に指導を終える必要がございます。
こうしたことから、授業時数の確保に努めつつ、ICTの活用や補習などの取組を柔軟に行い、子供たちの学びを充実させることがより一層求められると考えております。
各学校におきましては、時間割編成の工夫、学校行事等の精選、夏季休業の短縮等により授業時数を確保するとともに、よりきめ細かい指導を実施することで、中学3年生が年度内に学習内容を学べるよう、最大限の努力をしております。
このような取組をしっかりと行うことで、中学3年生の学びの充実を図ってまいります。
次に、1回募集の入試制度や事前取消が事実上許されないような入試制度のあり方の見直しについてでございます。
県では、平成24年度入試から、それまで前期、後期の2回の募集であったものを、1回の募集になるよう入試制度を改正しております。
この改正は、入試期間を短縮することで中学3年生の授業時数を確保し、確かな学力の育成を目的としたものでございます。
入試制度は、社会情勢の変化や、子供たちに求められる資質・能力等によって、必要に応じて改正すべきものであると考えておりますので、今後の学校を取り巻く状況を注視してまいります。
また、中学校の進路指導においては、生徒一人一人の希望する進路が実現されるよう、丁寧な指導を行っていく必要がございます。
事前取消が事実上許されないとの議員の御指摘につきましては、入学者選抜の手続が十分に周知されていないことによるものと考えられます。
公立高校入試の実施要項には、事前取消の手続が明記されておりますので、今後、改めて市町村を通じて中学校に周知徹底するとともに、受験生や保護者の皆様に、仕組みを御理解いただけますよう、しっかりと取り組んでまいります。

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

お問い合わせ

議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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