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掲載日:2023年11月27日

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 人材育成・文化・スポーツ振興特別委員会視察報告

期日

令和5年9月6日(水曜日)~8日(金曜日)

調査先

(1)アール・ブリュット インフォメーション& サポートセンター(ボーダレス・アートミュージアムNO-MA)(滋賀県近江八幡市)

(2)京都市立美術工芸高等学校(京都府京都市)

(3)文化庁京都庁舎(京都府京都市)

(4)京都府立京都スタジアム(サンガスタジアム)(京都府亀岡市)

調査の概要

(1)アール・ブリュット インフォメーション& サポートセンター(ボーダレス・アートミュージアムNO-MA)

(障害者の文化芸術活動の支援について)

【調査目的】

 本県では、心を豊かにする文化芸術の振興と障害者の社会参加による多様性の向上のため、県民誰もが文化芸術活動に参加でき、親しめる機会を充実させる必要がある。
 同センターは、障害のある人やその家族、福祉施設からの相談、美術館や文化施設等からの問合せに対し、必要な情報を提供する等の支援を行うため、平成24年に誕生した。アール・ブリュットに関する情報提供や相談支援、展覧会やワークショップなどを開催している。また、アール・ブリュットの一部をなす障害者による美術作品の展示を目的とする「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」を運営している。NO-MAの特徴は、障害の有無に関係なく、誰もがアートに触れることができる点である。美術館内はバリアフリー化されており、車いすでも自由に作品を鑑賞することができる。
 本県においても、障害者の文化芸術活動の更なる支援が求められるため、同センターの取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。

【調査内容】

 およそ70年前、戦後間もない頃から滋賀県の障害福祉施設では、職業訓練のほか造形活動や舞台表現に取り組んできた。平成16年に開設されたボーダレス・アートミュージアムNO-MAでは、障害のある人たちによる造形表現や現代アートなど、様々な表現を分け隔てなく紹介することで、人の表現が持つ根源的な魅力を感じてもらう取組を行ってきた。近年ではヨーロッパやアジアの国々の美術館、文化施設と連携した展覧会や公演を実施するなど、海外との交流事業にも積極的に取り組んでいる。これらの70年を超える取組を経て、障害のある人が制作する作品の中には「アール・ブリュット(仏語で生の芸術という意)」として評価され、発表される作品が出てきている。
 世間からの関心が高まるとともに、障害のある人やその家族の「絵を描きたい、ものをつくりたい」「歌いたい、踊りたい」「作品を発表してみたい」などの機運が高まり、さらには美術館や文化施設等による展示や公演の依頼、マスコミからの取材依頼等、障害のある作者や演者に注目する動きも増えている。しかしながら、これらの問合せにどのように対応してよいか分からず、活動や発表、取材を断念せざるを得ない場合があったり、作者や演者の権利が十分に理解されないまま対応されていることが課題となっている。
 これらの状況を踏まえ、障害のある人やその家族、福祉施設からの相談、美術館や文化施設等からの問合せに対し、必要な情報を提供する等の支援を行うため、平成24年にアールブリュット・インフォメーション&サポートセンター(通称:アイサ)が誕生した。アイサでは、障害のある人の権利が保護されるための助言や、作品に関わろうとする人と人とが信頼関係を持ってつながるための支援を行うことで、障害のある人が安心と希望を持って美術・舞台表現活動に取り組める環境づくりを進めているとのことであった。
 概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「障害者アートの収益化につなげる取組は行っているのか」との質問に対し、「少しでも作者の方々の収益になるよう、ボーダレス・アートミュージアムNO-MAに作品を展示いただく際は、借用料をお支払いしている。今後、企業の参画も含め、更に推進していく」との回答があった。
 質疑後は、ボーダレス・アートミュージアムNO-MAを見学した。
 今回、視察先を調査できたことは、本県における障害者の文化芸術活動の支援を推進する上で大変参考となるものであった。

(2)京都市立美術工芸高等学校

芸術教育を通じた人材育成について

【調査目的】

 本県では、どのような変化にも柔軟かつ創造的に対応できる人材を育成するため、伝統と文化を尊重しつつ、時代の変化に対応する教育を推進する必要がある。
 同校では、複合的な学習として、美術×英語×情報を掛け合わせ、ユニバーサルデザインをテーマに英語科とデザイン専攻が協働で授業を行いピクトグラムを作成するなど、「美」を通じて様々な学びに横断的に取り組んでいる。また、大学・産業・地域・海外の教育機関などと連携した教育活動の充実等を推進し、美術を通して広く社会に貢献できる創造性豊かな自立した青年の育成につなげている。隣接する京都市立芸術大学とは、共同でのワークショップやイベントの実施などを通じ、高大連携の取組を推進し、文化芸術の創造の拠点としての機能を高めている。
 本県においても、柔軟かつ創造的に対応できる人材育成が求められるため、同校の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。

