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掲載日:2023年5月23日
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平成28年8月17日(水)~19日(金)
(1) 大原美術館(倉敷市)
(2) 兵庫県立高砂高等学校(高砂市)
(3) ㈱神戸製鋼所ラグビー部支援室(神戸市)
(4) 大阪大学大学院工学研究科附属オープンイノベーション教育研究センター(吹田市)
(文化に係る教育活動及び文化財保全について)
近年、教育普及活動の一環として、地域や大学と連携に取り組む美術館は全国的に見て少なくはない。ただし、その連携事業において何をするかや何を目的に行うかといったものは、各美術館で異なってくる。
大原美術館では、「アートを通して豊かな心を育む」ということを目的に近隣の小学校や地域住民と連携協力して絵画鑑賞プログラムや参加体験型学習などを開催している。本県の埼玉県立近代美術館でも同様の目的で実施している学習プログラムがある。しかし、大原美術館では、未就学児を対象にした教育活動や美術館全体を使った学習プログラムなど、特徴ある取組も行っている。本県での更なる事業推進のために同美術館の教育普及活動の取組を調査する。
また、国指定の重要伝統的建造物群保存地区にある同美術館は、地域の文化財保全活動に取り組むとともに、まちづくりにも大きく貢献している。このことから、同美術館における文化財保全やまちづくりの取組も併せて調査する。
大原美術館は、昭和5年に日本で最初の西洋近代美術館として実業家の大原孫三郎によって設立された。設立当時、同美術館のある倉敷市美観地区は商人の街として発展しており、本瓦ぶき漆屋造りの町屋と土蔵造りの蔵などを中心とした町並みが形成されていた。そこに、孫三郎によって同美術館や倉敷中央病院などの洋風建築が多く建てられ、和洋こん然となったまちづくりが進められた。その後、孫三郎の子・總一郎による町並み保存活動が倉敷市長や建築家・浦辺鎮太郎などの文化人に多大な影響を与え、倉敷市の美観地区整備・保存への取組が本格化していった。
同美術館における取組としては、所蔵する美術品などを使用した教育普及活動がある。その中の一つが、対話や模写を取り入れた絵画鑑賞プログラム「学校まるごと美術館」である。これは近隣の小学校と提携して実施する取組であり、展示してある美術品を見て思ったことを文章で表現したり、複数人との対話で表現したりして、子供たちの感性や創造性を育むことを目的としたものである。また、夏休みに地域の子供たちを呼んで、美術館全体を使った参加体験型学習「チルドレンズ・アート・ミュージアム」も開催している。これは、美術品を見ながら自由に絵を描いたり、美術品を基に物語を作ったり、体全体を使って絵を表現したりして、楽しみながらアートを通じて豊かな心を育むことを目的としたものである。さらに、市内の幼稚園や保育園に通う未就学児童を対象とした「未就学児童学習プログラム」も定期的に実施している。これは、子供たちに「絵画鑑賞とパズル」「彫刻鑑賞」「美術館探検」などのメニューを体験させることによって、作品のみならず美術館全体や働く職員との触れ合いの中で子供たちの感性を育むことを目的とするものである。
同美術館による文化に係る教育活動及び文化財保全の取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
(学校教育及び文化の振興について)
近年、社会環境の変化や不安定な景気による雇用形態の多様化などで、学校では多様な生徒の進路に対応することが求められている。さらに、生徒たちにも主体的に進路を選択できる能力を身に付け、社会人・職業人として自立していくことが求められている。
そのため、兵庫県立高砂高等学校では、多様な生徒の進路に対応すべく、文系・理系のほかにスポーツ系や看護医療系の類型を設置し、特色ある教育を実施している。また、教育面のみならず部活動においても、人と社会に貢献でき、心豊かで自立した人づくりを進めている。そこで、同校を調査し、本県における学校教育の取組の参考とする。
