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掲載日:2023年5月23日
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平成29年10月16日(月曜日)
(1) 埼玉県農業技術研究センター(熊谷市)
(2) 埼玉県立循環器・呼吸器病センター(熊谷市)
(埼玉県農業技術研究センターの運営状況について)
埼玉県農業技術研究センターは、平成27年4月に埼玉県農林総合研究センターを組織再編して発足した。
同センターでは、埼玉農業の競争力を強化し、収益性の高い農業を推進するため、農業環境全般に関する研究開発、農作物の安全性確保のための技術開発、環境負荷軽減技術や野生鳥獣被害防止技術の研究開発、気候変動への適応技術の開発、高度な生産技術を一般化していく研究、収益性向上のための多収化、低コスト・高品質化技術の研究開発などを行っている。
また、遺伝子情報活用技術を生かし、県オリジナル優良品種の開発や在来遺伝資源からのブランド作物の育成を行うとともに、優良な遺伝資源の維持増殖に資する研究を行っている。
こうした研究を更に進めるとともに、本県農業が直面する課題に対応した試験研究機能を強化する目的で、同センターにおいては、温室、農機具庫等の新設整備を平成28年度に完了したところである。
そこで、埼玉県農業技術研究センターの運営状況について調査する。
埼玉県農業技術研究センターは、平成27年の組織再編で、それまでの作物別の体制を改め、機能別・横断的な試験研究による、一貫した体制で技術を普及していくことを目指して、水田農業研究所、園芸研究所を統合する形で発足した。組織再編後も機能強化に努め、平成28年度には温室、農機具庫、作物の貯蔵庫等の新設整備を行っている。
同センターは、埼玉県の農業を支え、県民の豊かな食と生活を実現する研究開発と技術支援を行うことを使命としており、6つの担当から成っている。このうち、「生産環境・安全管理研究担当」、「品種開発・ブランド育成研究担当」、「高度利用・生産性向上研究担当」の3つの担当が、様々な研究開発を行っている。なお、トマト栽培技術の実証研究を行う次世代技術実証・普及センターは、「高度利用・生産性向上研究担当」が所管している。
近年の主な研究開発としては、高温期に強い水稲やイチゴの新品種の開発、豚の人工授精技術の確立などが挙げられる。高温期に強い水稲品種の開発としては、平成22年の高温障害で「彩のかがやき」の被害が大きかったことを踏まえ、食味を保ちつつ暑さに強い品種の開発を行っている。効率的なDNA診断を行うことで、通常は10年以上かかる品種開発が、6年で最終的な品種の絞り込み段階まで進んでいるとのことであった。また、イチゴの新品種開発としては、本県が首都圏に位置している特性を踏まえ、出荷型の品種ではなく観光農園等での摘み取りを想定した品種の開発を行ってきた。愛称を「かおりん」、「あまりん」とした新品種については、平成28年度に品種登録申請を行い、一部の生産者による試作を開始している。香りや甘さに特徴のある新品種は、大手百貨店のバイヤーや有名店のシェフからも高い評価を受けているという。
次に、豚の人工授精技術としては、牛では常識であった凍結精液による人工授精技術を、平成24年に日本で初めて豚で成功させた。少量の精液でも受胎するように挿入容器等の工夫も進めた結果、当初に比べ効率が100倍以上になり、「彩の国黒豚」など貴重な遺伝資源を長期間にわたって利用することも可能となった。また、平成28年度は、農家が保有する優良な種豚の精液を採取し保存する事業を開始したとのことである。
これらの研究のほかにも、同センターでは、特許出願に向けて調整中であるアライグマだけを捕獲できる罠の開発、音響による病害虫の駆除、オリンピック・パラリンピックに向けた夏の高温期に開花する花の開発などの先駆的な取組を行い、埼玉農業の競争力強化、収益性の高い農業の推進に取り組んでいる。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「研究開発した技術を、どのように農家に普及しているのか」との質問に対し、「『農業革新支援担当』が、県の農林振興センターと連携して農家に情報を発信している。また、年に一度の成果発表会には多くの農家の方に参加いただいている」との回答があった。ほかにも、農家の後継者問題への対応、研究テーマの選定方法、高付加価値品種開発における課題などについて、活発な質問がなされた。
概要説明や施設見学を通じて、埼玉県農業技術研究センターの運営状況について理解を深めることができ、決算審査の参考となった。
