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掲載日:2023年5月23日

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危機管理・大規模災害対策特別委員会視察報告

期日

平成28年9月12日(月)~14日(水)

調査先 

(1) 東北大学田所研究室(仙台市)
(2) 宮城県庁[危機対策課](仙台市)
(3) みやぎ生活協同組合 東日本大震災学習・資料館(仙台市)
(4) 山形市民防災センター(山形市)

調査の概要

(1)東北大学田所研究室

(災害対策技術の開発について)

【調査目的】

工学博士である田所諭教授は、阪神・淡路大震災を期に、レスキューロボットの学術研究分野の世界的な権威として本研究分野を推進してきた。「NEDO戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」で開発したクローラロボットクインスは、東日本大震災で被災した福島第一原発の内部調査に利用され、冷温停止に向けて大きく貢献した。
平成25年度には被災建物内探査システム「ロボ・スコープ」を清水建設㈱と共同開発するほか、飛行ロボットによる橋りょうやビル外壁の点検や、ロボット技術を用いて人と物の流れを自動化する次世代移動体の研究にも取り組み、ロボット技術を軸に社会の人々と使える技術の創成を目指している。
同研究室における災害対策ロボットの開発の取組を視察し、本県における災害対策の参考とする。

【調査内容】

田所研究室では、ロボットテクノロジーと各分野の融合を活用し、安全で安心して暮らせる豊かな社会の実現に貢献することを目的に、災害対応のためのロボットやシステム、人間との情報伝達技術を中心とした研究を進めている。
視察では、同研究室にて開発している主なロボットについての概要及びデモンストレーションを見学した。
まず、代表的なロボットであるレスキューロボット「クインス」は、優れた運動性能と計測機能により人間に代わって災害現場をはじめとした危険な環境の情報収集を担うことで、円滑な救助活動の実現と、救助に従事する人間の二次災害防止を目的としたロボットである。クローラベルトを工夫することで、階段や不整地といった地形での高い機動性を実現している。走行性のほかにも、搭載したカメラでロボット周囲の環境を把握し、集めた情報を人間が視認できるように立体的に表示したり、地図を構築したりすることができる。東日本大震災に際しては、福島第一原発の原子炉建屋に国産ロボットとして初めて投入され、冷温停止状態の実現に貢献した実績を持っている。
また、内閣府革新的研究開発プログラムの支援を受けて開発している「ヘビ型ロボット(能動スコープカメラ)」は、災害現場で被災者を救助するために、人間が近づくと危険な倒壊家屋や倒壊建物内の情報を安全に取得することを可能としたロボットである。猫じゃらしの原理を応用して推進力を得て前進し、がれき内の狭い場所に潜り込むための高い性能を持っている。また、ロボットの径を細くすることにより、配管の中を確認できるなど、様々な場面での応用が期待できるロボットとなっている。
ほかにも、ドローンを活用した橋りょう点検用球殻ヘリや、サイバー救助犬のデモンストレーションも見学し、これからの活躍が大いに期待されるものであった。
委員からは、開発の経緯や実現に至るまでの苦労など、活発な質疑応答がなされた。
今回視察先を調査できたことは、本県の災害対策の取組を推進する上で、大変参考となるものであった。


東北大学田所研究室にて

(2)宮城県庁

(大規模な自然災害への取組について)

【調査目的】

平成23年3月11日、仙台市の東方沖70kmの太平洋の海底を震源とする東日本大震災は、マグニチュード9.0、最大震度7を記録。巨大な津波や、液状化現象、地盤沈下、ダムの決壊などによって、北海道南岸から東北を経て東京湾を含む関東南部に至る広大な範囲で被害が発生し、各種インフラが寸断された。
東日本大震災から5年を経過したものの、残された爪痕は大きく深い。被災地である宮城県における初動対応から復旧・復興を目指す今日までの対応と取組を視察し、本県における大規模災害対策の参考とする。

