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掲載日:2023年5月23日
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平成29年7月24日(月曜日)~26日(水曜日)
(1)北淡震災記念公園野島断層保存館(淡路市)
(2)国立研究開発法人防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター(三木市)
(3)阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター(神戸市)
(4)京都市消防局(京都市)
(防災の知識向上と意識啓発について)
北淡震災記念公園野島断層保存館は、阪神・淡路大震災の爪痕を後世に伝え、防災の大切さを語り継ぐための施設である。
平成7年に発生した同震災は、6,400名を超える死者・行方不明者や全壊10万棟を超える建物被害をはじめ、甚大な被害が生じた大災害であり、中でも淡路島北部は特に大きな被害を受けた。この地域に所在する同館では、震災で出現した野島断層を140mにわたり保存・展示している。また、地震の体験コーナーや震災シアターを備える震災体験館や、断層のほぼ真上に建っていた住居がそのまま保存された「メモリアルハウス」などにより防災の啓発を行っている。
同館の取組を調査し、今後の本県における防災の知識向上と意識啓発の参考とする。
北淡震災記念公園野島断層保存館は、阪神・淡路大震災で大きな被害を受け、野島断層が地表に出現した淡路市小倉地区(震災当時・北淡町)に所在する、防災の普及啓発施設である。同館は、土地の整備を当時の北淡町が行い、施設の整備を県企業庁が行う形で設立され、平成10年に開業した。その後、平成17年に周辺5町の合併により同地区が淡路市となると同時に、同館は市の指定管理施設となった。現在、(株)ほくだんが指定管理者となっており、入館料等により必要経費を賄う独立採算で運営されているとのことであった。
野島断層は、六甲山から淡路島に至る「六甲淡路断層帯」の一部に当たる活断層で、阪神・淡路大震災により断層面が地表に露出したものであり、文部科学省によって天然記念物に指定されている。このうち露出状況が顕著な淡路市小倉地区については、その貴重性を踏まえ、震災後の早い段階からビニールシートなどで現場が保存され、多くの実地研究が行われた。その後、北淡町震災記念公園(現:北淡震災記念公園)として整備され、園内に野島断層保存館が開業した。
同館では、同断層を140mにわたり、ありのままに保存・展示しており、来館者に、地震のすさまじさと備えの大切さを伝えている。また、震災体験館を備え、阪神・淡路大震災と東日本大震災の揺れの違いを体験できる体験コーナーや、地震について学べる震災シアターを備える。このほか、保存館脇には、断層のほぼ真上に建っていた住居がそのまま保存された「メモリアルハウス」があり、家の塀や花壇のれんががずれた様子が確認できるなど、来訪者に災害に関する知識を伝えるとともに、防災の意識啓発を行っている。
また、同館では、震災の教訓を後世に生かすために、被災体験をした方々がそれぞれの語り口で、当時の様子、今後の備えや心構えなどを語る「震災の語りべ」の取組を行っている。館内で行う語りべ事業には、学校、町内会、自治体などからの参加が多いという。また、全国への出張事業も行っており、学校の防災集会や地域の防災イベント等に語りべを派遣している。さらに、近年では「全国被災地語り部シンポジウム」が開催されており、平成28年に宮城県南三陸町で第1回が催されたのを皮切りに、今年2月には第2回が淡路市において開催され、同館も主催者の構成員となるとともに講演を行うなど大きな役割を果たした。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「語りべはどのような地域に派遣しているのか。また需要はどれくらいあるのか」との質問に対し、「要請があれば全国どこへでも赴いており、北は東北、南は九州まで多くの実績がある。事業を開始したときは年70件程度であったが、その後件数が伸び、近年は多い年で年360件程度となっている」との回答があった。その後、館内の視察を行った。
今回視察先を調査できたことは、本県における防災の普及啓発施策を推進するために大変参考となるものであった。
北淡震災記念公園 野島断層保存館にて
(大規模震災対策の推進について)
兵庫耐震工学研究センターは、国立研究開発法人防災科学技術研究所が設立した、耐震工学に関する実験・研究施設である。
同センターの設立のきっかけは、阪神・淡路大震災において、ビル、木造家屋、橋、道路、港湾など多くの構造物が未曽有の被害を受けたことを契機に、それまでの構造物の耐震性の評価方法を見直す必要が認識されたことである。
同センターでは、阪神・淡路大震災クラスの揺れを前後・左右・上下の三次元で直接与え、その揺れや建物などの損傷、崩壊の過程を詳細に検討できる実験施設「実大三次元震動台」を備えている。実物大の試験体を壊して「建物がどう壊れるか」「どこまで壊れるか」「なぜ壊れるか」を解明し、従来より高いレベルの耐震研究を実現している。
