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掲載日:2019年6月26日
Q 浅野目義英議員(民進・無所属)
4月22日に、2016年版中小企業白書が公表されました。その中で、「中小企業は、国内市場の縮小、人材不足、設備の老朽化など様々な課題に直面しており、稼ぐ力を強化していく必要がある」と記されています。
稼ぐ力、これを手の中に収めるためには、企業家は投資をしようとします。そして、この投資マインドによって刺激をされる様々な支援が必要となると思われます。例えば設備投資すれば、即時償還、償却してくれる、また税額控除をしてくれる、参入の機会拡大を許されるなどです。つまり、税制の改革と規制の緩和が必要だということです。また、道路を造る、新幹線を走らせるなどの戦略的投資も必要となるでしょう。これらについては、各位御承知のとおり、政府が大きな力を持っています。政府の力に負う部面が多いわけです。
地方自治体は何をやればいいのか。法規制等の対応、補助金メニューの紹介だけでいいとは私は思いません。
埼玉県では、経営革新計画承認制度などの仕組みなどで、挑戦する企業を親身に応援をしてきました。正に、中小企業の稼ぐ力を高めるために企業の経営革新を支援し、多くの成功例を導いてきたのです。その上で更に、ナノカーボン、医療イノベーション、ロボット、新エネルギー、航空・宇宙の5分野を中心に、先端的な研究成果と企業の優れた技術を融合させて、新たな成長産業を作り出す先端産業創造プロジェクトを展開しています。この取組を進めるに当たり、国内最大級の研究開発機関である産業技術総合研究所、また、新エネルギー産業技術総合開発機構と埼玉県との間で、先端産業育成に関する協定を締結しました。関係機関との協力関係を構築したことは、セーフティバルブになっていると思われます。
埼玉県は、各分野のノウハウを提供する、参入企業の投資を軽減するための多様なメニューの補助金を用意するなど、先端分野に挑戦する企業を支援し、大きなチャンスをこれまで与えてきました。今や、多くの中小企業が成長分野への参入を試みており、企業の開発競争は日ごとに激しさを増しています。
ほかの都道府県の様子を見ても、ロボット分野では、4月に東京都が東京ロボット産業支援プラザを開設しました。医療分野では、福島県がふくしま医療機器開発支援センターの開所を準備しています。各自治体がしのぎを削って地元企業の支援を拡大しようとしています。埼玉県では、いち早く先端産業の支援に取り組み始めましたが、今後も県内中小企業とともにチャレンジを続けていくべきであると私は思っています。
知事に3点伺いたく思います。
1つ目、先端産業創造プロジェクトは3年目を迎えました。進捗状況、これまでをどう評価しているのか。そして、28年度補助金メニューの執行状況も見つめながら答えてください。
2つ目、今後、県内中小企業が開発競争に勝ち残るために、先端産業創造プロジェクトの取組をどのように加速させていくつもりか答えてください。
3つ目、具体的にユーザーとメーカー側がリンクできる場など作るべきではないでしょうか。ここが一番足りないのではないでしょうか。
以上、知事に答弁を求めます。
A 上田清司 知事
先端産業創造プロジェクトの進捗状況はどうか、どう評価しているかについてでございます。
先端産業創造プロジェクトを成功に導くには、本県に人材・技術・情報を結集し、県内中小企業が先端産業分野に参入しやすい環境をつくることが重要だと考えました。
このため、これまでに有識者で構成する研究サロンや事業者、研究者が集まる交流会などを60回以上開催し、参加者は県外の方も含めて延べ3,500人を超えております。
中でも、ナノカーボン分野の先端技術交流会では参加者の約半数が県外から来ておられます。
着実に本県に人や情報の集まる流れができていると思います。
こうした人や情報を集める取組を進めるとともに、将来の稼ぐ力につながる新たな製品化、事業化に向けた具体的な研究開発プロジェクトを推進しているところです。
先端産業創造プロジェクトを開始して3年目になりますが、幾つかの成功事例が現われ、目に見える形になってまいりました。
例えば、新エネルギー分野では世界で初めてマグネシウム蓄電池の実用化に向けた開発を県産業技術総合センターが成功させ、製品化に向けて電池メーカーや県内中小企業と共同開発チームの立ち上げを進めています。
医療イノベーションの分野では、さいたま市内の企業が内視鏡手術の際に医師が裸眼で臓器の立体映像を見ることのできる3D内視鏡システムを開発し、海外メーカーなどとの商談が大詰めを迎えていると聞いております。
このほか、次世代住宅向けの地中熱ヒートポンプ技術や高断熱ガラスフィルム技術、リハビリ支援ロボット、ナノカーボン配合の自動車部品も開発が進んでいます。
また、先端産業分野への企業の参入意欲は年々高まっており、今年度の企業向け補助金が約6億円の予算枠に対し、約11億円の申請があり、予定件数32件を大幅に超える59件の応募がございました。
このように先端産業創造プロジェクトは順調に進んでいるものと評価しております。
次に、今後、県内中小企業が開発競争に勝ち残るため、先端産業創造プロジェクトの取組をどのように加速させていくかでございます。
中小企業が新たな成長分野へ参入するには、技術や開発に関する知識を持つ人材の育成が何よりも重要でございます。
そこで、今年度からは人材育成について埼玉大学などと連携し、ナノカーボン分野とロボット分野で実践講座を7月から始めるところでございます。
また、中小企業が単独で先端産業分野に参入するのは難しいと言われていますので、今年度は中小企業が複数で連携して参入障壁を乗り越える取組も行ってまいります。
例えば、航空・宇宙分野では、加工、表面処理などを行う複数の中小企業が共同で大企業から受注できるチームづくりを進めており、間もなく2つのチームが立ち上がります。
また、医療イノベーションの分野では、ものづくり企業と医療機関、医療機器製造販売企業の三者を連携させて「売れる医療機器」の開発を進めてまいります。
今年度はプロジェクトの3年目になりましたので、「成果の見える化元年」として、県内中小企業と一緒になって先端産業創造プロジェクトを加速させてまいります。
次に、具体的に、ユーザーとメーカー側がリンクできる場などをつくるべきではないかについてでございます。
御案内のとおり、日本のメーカーは高い研究開発能力や技術力を有している反面、製品化や事業化の段階で必ずしもユーザーのニーズに応え切れず、諸外国のメーカーに後れを取ることもございます。
このため、メーカー側がユーザーのニーズをくみ取り、製品開発に生かす場をつくることが重要になります。
例えば、介護施設では人手不足など喫緊の課題を抱えており、その解決策として職員の代替や補助を行うロボットの導入が待ち望まれています。
しかし、現状のロボットは必ずしも現場のニーズに合っていなかったり、導入コストが高いなどの理由で、思うように導入が進んでおりません。
こうしたことから、介護現場のニーズを踏まえたロボットの導入を支援する「埼玉県リハビリ・介護ロボット研究会」を設置し、正に本日実はキックオフミーティングを開く予定にしているところです。
同じように医療イノベーション分野でも、企業が医療現場のニーズを聞き取る見学会を開催しており、今年度も2施設で実施する予定でございます。
このような取組の充実を図って、中小企業が優れた技術力を生かしてユーザーのニーズに応じた売れる製品を開発できるように後押ししていきたいと考えています。
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