「ハナ」 永井洋一

TITLE

「ハナ」

ARTIST

永井洋一 / NAGAI Yoichi
社会福祉法人皆成会 光の園所属

Review

　緑、赤、青、黄色、と様々な線が無数に描かれた作品をじっと見ているといつの間にかぐいっと作品の世界へと引き込まれる。そして、自分自身が線と線の間に挟まれている気分になる。

　机の上に置かれた花を見て描き始めた本作「ハナ」は、鮮やかな色から始まり上にどんどん様々な線が重なっていったそうだ。その結果、左から右へ流れる細かい線が大量に置かれ、水面のように美しい画面になっている。

　私は、永井さんと同じような手段で作品を描く時がある。

　それは、上から重ねることで画面に深みが増して気持ちが乗っていく様子を楽しめるからだ。永井さんの作品からも楽しそうな様子が伝わり、永井さんの中に残った美しい花の様子がペン一本一本にのっている。

　永井さんは週に2回作品を描く時間手を止めない。マーカーを用いて線を重ねていく作業の間、真剣にペン先を見つめる。

　大量の線によって構成される本作は、永井さんの「描く」という行為を楽しむ気持ちから生まれたのだろう。

武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科1年 飯塚 叶子