【調査内容】

東日本大震災は、宮城県における被害が、人的被害として関連死を含む死者は10,533人、行方不明者は1,235人、家屋被害として全壊82,999棟、半壊155,130棟、被害額は9兆2,258億円にも上る未曾有の大災害である。最も大きな被害をもたらした津波は、327㎢もの浸水面積であり、県土の約4.5%が浸水した計算となっている。
こうした中、宮城県では東日本大震災の発災を受け、平成23年度から東日本大震災の概要や発災時における災害対応、明らかになった課題、そこから導かれた教訓などを各種記録誌及び記録映像に取りまとめる事業を推進してきた。
平成24年3月には、「東日本大震災-宮城県の発災後6か月間の災害対応とその検証」として宮城県における最初の検証記録誌を発行、この記録誌に取りまとめた検証・記録の内容を基礎として更なる検証・記録の取組を行い、平成25年3月から平成27年3月にかけて、記録誌及び記録映像を発行・制作した。これらの発行・制作に当たっては、学識経験者、市町村及びライフライン関係者等で構成される「宮城県防災会議東日本大震災検証・記録専門部会」の意見、助言等を踏まえている。記録誌には、東日本大震災で多く聞かれた「想定外」を繰り返さないために、得られた教訓を生かし、今後の防災対策の深化及び更なる意識醸成を図るため、13の分野について46の教訓が取りまとめられ、それぞれの教訓を踏まえた防災対策が整理されている。そして、個々の対策には、国、県、市町村の立場からの施策が構築され、着実に取り組んでいるとのことであった。
加えて、毎年度宮城県地域防災計画を修正し、教訓の反映、県の検証結果の反映、国の防災基本計画の見直し内容の反映のほか、津波避難のための施設整備指針の策定や津波対策ガイドラインの修正などに取り組んでいる。説明者が最後に述べた「今後も、被災者に寄り添う気持ちを忘れずに防災対策に取り組んでいきたい」との言葉が印象的であった。
概要説明の後、自助共助の取組、市町村への派遣制度、自衛隊や警察との連携などについて、委員から活発な質疑が行われた。
今回視察先を調査できたことは、本県の大規模な自然災害への取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

(3)みやぎ生活協同組合 東日本大震災学習・資料館

(大規模な自然災害への取組について)

【調査目的】

阪神・淡路大震災以降「被災地に生協あり」と言われ、社会的評価が高まっている生活協同組合は、大規模な災害が発生した際には、生協の持つ「ネットワーク」「マンパワー」「食料」「物資」をフル活用し、行政と連携して支援に当たってきた。
みやぎ生活協同組合においても、東日本大震災時には直ちに災害対策本部を立ち上げ、行政と締結した災害協定に基づく緊急支援物資の提供や、被災者支援等の様々な活動を行った実績がある。また、同生協の取組を後世に伝えるため、「東日本大震災学習・資料室」を設置している。
同生協及び資料室を視察し、本県における大規模な自然災害への取組の参考とする。