(埼玉県立循環器・呼吸器病センターの運営状況について)
埼玉県立循環器・呼吸器病センターは、平成6年4月、高齢化や食生活の変化、社会生活の複雑化に伴う心臓疾患など循環器系疾患患者数の増加に対応した埼玉県立小原循環器病センターとして開設された。その後、平成10年4月に、肺がん等への対応強化のため呼吸器部門の充実を図り、埼玉県立循環器・呼吸器病センターとなった。
現在、同センターは343床(一般292床(緩和ケア24床含む)、結核30床、感染症21床)を有し、循環器系及び呼吸器系の高度・専門病院として、質の高い医療の提供を行っている。
平成29年3月には、呼吸器系疾患の病棟を移転し、併せて緩和ケア病床やハイブリッド手術室なども備えた新館棟等を開設し、更なる機能の充実を図ったところである。
そこで、埼玉県立循環器・呼吸器病センターの運営状況について調査する。
埼玉県立循環器・呼吸器病センターは、心臓疾患、脳血管疾患などの循環器系疾患や肺がんなどの呼吸器系難治疾患に対する高度・専門医療を提供する県立病院である。平成6年の開設以来、消化器外科、血管外科、腎臓内科の新設や、(財)日本医療機能評価機構による病院機能評価認定を受けるなど、同センターの理念である、県民の健康を守り、心の支えとなる病院を目指すことに取り組んできた。また、平成21年には県立4病院で初となるDPC(診療報酬の包括的支払い制度)の導入、平成22年には同じく県立4病院で初となる電子カルテシステムの導入などの経営革新を行ってきた。
同センターは、平成29年3月に、呼吸器系疾患への対応の強化と、緩和ケア病床やハイブリッド手術室なども備えた新館棟をオープンした。新館棟の総整備費用は約79億円で、鉄骨4階建て、延べ床面積は約1万4,000平方メートルである。新館棟には、北部保健医療圏で初めてとなる緩和ケア病床24床を新設し、県内では県立がんセンターの36床に次ぐ規模となった。緩和ケア病床は、全個室でプライバシーを確保し、自宅にいるような雰囲気づくりや、家族と落ち着いて団らんできるようデイルームや和室の家族付添室も整備した。ほかにも、新型インフルエンザや重症呼吸器症候群(SARS)などの患者受入れが可能な感染症病床の新設(21床)、呼吸器系専門集中治療室の新設(8室)、外来化学療法室の移設・拡充(4ベッド→10ベッド)、手術室の移設・充実(4室→5室)などを行った。手術室については、高精度な血管エックス線撮影装置を備え、カテーテル治療と外科手術の両方に対応可能なハイブリット手術室を1室整備し、高度な血管内治療や、ハイブリッド手術室でのみ認められる先進的な治療が可能となった。
ほかにも、新館棟の病室の全てのベッドを窓に面するようにしたことや、1階にコンビニエンスストアを誘致し、イートインコーナー、授乳室を新設したことにより、患者の快適性の向上を図った。緩和ケア病床のある3階には、安らぎ空間としてウッドデッキも設置されていた。また、新館棟の整備に併せて既存の病棟の改修も進めており、職員の福利厚生のためのロッカー室の整備や、研修室の新設なども行った。
同センターは、高度・専門医療を提供する病院として、地域の診療所や病院などからの紹介を中心に患者を受け入れている。連携している地域の医療機関は、36病院、286診療所であり、急性期の患者の退院後の逆紹介も積極的に進めているとのことである。北部保健医療圏をはじめ、川越比企保健医療圏、秩父保健医療圏、利根保健医療圏などからの患者も多く、これらの地域からの紹介が全体の90%以上である。新館棟がオープンして間もないため、今のところ患者数に大きな変化はなく、看護師の前倒し採用などの影響で医業収益率が一時的に悪化しているが、今後は、新設したハイブリッド手術室での手術や高齢化に伴う呼吸器系疾患の増加で、患者が増加していくことが考えられるとのことであった。このため、肺がん患者向けの外来化学療法室を拡充したことなどを発信し、更なる患者数増に努めたいとのことであった。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「緩和ケア病床の医療体制はどうなっているのか」との質問に対し、「看護師は7対1の配置であり、医師は1人である。そのため、現在は24床のうち半分以下しか稼働していないことが課題であり、医師を募集中である」との回答があった。ほかにも、新館棟オープン後の課題などについて、活発な質問がなされた。
概要説明や施設見学を通じて、埼玉県立循環器・呼吸器病センターの運営状況について理解を深めることができ、決算審査の参考となった。
埼玉県立循環器・呼吸器病センターにて
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