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掲載日:2023年5月18日
「ハナ」
永井洋一 / NAGAI Yoichi
社会福祉法人皆成会 光の園所属
施設の庭に咲いていた花が描かれている。
この絵は数ヶ月間もの間、自分の納得がいくまでとことん描き込んだそうだ。そこには観察し続けて見えてきた色や注目した色、時間が何層にも重ねられている。
私は、複雑に組み合わさり重ねられた色彩に、春と夏のあいだの早朝の少しひんやりとした空気と暖かく柔らかな日差しを感じた。
インタビューの間、永井さんは一心不乱に描き続けていた。
描いていた作品はピンク色のシクラメン。数ヶ月前から描き続けているそうだ。画面からはピンク色が消え、強く目に入るのは黒である。画面が黒くなっても、描いているものは当初と変わらない。そこには永井さんのシクラメンが表れていた。
永井さんはモチーフの色や形などをただ表面的に追いかけるのではない。色と時間を積み重ね、より奥深くまで追いかけていると感じた。私が見ている世界とは何か、私の描いている現実は果たして本当に私が見ている世界なのか。永井さんのこだわりと時間が詰め込まれた作品を観ると、見ることとは何か、描くこととは何かについて改めて考えさせられる。
武蔵野美術大学造形学部油絵学科1年 伊藤 晴香