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掲載日:2023年5月23日
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平成27年10月21日(水)
(1) 埼玉県立近代美術館(さいたま市)
(2) 埼玉高速鉄道㈱(さいたま市)
(埼玉県立近代美術館の運営状況について)
埼玉県立近代美術館は、昭和57年に開館し、モネ、シャガール、ピカソなど海外の巨匠から日本の現代作家まで、優れた美術作品をコレクションとして展示しているほか、ユニークなテーマの企画展を随時開催している。また、自由に座ることができるグッド・デザインの椅子を多く展示している。
当館は、オープンから30年以上経過し、老朽化が進んでいたため、平成25年度から平成26年度まで2か年にわたる改修工事を実施し、平成27年4月にリニューアルオープンした。
改修工事では、外壁等の修繕を行うとともに、展示室や収蔵庫の整備を行い美術館としての機能の強化を図った。
そこで、埼玉県立近代美術館の運営状況について決算審査の参考とするため、調査する。
埼玉県立近代美術館は、旧制浦和高校(現埼玉大学)の跡地である北浦和公園内に開館した。建物は黒川紀章氏の設計で、同氏が初めて手掛けた美術館として、建物自体が作品であると言える。約3.5haある同公園内には音楽に合わせて動く噴水や彫刻など立体作品が配置されるとともに、子供たちが楽しめる遊具や芝生広場が整備されており、憩いの場として親しみやすい公園となっている。
同館では、平成25年度から平成26年度の2か年にわたり、改修工事と北浦和公園整備工事を総事業費約9億7,000万円で実施した。主な工事内容は、展示室の室内環境等の改修や収蔵庫の拡張などの機能強化のほか、トイレの洋式化など施設の近代化であった。
改修工事期間中は休館していたが、その期間を活用し、移動展事業を深谷市、春日部市及び川越市で実施した。日ごろ来館できない方々に対し、出向いて作品を見てもらい、同館を知ってもらうための活動に力を入れたという。
また、普及事業として、子供たちがアートに親しむためのプログラム「MOMASの扉」を毎週実施しているが、休館中は館外で9回実施したところ大変好評であったという。
リニューアル後は、企画展「すごいぞ、これは!」に取り組んでおり、全国の学芸員や専門家が推薦する12名の障害者のアート作品を展示している。この企画展の実施に当たっては、同美術館が事務局となり、障害者の優れたアート作品の調査、企画運営に積極的に取り組んでいる。今後は他の美術館も巡回する予定であるという。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「入館者数が横ばいであるが、何万人も集客できるような企画展を積極的に誘致するなどの工夫はしているのか」との質問に対し、「入館者を増やすため、一般に関心の高い企画展を誘致することは重要であるが、民間の美術館が実施しているような企画展には、巨額の費用が掛かり、スポンサーが必要になるなど同じようにはできない。しかしながら、魅力的な企画展の実施と、公設美術館の役割でもある地元の作家の作品収集や教育普及事業などとのバランスを取りながら運営していきたい」との回答があった。
概要説明や施設見学を通じて、埼玉県立近代美術館の運営状況について理解を深めることができ、決算審査の参考となった。
(埼玉高速鉄道㈱の運営状況について)
埼玉高速鉄道株式会社は、県と沿線自治体、東京地下鉄等が出資する第三セクターとして平成4年に設立された。
開業当初は、輸送人員が見込みを大きく下回り、建設費の償還に支障が生じる可能性があったが、沿線開発が進んだことによって、平成15年に基礎的収支の黒字化を達成した。しかし、リーマンショックや東日本大震災等の影響による輸送人員の伸び悩みにより、平成22年に策定した経営改善計画に基づく経営自立の達成が困難となった。
そのため、平成26年度に事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)を成立させ、現在、事業再生計画に基づく、経営改善に取り組んでいるところである。
そこで、埼玉高速鉄道株式会社の運営状況について決算審査の参考とするため、調査する。
埼玉高速鉄道株式会社は、平成13年に開業した埼玉高速鉄道線の運営を主な事業としており、区間は赤羽岩渕から浦和美園間の8駅、営業距離は14.6㎞で、東京メトロ南北線と東急目黒線との相互乗り入れを行っている。
平成26年度は、経営上大きな課題となっていた累積損失696億円について、事業再生ADRを実施することにより解消した。ADRとは、「裁判外紛争解決手続」のことで、民事再生法等の法的手続きによらず、第三者機関が仲介し、事業再生のための債権放棄等の調整を行うものである。ちなみに、民事再生手続きでは、金融機関等への弁済だけでなく、取引先への支払いも停止することとなってしまい、事業継続に重大な支障が生じてしまう。そのため、事業を継続しながら債務の解消を図ることができるADRの方法がとられた。具体的には、事業再生ADR申請のため実施した固定資産の見直しによる約900億円の減額と合わせた約1,500億円について、民間金融機関の有利子負債を県が第三セクター等改革推進債を発行して肩代わりし、県や市からの借入金は株式に振り替えて債務から切り離した。また、資本金を約1,000億円減資し、1億円とすることで損失を解消した。
鉄道事業については、沿線開発も順調に進んでおり、定期券利用者が3.4%、定期券以外の利用者が2.3%増加しており、地域との共生、線区の知名度向上にも取り組んでいる。地域密着の取組として「浦和美園まつり&花火大会」等のイベントへの協賛を積極的に行ったり、同社ホームページに沿線のお店の紹介を掲載し、社員がお店を訪問して、その体験記をブログに掲載している。また、知名度向上のため、「うさぎ駅長」の任命や路線の愛称募集などを行っている。
「経営再建の目途も付き、社員のモチベーションも上がっており、今後一層の発展に向け積極的に取り組んでいきたい」と、社長以下、意気込みを新たにしていた。
概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「埼玉高速鉄道の運賃は近隣の路線に比べて高いが、黒字化の目途も付いたので利用者の増加のため運賃の引き下げは検討しないのか」との質問に対し、「黒字化の目途は付いたが、経営の一層の健全化のため、事故等不測の事態が発生したときの備えとして、当面は内部留保の十分な額の確保に努めたい」との回答があった。
概要説明や施設見学を通じて、埼玉高速鉄道株式会社の運営状況について理解を深めることができ、決算審査の参考となった。
埼玉高速鉄道㈱にて
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