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掲載日:2024年8月22日
「無題」
栁万喜子 / YANAGI Makiko
埼玉県社会福祉事業団あげお所属
皆さんはこの作品を御覧になって、どのように感じるだろうか。私には、台風や雲、あるいは海や波を表現しているように感じられた。
作品を見ると、まず、濃い青、水色、そして白が目に飛び込んでくる。
その下には、黄色のマーカーや赤色のボールペンで描かれた、いくつもの「丸」がある。
これらの丸い形を基本にして、絵画全体に、絵の具を指で伸ばしながら塗り重ね、色鮮やかで、丸みを帯びた動きのある作品に仕上げていく。
栁さんが丸を描くのは、心の安定を示しているという。
施設職員からは、栁さんが丸を描いているときは、気持ちが落ち着いていて、集中力も長く続くとのお話があった。
重ね塗りされている青色の絵の具は、指先と指の腹を使い分けて、力強く描かれており、作品全体にダイナミックなイメージを与えている。
また、青色とともに用いられている白色の絵の具が、明るさと広がりを与えるとともに、2色が複雑に混ざり合いながら、
色合いの異なる様々な水色を生み出し、作品に彩りと深みを加えている。
栁さんは、テーマを決めずに思うがままに描いているそうだが、青と白、そして2色から生み出された水色が、
作品全体に様々な表情をもたらし、どれもとても美しい。
鑑賞者の想像力をかきたて、多様な捉え方ができる自由さを持った作品である。
埼玉学園大学子ども発達学科3年 大越 葵