同センターの取組を調査し、本県における大規模震災対策の推進の参考とする。
国立研究開発法人防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センターは、阪神・淡路大震災を教訓として、「地震災害に強い社会を目指すこと」を基本目標に、平成17年4月に建設され、実大三次元震動破壊実験施設を活用した研究開発を推進している。同施設には、地球(Earth)規模で災害を未然に防ぐ研究開発への期待を込め、「E-ディフェンス」という愛称が付いている。
平成7年の阪神・淡路大震災でビル、木造家屋、橋、道路、港湾など、多くの建造物が被害を受けたことにより、耐震性の評価法等を見直す重要性が認識された。関連するデータを取得する上で、既存の施設にはない十分な性能を持つ新しい施設が必要となったことが、同施設の設置の契機となったとのことであった。
同施設の主要部分は、実際の地震と同じ複雑な三次元の揺れを作り出す15m×20mの振動台である。その上に最大1,200トンの構造物を載せ、震度7の地震動で、構造物が壊れるまで加振することができる。他の追随を許さない世界最大の震動破壊実験施設であり、ギネス世界記録にも登録されているという。これらの能力を最大限に利用した震動台実験により、同センターでは、様々な構造の破壊過程と新しい耐震技術の検証を行っているとのことであった。
設備は随時改良が加えられており、東日本大震災の発生や南海トラフ地震等巨大地震の懸念などを踏まえ、平成24年には長時間・長周期化工事が実施され、蓄圧容器の増設や加振機の改良を行い、機能を強化した。これにより、従前は行えなかった、東日本大震災のような長周期成分を含む非常に継続時間の長い揺れを再現できるようになったという。
また、同センターに隣接する兵庫県立三木総合防災公園は、平時は運動施設として利用され、災害時には支援物資の発送拠点等として活用される。同センターは同公園とも、大災害への備えなどについて連携を図っているとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「非常に有意義な施設であると考えるが、同種の実験施設が国内に不足しているのではないか」との質問に対し、「主に民間において、類似の実験施設は多数存在するが、規模が小振りなものが多い。そのような施設において構造物の基本性能の確認を行い、最終的な検証を本センターで行うなど、それぞれの特徴を踏まえて組み合わせた利用を行うといった対応が考えられる」との回答があった。その後、センター内の視察を行い、震動台において実施中の実験の様子などを調査した。
今回視察先を調査できたことは、本県における大規模震災対策を推進するために、大変参考となるものであった。
(防災の教育・研究の推進について)
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターは、阪神・淡路大震災の経験と教訓を後世に伝え、これからの備えを学ぶ施設である。
館内は、震災の悲惨さや防災の重要性を広く伝えるために、子供をはじめ誰もが理解・共有できる展示体験を重視したつくりとなっている。中でも、「1.17シアター」では特撮とCGを駆使して震災発生の瞬間を再現しており、大型映像と音響で地震のすさまじさを体感することができる。また、被災した時計などの現物資料や写真・映像資料、ジオラマ、証言記録などで、震災発生から復興までをたどることができる構成となっている。
また、同センターは、防災に関する実践的な研究等も推進しており、災害対策職員の養成のための研修を実施するほか、被災地の復旧・復興プロセスを支援するコンサルティングを行うなど、総合的な防災対策を推進する拠点機関となっている。
同センターの取組を調査し、本県における防災教育・研究の推進の参考とする。
阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターは、平成14年4月に兵庫県が設置し、(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構が運営を行っている防災教育・研究施設である。阪神・淡路大震災の経験を語り継ぎ、その教訓を未来に生かすことを通じて、災害文化の形成、地域防災力の向上、防災政策の開発支援を図り、安全・安心な市民協働・減災社会の実現に貢献することを目的としている。また、世界的な防災研究の拠点として、災害全般に関する有効な対策の発信地となることを目指している。
同センターの展示は、地震の発生から復興の過程をたどる展示フロアと、防災に関する最新の情報を提供する展示フロアで構成される。前者のフロア内にある「1.17シアター」は、映画・ゴジラの特撮技術監督として著名な故・川北紘一氏を起用し、最高の特撮技術とCG合成技術で震災発生の瞬間を再現しており、大型映像と音響で地震のすさまじさを体感することができる。このほかにも、被災した時計などの現物資料や写真・映像資料、ジオラマ、証言記録などで震災から復興までをたどることができる構成となっている。また、実験やゲームを通して防災・減災の知識を身に付けるコーナーや東日本大震災被災地の3Dドキュメンタリー映像上映などもあり、幅広く災害について学ぶことができるとのことであった。
