トップページ > しごと・産業 > 産業 > 創業支援 > 埼玉県の起業家インタビュー「想いをカタチに」 > 第5回:荒木牧人さん(株式会社80%代表)
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掲載日:2022年3月25日
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未来をより素敵なものにしようとチャレンジし続ける埼玉県の起業家や起業家スピリット溢れる経営者の方々にお話を伺うインタビュー特集「想いをカタチに」。
第5回は、空き家・空き店舗・遊休不動産のリノベーションでまちづくりに貢献する、株式会社80% 代表取締役 荒木牧人さんです。
さて、荒木牧人さん流「明日を拓く」ヒントとは?ぜひご覧ください!
★インタビューは平成29年11月に行ったものです。
――株式会社80%立ち上げまでのお話を聞かせてください
僕は、建築士という職業柄と、過去に自治会長を務めていた経験からリノベーションによるまちづくりに興味を持ちました。新しいモノを作ることよりも、今あるモノの良さを再発見して面白いものに変えていく「リノベーション」に魅力を感じ、いろいろなスクールに参加しました。学んだことは多かったのですが、いざ地元川越で何をやるか考えたとき、仲間もいないし、どう進めていけばいいのか分かりませんでした。
そんなときに、川越でもまちづくりの動きが始まりました。市が主催のシンポジウム、空き家を探索するまち歩き、そして空き家再生やエリアの定義を考える「まちづくりキャンプ」です。80%のメンバーである鈴木とは、まち歩きで出会いました。川越のまちを歩きながら、当時空き家だったある長屋を見つけて、「あの建物すごい良くなかったですか!?」という僕の言葉に、唯一反応してくれたのが鈴木でした。その後「まちづくりキャンプ」が開催される際に、一目ぼれしたその空き家が対象物件であることを知り、迷わず参加しました。キャンプでは、参加者がチームになって、リノベーションによる事業プランを作成し、最後に空き家のオーナーにプレゼンを行いました。
――キャンプに参加した後は、どうされたのですか?
空き家のオーナーとも話がまとまり、鈴木やキャンプで出会った仲間たちと80%を立ち上げ、平成29年6月に、リノベーションした建物で「すずのや おやさいとくだものとお酒と」(日本酒バルのお店)をオープンしました。工事途中段階でコンセプトに共感してくれた、川越で展開しているコーヒースタンド「glin coffee」(グリンコーヒー)も同日中にオープンしました。オープンしてまだ半年ですが、「昔からの川越のまちを大切にしながら、さらにまちを面白くしていきたい」という僕たちの思いに共感してくれたたくさんの人たちが、「すずのや」の常連になってくださっています。神社の宮司さんやまちの顔役さんも来てくださり、昔からまちを知っている人たちにも受け入れられてきたのかなとうれしく感じています。お店の開店は14時からなのに、13時半には近所のおばあちゃんが2人、手押し車を押しながら連れ立ってきてくれることもありました(笑)。
――会社名「80%」の由来を教えてください
どのような「コンセプト」を持って、川越のこの場所で、お店を始めるかを考えました。
高度経済成長期に住宅を始めとする建物が足りず、多くの建物を築いてきた日本。建物を築く勢いは人口減少期に入った今も、威力を減少させながらも続いていますが、結果的に目の前に広がるのは、多くの空き家・空き店舗・空きスペースといった現状です。
日本は、とかく頑張ってきました。成功と失敗、勝ち組と負け組、10か0かの世界。でも僕たちは、時に勝っても負けてもいい。時にジャンクフードだって食べたい。時に変な顔して笑われたい。10か0でなくていいのではないだろうか。
たくさんの人が、一生懸命に大切に作ってきた街、その街を少し力を抜いて楽しくできないか、力の入れ具合を「80%」で。そんな想いを込めて、80%という名前を付けました。
――今後の展望を教えてください
ここは観光客が集まるエリアと、地元の人たちが生活するエリアのちょうど間にある絶妙な場所なんです。「すずのや」がある交差点は、今は特に名前が付いていませんが、いずれは「すずのや通り」みたいに呼ばれて、まちの大切な風景の一つになれたらいいなと思っています。現代は音楽やお酒などのコンテンツを世代を超えて楽しめる時代だと思うので、そういった世代間交流の場所にもなれたらうれしいです。「すずのや」では古いレコードをかけるのですが、若い人と年配の人が音楽を通じて語り合っている風景も見ることができるんですよ。
80%の活動を知ってもらった人に、「あの物件もどうにかできないか?」と言われることが増えてきました。気持ちはとてもよく分かりますが、僕たちがすべての建物を守れるとは思っていません。それよりも、同じような思いを持つ、特に若い人たちが増えてほしいと思っています。人が変われば、リノベーションに個性が出て、僕たちとは違う面白いことが生まれると思っています。これからの「まちづくりキャンプ」に参加する人たちは、僕たちの活動を見てくれている人たちだと思うので、どんな人たちがどんな思いで参加するのか、とても楽しみです。
――ご家族のことを教えてください
妻と4人の子どもがいます。妻のことは命の恩人だと思っています。80%立ち上げより前に設計事務所を立ち上げたのですが、一時期、僕の収入が減ってしまったことがありました。そんな中、妻は13年のブランクを乗り越えて、看護師の仕事に復職し、家族を支えてくれました。先日、初めて家族全員でディズニーランドに行くことができました。実は、それまで子どもに、むさしの村(加須市の遊園地)を「埼玉のディズニーランド」だよと教えていました。むさしの村もとても楽しい遊園地ですが、本物のディズニーランドに行ったときには、妻と二人で泣きましたよ、ここまでくるのにいろいろあったねって。
子どもたちには、いつもお金の実践的な話をします。例えば、子どもが僕の仕事を手伝ったとき、「この仕事で一日○○円くらいもらえるんだよ、今日はすごく頑張ったね!」とか。子どもたちは、両親が働いて家庭を支えていることを分かってくれるようになりました。僕が「お金足りない」とつぶやいたら、「この1,000円使って」と言ってくれたこともあります。
――最後に「リノベーションによるまちづくり」にかける思いについて教えてください
リノベーションは建物だけのことではありません。ひと、もの、自然などの特徴を捉えて、それをどう活かしていくか、ということです。使えないものを、少し変えたら使えるようになるかもしれません。まちには、リノベーションの素材となる宝物があふれています。僕はいつもまちを歩きながら、「ここがこんな風になったら楽しいなぁ、ベンチ置いたら素敵だなぁ」とか、妄想しながら歩いています。
「頑張りすぎず、生き方を柔らかく、ちょっと楽しく」それが、僕たちの考える、みんなが幸せなリノベーションのまちづくりです。
インタビューはいかがでしたか?今あるモノの良さを再発見して新しいものに変えていく。日常生活のふとした気付きをカタチにする。何かしたいことのある人、チャレンジしてみたいことのある人にとっては、背中を押してくれる言葉の宝庫だったのではないでしょうか。
「未来へと挑み続けるチャレンジャー」の皆さんから学ぶ、「明日を拓く」ヒント。これからも、インタビュー特集「想いをカタチに」をどうぞお楽しみに♪
平成30年1月10日開催の第20回埼玉ベンチャーピッチに、株式会社80%が登壇。
県では、成長意欲が高く新たな取り組みに挑戦するベンチャー企業を支援する「埼玉ベンチャーピッチ」を民間企業や支援機関と連携して開催しています。
「埼玉ベンチャーピッチ」は、ベンチャー企業が、大企業・金融機関・公的団体などに対してプレゼンを行うビジネスマッチングの場であり、新たな取引・連携、新たな商品・サービスを創出することを目指しています。
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