また、同校の部活動の一つであるジャズバンド部は、数多くのステージをこなし、独特の演奏で観客を魅了するなど、ジャズ文化の振興にも貢献している。このことから、同校における文化の振興に係る取組も併せて調査する。
兵庫県立高砂高等学校は大正12年に高砂町立高砂実科高等女学校として開校し、昭和25年、兵庫県立高砂高等学校(男女共学)として県に移管され、今年で創立93年を迎える伝統校である。建学の精神である「敬愛」「勤勉」「奉仕」に則り、生涯を通し主体的に学ぶ意欲や態度・能力を身に付けさせ、人と社会に貢献でき、心豊かで自立した人づくりを進めている。その中でも、生徒たちに「挨拶」「身だしなみ」「清掃」への心掛けを徹底させており、社会人として、また職業人として地域や企業などからも求められる人づくりを進めている。
また、同校では、通常の普通科にはないスポーツ系や看護医療系などの類型を設置している。このことにより、地元企業での就業体験や看護介護施設等の施設でのキャリア体験を通して職業人に必要な知識や技術を身に付けさせ、生徒一人一人が希望の進路を実現できるように取り組んでいる。
また、同校の生徒会や部活動などにおいては、地域の清掃活動の実施や伝統行事への参加など地域貢献活動にも努めている。特に、同校のジャズバンド部は、チャリティーコンサート等に積極的に参加し、募金を社会福祉関係施設に寄附するなど、社会貢献活動に力を入れている。
さらに、ジャズバンド部は、神戸市主催で毎年開催している「ジャパン・スチューデント・ジャズ・フェスティバル」において4年連続グランプリを受賞するなど名実ともに全国トップクラスの活動をしている。同部の特徴としては、「工夫した楽器による演奏」「動きのある演奏」「生徒主体の演奏」であり、その特徴を生かして多くの観客を魅了している。そして、地元マラソン大会での演奏や著名人との共演などの多くの人が集まるイベントをはじめ、年間40回を超える演奏会等に積極的に参加することで、ジャズの楽しさを多くの人に伝え、ジャズ文化の振興にも貢献している。
概要説明を受けた後、ジャズバンド部の部員の集め方や練習方法について委員から活発な質問が行われた。
同校による学校教育及び文化の振興に係る取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
兵庫県立高砂高等学校にて
(ラグビーの振興について)
4年に1度開催される、ラグビー世界一を決する大会「ラグビーワールドカップ2019」が日本で開催される。この大会の成功に向けた取組は、現在、全国各地で実施されている。本県の熊谷市も開催都市の一つに選定されており、ラグビーの普及・拡大や国際試合に適合した競技場の整備が必要となっている。
日本ラグビー発祥の地である神戸市も「ラグビーワールドカップ2019」開催都市の一つに選定されており、同市に拠点を置く㈱神戸製鋼所ラグビー部「コベルコスティーラーズ」もラグビーの普及・拡大に向けた様々な取組を実施している。
そこで、同ラグビー部を調査し、本県におけるラグビーの振興に係る取組の参考とする。
㈱神戸製鋼所ラグビー部「コベルコスティーラーズ」は、昭和3年に設立され、全国社会人大会で9回の優勝を誇る。また、社会人トップ12チームで行われる「ジャパンラグビートップリーグ」において初代チャンピオンになるなど、日本有数の強豪ラグビーチームである。
同ラグビー部は、ラグビー普及に向けた様々な取組を行っている。その取組の一つとして、神戸製鋼グループが特別協賛する大会「コベルコカップ」でのラグビー講習会がある。この大会はラグビーの普及と選手の育成を目的に平成17年から始まった大会であるが、同ラグビー部のOB選手たちが、試合の合間に集まった高校生を対象に講習会を開催し、ラグビーの普及・拡大を図っている。また、そのほかの取組として、地元神戸市主催のラグビー教室への選手の派遣や小学校等でのラグビー・タグラグビー教室の開催がある。これは、同ラグビー部の選手たちが小学生などにラグビーやタグラグビーの基本的なプレーを通じて競技の楽しさや面白さを伝え、ラグビーの普及を図るというものである。なお、ラグビー・タグラグビー教室では、ラグビーの楽しさや面白さを伝えることだけではなく、プレー中に相手を傷つけてしまったときの対応や相手が取りやすい思いやりのあるパスなど、助け合いの精神や思いやりの心を持った子供の育成にも努めている。