同センターでは、展示以外に、防災・減災に関する実践的な教育や研究等も推進している。取組として、組織トップの危機管理能力の向上や専門職員の養成のため、阪神・淡路大震災等の過去の災害事例で得られた貴重な経験と教訓をベースにした実践的なカリキュラムによる研修を、対象者やレベル別にコースを分けて実施している。また、大規模災害時の現地支援機能を持つことも特徴であり、実際に大地震などの災害が起こった際に、現地に赴き、被災地の災害対策本部を支援するとともに、復旧・復興のプロセスを支援するコンサルティングを行っているとのことであった。
また、センター内には、国際防災復興協力機構(IRP)をはじめとした国内外の防災関係機関等が入居しており、これらの機関との連携を図ることで、防災に関する総合的な対応拠点となっている。
概要説明の後、センター内の視察を行い、映像や展示物等について調査した。
今回視察先を調査できたことは、本県における防災教育・研究を推進するために大変参考となるものであった。
阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターにて
(大規模災害に備えた取組について)
京都市消防局は、「新消防指令システム」の本格運用を平成27年6月に開始し、従来は主に無線で行っていた消防指令センターと災害現場とのやり取りが、映像による情報共有も可能となり、災害対応機能の強化が図られた。
また、大規模災害が発生した際に被災地の映像をヘリコプターで撮影し、ヘリから衛星通信に直接伝送する「ヘリサットシステム」を、平成25年に世界で初めて配備したほか、集団救急事故など多数の傷病者が発生した際に応急救護拠点を早期に開設することができる「高度救急救護車」を、平成27年に政令市として初めて導入するなど、様々な先進的な取組を行っている。
同局の取組を調査し、本県における消防防災施策の推進の参考とする。
京都市消防局は、市内11区を管轄し、消防局本部及び11の消防署を抱える消防機関である。同局では、「安心・安全のまち京都」を目指した取組を進めており、一般家庭を一軒ずつ戸別訪問するなど、地域に密着したきめ細かな防火・防災活動を推進するとともに、あらゆる災害に立ち向かう「力強い消防」を目指している。
また、同局は災害救助に関しても様々な取組を推進している。火災をはじめ、交通事故、水難事故や山岳事故などのあらゆる災害から人命を守るため、最新の救助用機材を活用し、迅速・的確な救助活動を行っている。また、国内で大規模な災害が発生した際には緊急消防救助隊を編成し、被災地への派遣を行っている。これまでに東日本大震災、熊本地震など多くの災害への対応に大きく貢献した。
同局は、近年、消防防災力の更なる向上のための様々な先進的な取組を行ってきた。今回の調査においては、3つの取組の紹介がなされた。
1点目は、新消防指令システム及び新消防指令センターの整備である。119番通報の受付から、災害場所の決定、出動部隊の編制と出動指令、災害現場活動の支援等を一体的に行うなど、消防活動の中枢を担う同システムの整備を行い、災害多発時や大規模災害時等への対応を強化した同センターの運用を平成27年6月に開始した。災害現場とのやり取りが、映像による情報共有も可能となり、指令台も増設するなどして機能強化が図られているという。
2点目は、高度救急救護車の導入である。局地的に多数の傷病者が発生した場合に応急救護拠点を迅速に開設し、現場に出動した医師が車両内で医療処置や適切なトリアージ(傷病者の重症度に基づいた治療の優先度の選別)を行うことができる同車両を導入し、運用を平成27年6月に開始した。東京消防庁に次ぐ全国2例目であり、政令市初となる同車両の導入により、災害・事故時の初動対応力が大きく強化されたという。
3点目は、ヘリサットシステムの導入である。大規模災害が発生した際に被災地の映像をヘリコプターで撮影し、衛星通信に直接伝送する同システムを世界で初めて配備し、消防ヘリコプター「あたご」号により平成25年3月から運用を開始した。全国どの被災地からでも空撮映像をリアルタイムに伝送できる同システムの導入により、被災地の情報を速やかに収集し、被災状況に応じた的確な初動対応を行うことができるようになったということであった。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「京都市は文化財がとても多い地域であるが、その対策は行っているのか」との質問に対し、「予防の観点においては、市が喫煙やたき火を制限する条例等を制定している。災害発生時における対応の観点では、本局において、平時から文化財の所在地等を把握するためのタグを作成するなどして情報を整理しており、火災等が生じた際に速やかに文化財を搬出等できるようにしている。また、地域と連携した文化財レスキュー体制を敷いており、災害発生時には地域住民に初期消火等の初動対応を行ってもらう仕組みを構築している」との回答があった。その後、局内の視察を行い、新消防システムや消防指令センターの調査を行った
今回視察先を調査できたことは、本県における消防防災施策の推進のために大変参考となるものであった。
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