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掲載日:2024年9月19日
「無題」
吉川 健司/ YOSHIKAWA Kenji
社会福祉法人昴 デイセンターウィズ
みなぎるように色彩が溢れる画面の中、どこかを真っ直ぐと見つめる2人の女性。
見た人の心まで掴んでいきそうなほどに圧倒的な求心力を持つこの作品は、「絵を通したコミュニケーション」の中で生まれた。
「今日は何を描こう」「ペンを取り替えてくれ」「鉛筆は尖っていて欲しい」
そんな要求と応酬が、施設職員の方々と言語を介さず行われていく。
コミュニケーションを大切にするあたたかい空間で、のびのびと描かれたこの作品からは、強さの中に確かな温もりを感じられる。
また、この作品は、造形、塗り方、配色、何もかもが個性的で魅力的だ。
特に、何とも形容しがたい顔の造形は、吉川さんの作品全体に共通する特徴であり、ストロングポイントだといえるだろう。
吉川さんは、創作途中、人物の写真を参考にしながら、スラスラとペンを動かしていた。
迷いのないその筆さばきからは考えられないほどに、完成品は人物の持つエネルギーまでも捉えているようで、圧巻である。
配色センスに関しても格別だ。創作中、置かれた15色のペンの中から直感的に選び取られた色はどこか規則的でもあり、
2人の放つオーラのように背景に広がりながら、モチーフの人物たちをさらに引き立てている。
見た人の心まで掴んでいきそうなほど圧倒的な求心力。そしてその背景にある温かさ。
どれをとっても魅力的な作品だ。
埼玉大学教育学部学校教育教員養成課程2 年 丸子玲奈