また、同ラグビー部は、平成7年の阪神・淡路大震災以降、地元神戸市での防犯パトロール活動や震災復興を目的としたチャリティーマッチの開催など、ラグビーを通じて地域の社会貢献活動に取り組んでいる。それ以外にも、平成23年の東日本大震災で被災した岩手県や宮城県、福島県などに選手たちを派遣し、ラグビー教室の開催や清掃活動など、震災復興支援活動にも取り組んでいる。
概要説明を受けた後、ラグビー部の練習グラウンドを見学しつつ、練習内容などについて委員から活発な質問が行われた。
同ラグビー部によるラグビーの振興に係る取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
㈱神戸製鋼所ラグビー部灘浜グラウンドにて
(研究分野における人材の育成について)
近年、産業界では、高度な専門性を持つだけでなく、幅広い知識や研究マネジメント能力などを有する多様な人材の確保に注力し始めている。しかし、日本の理系大学院の博士課程修了者や若手研究教員は、研究のマネジメント力や新たな研究を提案する能力などが弱いと言われており、他国と比べ、産業界の第一線で活躍する研究者が少ない。
そのため、大阪大学大学院工学研究科附属オープンイノベーション教育研究センターでは、卓越した研究能力を持つ若手研究者を育成するとともに、産業界や自治体等と連携・協力し、研究マネジメント能力を備え、意欲あふれる人材育成に取り組んでいる。
そこで、同センターを調査し、本県における研究分野における人材の育成に係る取組の参考とする。
大阪大学大学院工学研究科は、将来のイノベーションをけん引する優れた若手人材の育成に取り組むため、平成28年4月、「フロンティア研究センター」と「高度人材育成センター」を統合し、「オープンイノベーション教育研究センター」を設立した。
オープンイノベーション教育研究センターでは、イノベーションをけん引しうる人材養成のため、以下四つの部門のもとで教育研究活動に取り組んでいる。一つ目の「若手人材育成部門」では、優れた若手人材の採用や研究に対する助成、人事交流する場の設置などを行い、優れた若手人材を育成している。二つ目の「工学研究融合部門」では、学内融合の促進を目的に、工学研究科に共通的な環境教育プログラムを実施するとともに、学外の社会人も受けられるオープンイノベーション学、教職員の能力を高めるプログラムなどを実施している。三つ目の「社学連携部門」では、社会とのオープンな連携を目的に、社会人を対象とした学び直しの教育や起業家教育などの実施、さらには、地域連携として自治体との連携による教育研究などを実施している。四つ目の「イノベーション推進部門」では、学生や教職員のレジリエンス力(強くしなやかな精神力)の強化を目的に、研究・教育に対するモチベーションの強化やファシリーテーションの普及、復学支援プロジェクトなどを実施している。
また、同センターでは、今後二つの部門を設置する予定である。一つは、国立の研究機関など学外の研究機関との連携を目的とした「コネクトラボ」である。もう一つは、学外に専門職大学院を設立し、学生や卒業生などが複数の学位を取得できるような仕組み作りを行うための「学外大学院設立準備部門」である。
なお、同センターでは、フューチャーデザインの研究にも取り組んでいる。これは、気候変動や社会保障など、持続可能社会の実現に向けた様々な課題に対し、将来の視点を明示的に取り込んで現代の社会システムを補完するための新しい方法論・仕組みを構築していくという研究であり、この新たな分野での人材育成も進めている。
概要説明を受けた後、フューチャーデザインの研究結果や研究費、研究機関などについて委員から活発な質問が行われた。
同センターでの研究分野における人材の育成に係る取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
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