【調査内容】

 京都市立美術工芸高等学校は、同じ「京都府画学校」を起源とする京都市立芸術大学と共に、名を「京都市立銅駝美術工芸高校」から現在の校名へと変更し、令和5年4月、京都駅東部エリアに移転・開校した。
 京都市立美術工芸高等学校は、明治13年に京都府画学校として創立した、全国でも数少ない美術工芸専門の高校である。二条通りに近い鴨川河畔にあり、美しい東山の山並みが見え、鴨川のせせらぎの聞こえる素晴らしい環境にある。1クラス30名、1学年3クラス90名で、美術が好きな生徒270人余りが毎日いきいきと学習、制作に取り組んでいる。
 学べる専攻は日本画、洋画、彫刻、漆芸、陶芸、染織、デザイン、ファッションアートの八つがあり、2年次から希望に応じて選択する。観ること、感じること、考えること、表現することは、人間の根幹に関わるとの考えに基づき、同校では、美術の専門教育を柱にしながら、普通教科、総合的な探究の時間、特別活動などあらゆる教育活動でこれらの営みを大切にしている。
 グローバル化の進展、AIの発達など社会構造が大きく変化する中で、これからの社会的課題の解決のためには、感性や創造力を発揮し新たな価値を創出することが不可欠である。そのため同校は、「美術を学ぶ」から「美術で学ぶ」教育へ転換している。美術を通して、これからの時代を生き抜くために必要な思考力、判断力、協働力、コミュニケーション力を育成し、社会とつながり社会を変革していく未来の担い手を育てているとのことであった。
 概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「移転を契機に、新たに教育コンセプトを掲げ、美術×英語など、複合的な学習を推し進めているということだが、この新しい学習の指導方法はどのように確立していったのか」との質問に対し、「指導者全員が同じ方向を向いて『美術で学ぶ』教育を行うため、意見交換やスキルを学ぶための研修会を行っているが、まだまだ途上である。全員で試行錯誤を繰り返し、より良い指導方法を探求していく」との回答があった。
 質疑後は、校内を見学した。
 今回、視察先を調査できたことは、本県における芸術教育を通じた人材育成を推進する上で大変参考となるものであった。

人材育成・文化・スポーツ振興特別委員会写真1

京都市立美術工芸高等学校にて

(3) 文化庁京都庁舎

文化財の保存・活用・情報発信について

【調査目的】

 本県では、文化芸術の多彩な魅力の県内外へ京都市立美術工芸高等学校にての発信、伝統芸能や生活文化の伝承、地域の文化資源を活用した地域の活性化を進める必要がある。
 同庁は、日本の文化行政の核として、芸術文化の振興、文化財の保存・活用、国際文化交流の振興などを、観光、まちづくり、産業などの様々な関連分野との連携を強化し、総合的に施策を推進している。
 また、従来の「文化部」と「文化財部」の二部制を廃止し、分野横断的な組織改編を行うことで、いわゆる「縦割り」からの脱却と機動的対応の実現を図るとともに、各省庁にまたがる文化関連施策を「新・文化庁」が「軸」となって総合的に推進する体制の確立を目指している。
 本県においても、文化財の保存・活用・情報発信の推進が求められるため、同庁の取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。

