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発表日:2024年3月11日16時
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部局名:教育局市町村支援部
課所名:文化資源課
担当名:指定文化財担当
担当者名:須田
内線電話番号:6981
直通電話番号:0488306981
Email:指定文化財担当
埼玉県教育委員会では、埼玉県文化財保護審議会(会長:菊池健策)の答申を受け、3月11日開催の教育委員会において県指定有形文化財の新規指定4件について審議し、これを決定しました。3月15日(金曜日)の県報告示により、正式に指定となります。これにより、県指定等文化財の件数は、合計734件(うち有形文化財は347件)となる予定です。
種別 | 種類 | 名称及び員数 | 所有者 | 所在地 |
有形文化財 | 彫刻 |
木造阿弥陀如来立像 1躯 (もくぞうあみだにょらいりゅうぞう) 附 光背(つけたり こうはい) |
宗教法人東善寺 |
熊谷市桜木町2丁目33番地2 (寄託先:熊谷市立熊谷図書館) |
有形文化財 | 古文書 |
稲生家文書 1970点 (いのうけもんじょ) |
個人 |
さいたま市浦和区高砂4丁目3番18号 (寄託先:埼玉県立文書館) |
有形文化財 | 歴史資料 |
稲生家資料 169点 (いのうけしりょう) |
埼玉県 |
さいたま市大宮区高鼻町4丁目219番地 (埼玉県立歴史と民俗の博物館) |
有形文化財 | 考古資料 |
小敷田遺跡出土木簡 10点 附 第97号土坑出土土器 15点 (つけたり だい97ごうどこうしゅつどどき) 第105号土坑出土土器 23点 (だい105ごうどこうしゅつどどき) |
埼玉県 |
熊谷市船木台4丁目4番地1 (埼玉県文化財収蔵施設) |
熊谷市代(だい)に所在する曹洞宗東善寺(とうぜんじ)に伝来した阿弥陀如来立像(あみだにょらいりゅうぞう)。針葉樹の一木造(いちぼくづくり)で、玉眼(ぎょくがん)(水晶をはめ込んだ眼)、漆箔(しっぱく)(漆で金箔を貼る)の仏像。像高69.0cm。伝来の経緯は不明であるが、その作風や洗練された技法から快慶(かいけい)もしくは快慶(かいけい)周辺の仏師(ぶっし)による制作と考えられ、制作時期は13世紀前半と推定される。本県における13世紀前半の仏像のうち、製作優秀で文化史上貴重なものと評価できる。現在は、熊谷市立熊谷図書館に寄託されている。
稲生家(いのうけ)は三河譜代の旗本であり、埼玉県内の多和目(たわめ)村、和田(わだ)村、善能寺(ぜんのうじ)村(以上、現坂戸市)、丸ケ崎(まるがさき)村、堀崎(ほりさき)村(以上、現さいたま市)に所領があった。「稲生家文書(いのうけもんじょ)」、次の「稲生家資料(いのうけしりょう)」いずれも、江戸時代以降稲生家の小石川旧邸に所蔵されていたが、第二次世界大戦の戦禍を逃れて所領のあった入間郡多和目(たわめ)村の菩提寺正信庵(しょうしんあん)(廃寺)に疎開され、県内に残された。本件は計1970点からなり、質・量ともに充実した旗本関係文書である。埼玉県の歴史を知る上で価値が高いことはもちろん、旗本関係の文書群として規模が大きく、幕府官僚の実態や旗本の生活を知る上でも貴重である。また、本件と照合が可能なモノ資料(同時指定「稲生家資料(いのうけしりょう)」)も残されており、互いの価値を高め合い、旗本の生活の全体像を見ることが可能である。現在は、県立文書館に寄託されている。
稲生家(いのうけ)及び伝来の経緯は、前の「稲生家文書(いのうけもんじょ)」のとおり。旧蔵の装束(しょうぞく)、旗指物(はたさしもの)、装身具(そうしんぐ)のほか、旗本家の女性に関わる生活用品や、香道具(こうどうぐ)や押絵細工(おしえざいく)など文化に関わる品が残されており、旗本家の生活の様子を知ることができる。旗本家の資料の多くは、明治以降の没落や家財整理、震災・戦災により散逸が著しく、本件は貴重な資料群である。埼玉県域に所領を持った旗本家の遺品として、学術的価値が高い。また、本件と照合が可能な文書(同時指定「稲生家文書(いのうけもんじょ)」)も残されており、互いの価値を高め合い、旗本の生活の全体像を見ることが可能である。現在は埼玉県に寄贈され、県立歴史と民俗の博物館に所蔵されている。
行田市に所在する小敷田遺跡(こしきだいせき)は、荒川左岸の扇状地末端部に立地する弥生時代から平安時代にかけての遺跡。そのうち古代の遺構(いこう)である第97号、第105号土坑(どこう)からは、文字が判読できる木簡(もっかん)が計10点出土している。いずれも年号の記載はないが、木簡(もっかん)の記載の型式(けいしき)から、7世紀末から8世紀初頭のものと考えられる。特に第97号土坑(どこう)から出土した3号木簡(もっかん)には、日付や稲束(いなたば)の量が記載されており、古代の利息付き貸借(たいしゃく)制度である「出挙(すいこ)」(種籾(たねもみ)を支配層が農民に貸し付け、秋の収穫時に利息をつけて返済させたもの)を示すことが明らかになっている。このほかの内容としては、書簡(しょかん)、帳簿(ちょうぼ)、呪符(じゅふ)、習書(しゅうしょ)がある。古代における出挙(すいこ)の制度や地方における文字利用の実態を示すものであり、本県における古代の経済、社会、文化を考える上で欠かすことのできない資料である。