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掲載日:2023年5月23日
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平成27年11月4日(水)
(1) 塙保己一史料館(渋谷区)
(2) 国立国会図書館(千代田区)
(図書館の管理運営状況について)
塙保己一史料館は、埼玉県出身の偉人塙保己一の偉業を顕彰する、(公社)温故学会が国・重要文化財指定「群書類従」版木を保管するために設立した施設である。その管理運営状況を把握し、今後の県議会図書室運営の参考とする。
最初に、塙保己一の生涯と業績及び温故学会の由来について概要説明が行われ、質疑終了後「群書類従」を保管する版木倉庫を実地に視察した。
塙保己一は、延享3年(1746年)、武蔵国児玉郡保木野村(現在、埼玉県本庄市児玉町)に農家の長男として生まれた(幼名寅之助)。7歳の時、病がもとで失明した。15歳で江戸に出て盲人の職業団体である当道座の雨富須賀一検校の門人となるが、保己一の学才に気付いた雨富検校は、彼に様々な学問を学ばせた。書を見ることはできないので、人が音読したものを暗記して学問を進めた。安永4年(1775年)、師匠雨富検校の苗字をもらい塙姓を名乗り、名も保己一と改めた。
安永8年(1779年)34歳の時、「群書類従」の編さん・刊行を決意した。散逸してしまった日本の貴重な古典籍を集書刊行して世に広める企画である。保己一は書籍を求めて幕府の文庫をはじめ、社寺・公家・大名などに願い出て秘本・珍本類の筆写を続けた。さらに江戸はもとより、名古屋・京都・伊勢・大阪方面に調査、研究に出かけて、原本・写本の綿密な吟味、厳正な校訂を続け、版木に彫らせて木版本として頒布する道を開いた。
「群書類従」の編さん事業は、幕府から設立を許された「和学講談所」で多くの門人によって行われ、40年の歳月を経て完成した。
塙保己一は「群書類従」完成の2年後、文政4年(1821年)2月に総検校職に昇進、同年9月に76歳で逝去した。
「群書類従」の収録文件数は1,277種、666冊、版木枚数は17,224枚、両面刻であるから約34,000ページとなる。
明治維新の混乱期になると膨大な版木の維持管理は困難を極め、塙保己一の孫は版木のすべてを浅草文庫に献納したが、時代とともに所在場所は忘れられた。
明治42年(1909年)に宮中顧問官井上通泰が文部省構内の倉庫に「群書類従」版木が収蔵されていることを発見。子爵渋沢栄一、文学博士芳賀矢一、井上通泰、塙忠雄(保己一曾孫)により偉業顕彰の目的から、温故学会が設立された。昭和2年(1927年)に塙保己一史料館が現在地に竣工、版木を保管して現在に至っている。塙保己一史料館は職員4人で運営され「群書類従」版木の保管、各種啓発事業に努めている。
委員から行われた質疑の中で「版木は腐食しないか」との質問があった。これに対し、「版木に墨を塗ることで防虫効果になり、現在でも現役の版木として使用できる状態である」との回答があった。
今回の視察は、専門図書館として活動している施設を実地に視察し管理運営状況等を把握することができ、今後の県議会図書室運営の参考となるものであった。
(図書館の管理運営状況について)
国立国会図書館は、国会議員の調査研究に資するため設立された日本における唯一の国立図書館である。その運営方針や制度を実地に視察することにより、今後の県議会図書室運営の参考とする。
最初に、DVD視聴により概要説明が行われ、質疑終了後施設を実地に視察した。
国立国会図書館は、昭和23年(1948年)に設立された日本における唯一の国立図書館である。国会法第130条の規定に基づき、国立国会図書館法により設置されている。図書及びその他の図書館資料を収集し、国会議員の職務遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門、更に日本国民に対し図書館奉仕を提供することが目的である。
旧憲法下の帝国図書館及び帝国議会貴族院・衆議院の各図書館の蔵書をほとんど引き継ぎ、現在の蔵書の基礎としている。当初は旧赤坂離宮(現迎賓館)を仮庁舎に開館したが、昭和36年(1961年)に現庁舎の第一期工事が竣工し、205万冊の蔵書を擁する図書館として活動を開始した(平成26年度蔵書数約4,107万点)。
立法府である国会に属し、館長は、国会の承認を得て、衆・参両議院の議長に任命される。館長を含む職員の定数は888名である。組織は中央の図書館と行政・司法各部門に設置された支部図書館で構成されている。
平成27年度の当初予算は、工事関係の経費を除いて約186億円、そのうち資料に関わる経費は約23億円である。
国立国会図書館には、国会の諸活動を調査・情報提供の面で補佐するという重要な役割がある。このため、国会に対するサービスを中心に行う組織である調査及び立法考査局では、広範な分野に及ぶ国政課題に対する調査を行っており、調査・レファレンス件数は年間約4万件である。また、同局では立法調査資料として作成した刊行物を、国会に対してはもとより、ホームページを通じて広く一般にも提供している。
国民に対するサービスとしては、来館しての閲覧や著作権法の認める範囲での複写サービス等が利用できる。また、国立国会図書館に貸出し登録をしている他の図書館を通じて、資料を取り寄せての閲覧、レファレンスが可能である(個人に対する館外貸出しは行っていない)。
資料の収集については、国立国会図書館法により国内で発行されたすべての出版物を国立国会図書館に納入することが義務付けられている(納本制度)。収集した資料はすべて原本を保存している。
東京本館の実地視察では、本館地下8階の収蔵庫、1階の図書カウンター、2階の科学技術・経済情報室、新館1階の雑誌カウンター、4階の新聞資料室等を視察した。本館地下8階から地上までの吹抜け構造となっており、採光室が1か所設けられている。また、新館4階の新聞資料室では、国内で発行されたすべての新聞を閲覧できる。
委員から行われた質疑の中で「納本制度により年間何冊の書籍が納本されるのか」との質問があった。これに対し、「平成26年度で85万4,539点であり、これには雑誌、新聞等すべての出版物が含まれる。ちなみに、市町村立図書館の平均的な蔵書数は15万~20万冊であり、国立国会図書館の場合は1年間の出版物受入数で普通の公共図書館が数館建つ数量になる」との回答があった。
国立国会図書館の運営方針や制度を実地に視察したことは、議員の調査研究に資するための県議会図書室運営の参考となるものであった。
国立国会図書館にて
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