【調査内容】

 同庁は、総合的な文化行政を推進するため、文化芸術の創造・発展・継承と教育の充実を進めるとともに、芸術家等の育成や、文化芸術を通じた共生社会の実現、イノベーションの創造や国家ブランドの構築に向けた施策を展開している。また、全国各地の文化財の保存・活用、博物館の振興、地域文化の振興、食文化の振興、国語・日本語教育に関する施策の推進、文化観光の推進、著作権施策の展開、宗教法人制度の運用等、様々な取組を行っている。
 こうした中、平成28年3月の「政府関係機関移転基本方針」に基づき、文化庁の京都移転が進められ、令和5年3月27日に京都での業務を開始し、同年5月15日に職員の大半が移転して、京都での本格的な稼働を開始した。
 この移転を契機とし、令和5年3月27日に閣議決定された「文化芸術推進基本計画(第2期)」で掲げる、文化芸術のグローバル展開の加速、デジタル技術を活用した文化芸術活動の推進、文化資源の保存と活用の一層の促進などに重点的に取り組み、新たな文化行政を進めることとしている。同日、食文化推進本部・文化観光推進本部を京都に設置し、2025年大阪・関西万博への貢献も見据え、文化庁における食文化・観光施策それぞれについて、総合的かつ効果的に推進することとしてる。
 また、国・地方公共団体等が一体となった文化芸術の振興の観点から、地方公共団体や関係機関等との連携推進の一環として、京都府・京都市と一緒に共創・連携した活動を展開していくとのことであった。
 概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「京都に移転して分かったことと、その効果を全国に展開していく考えはあるか。また、そのためには何が必要か」との質問に対し、「観光のポテンシャルが高い京都でも、例えば文化財の保護に係る費用と、入場料などの収入のバランスを取るための取組に苦労をしていることが分かった。こういった課題に対して適切に支援し、それをロールモデルとして確立した上で、全国への展開を図っていきたい」との回答があった。
 質疑後は、庁内を見学した。
 今回、視察先を調査できたことは、本県における文化財の保存・活用・情報発信を推進する上で大変参考となるものであった。

人材育成・文化・スポーツ振興特別委員会

文化庁京都庁舎にて

(4) 京都府立京都スタジアム(サンガスタジアム)

eスポーツを活用した地域振興について

【調査目的】

 本県では、人生をより豊かにするスポーツを、県民誰もが様々な形で楽しむことができる機会を増やすため、多彩なスポーツ大会やイベント、環境を整える必要がある。
 京都府や亀岡市の総合計画で、同スタジアムを中心とした文化創造や地域振興、にぎわい創出等について明記されており、同スタジアムでは、エリア内に保育園や足湯、3× 3コート等が設けられ3種目の公式大会が開催可能なクライミング施設(スピード、リード、ボルダリング)も併設されている。
 また、令和3年度には誰もが気軽にeスポーツを楽しめるeスポーツゾーンとVR/フィットネスゾーンがオープンし、eスポーツの聖地とするための協定も締結され、更に多様な世代が気軽に集うことができる拠点として賑わっている。
 本県においても、eスポーツも含めた多彩なスポーツ大会やイベント、環境を整えることが求められているため、同スタジアムの取組を調査し、今後の施策推進の参考とする。

【調査内容】

 同スタジアムは、青少年の夢やあこがれの舞台、スポーツを通じた健全育成、北中部地域へのゲートウェイ、そして京都府全体の発展の拠点として、亀岡市に令和2年にオープンした。国際試合も開催可能な球技専用複合型スタジアムで、スポーツを「観る」ことに加え、様々なスポーツを「する」機会、先端技術の実証と人財育成の場づくり、地域の賑わい創出、SDGsに貢献するスポーツ振興や健康づくりのプラットフォームを目指した取組を進めている。
 同スタジアムは、Jリーグ京都サンガFCの本拠地で、屋内では日本初の国際競技基準を満たすクライミングウォール(オリンピック種目)施設、防災施設、商業施設等を併設している。令和3年にはVR・eスポーツエリア「SKY-FIELD」がオープンし、一般利用を可能としながら、eスポーツの普及につながる大規模大会や、「京都eスポーツサミット」などを開催し、この拠点が京都府のeスポーツの聖地となるような取組を進めている。
 また、地域未来投資促進法の同意を受けた亀岡市の基本計画は「京都スタジアムを核としたまちづくり」となっており、スタジアム関連では国内初のケースで、地域振興の拠点としての目的も有している。令和3年度には、「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」に選定されたとのことだった。
 概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「eスポーツ導入の経緯と、普及のための具体的な取組について伺いたい」との質問に対し、「試合がない日もスタジアムにお越しいただきたいという考えから、年齢や障害の有無を問わずに楽しめるコンテンツであるeスポーツに有益性を見出し、導入した。eスポーツの一般利用や大会開催に加え、IT人材育成を目的としたセミナーの開催、シニア層や若年性認知症の方へのeスポーツ体験会の開催、スタジアムツアーでのeスポーツ体験などを行っており、多様な世代に利用いただいている」との回答があった。
 質疑後は、スタジアム内を見学した。
 今回、視察先を調査できたことは、本県におけるeスポーツを活用した地域振興を推進する上で大変参考となるものであった。

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郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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