【調査内容】

みやぎ生活協同組合は、宮城県において約70万人の組合員を有し、店舗事業、共同購入事業、文化事業等を行っている消費生活協同組合である。
平成23年3月11日、東日本大震災が発生。みやぎ生活協同組合では直ちに災害対策本部を立ち上げるとともに、宮城県及び各市町村と締結していた「災害時における食料等物資の供給協力等に関する協定」に基づき、行政からの要請を受けて緊急支援物資を提供する取組を開始した。まず、亘理町からの要請に対し、震災当日中にパン2,000個と水2,000本を届けた。その後、4月17日までの38日間、行政の要請に応じて供給した物資は、1日も途切れることなく352万点に及んだという。
また、被災者のために店舗の迅速な再開にも力を入れ、全48店舗のうち、当日中に27店舗で営業を再開、翌日には44店舗が再開を果たしている。その際は、「一人でも多くの方に物資を届けよう」を合言葉に、利益を度外視しての営業であったとのことである。
さらに、物資の提供以外にも「安否確認」「被害状況把握」「ボランティアセンターの設置」「被災者ケア」をはじめ「犠牲者の搬送」に至るまでの様々な場面で尽力した実績がある。
震災後、未曽有の被害をもたらした東日本大震災を風化させず、かつ、同生協がこの大震災に際して取り組んだことや職員の思い・行動などを後世に伝えていくために、各種の映像や資料、震災関連本などを整理・展示した「東日本大震災学習・資料室」をみやぎ生協文化会館ウィズ内に設置し、本年3月11日にリニューアルした。
同学習資料室は、約130㎡の中に10のコーナーが設けられており、震災の全体像をはじめ同生協の被災状況、全国から受けた支援の様子などが写真パネルで時系列に紹介されているほか、被災者が作った作品なども展示されていた。さらに、中央にはシアタールームが設けられており、同生協が独自に撮影した被害状況のDVDなどが視聴でき、改めて東日本大震災の恐ろしさと、生協が果たした役割の大きさを認識したものである。
概要説明の後、委員からは活発な質疑応答が行われた。その中で、「災害時における生協の取組として、阪神・淡路大震災の例が参考になったとのことであるが、具体的にはどんなことが参考になったのか」との質問に対し、「一人でも多くの方に物資を届けることが使命という考えが、多くの店舗と職員に自然に共有され、実現できたことである」との説明があった。
今回視察先を調査できたことは、本県の大規模な自然災害の取組を推進する上で、大変参考となるものであった。


みやぎ生活協同組合東日本大震災学習・資料館にて

(4)山形市民防災センター

(県民の防災知識の向上及び防災意識の啓発について)

【調査目的】

山形市では、市民防災の拠点施設として「山形市民防災センター」を東日本大震災前から計画していたが、震災を受けて計画を見直し、内容を充実させた。
本県でも首都直下地震発生の可能性が叫ばれており、大規模災害に備えるには、災害に対する県民の知識と意識の向上が不可欠である。このため、同センターを視察し、本県における県民の防災知識の向上及び防災意識啓発の推進並びに埼玉県防災学習センター運営の参考とする。

【調査内容】 

山形市民防災センターは、東日本大震災で高まっている市民の防災意識の更なる向上、災害に対する備えの強化を目指し、平成24年10月1日に開設した防災体験施設である。
同センターは、平成24年10月1日に新設された山形市消防本部西崎出張所に併設している。同出張所は、広大な敷地を有しており、出張所全体の敷地面積は約2万㎡、鉄筋コンクリート2階建て、全体の延べ床面積は約3,430㎡となっている。敷地内には自家用給油取扱所をはじめ、ヘリポートや自家用発電設備等を備えており、災害発生時には災害対応の拠点として位置付けられている。
同センターは、このうち、西崎出張所の建物の1階と2階の一部、約630㎡を使用して整備されており、「体験ブース」と「学習・展示ブース」に分かれている。
まず、「体験ブース」では、初期消火の重要性を学ぶとともに、スクリーンを使い消火の方法や消火器の正しい使い方を体験できる「消火体験」、煙の恐ろしさを学ぶとともに、実際の火災のように煙が充満した中を避難する体験ができる「煙体験」、映像で応急手当・心肺蘇生法について学び、訓練用の人形を使って応急手当の方法等を体験することができる「応急手当体験」等、6つの体験ができるが、目玉は「地震体験」である。これは、東日本大震災の特徴を捉えた揺れや、関東大震災をはじめとした、これまで日本を襲った震災や今後起こりうる地震で想定される揺れが再現できるなどの特徴を有しているものである。
次に、「学習・展示ブース」では、過去の自然災害記録や研修教材等の映像を上映し、防災の知識などを学ぶことができ、自主防災組織の研修にも活用できる「防災学習室」をはじめ、市民・自主防災組織等の防災に関する相談に対しアドバイスや支援を行う「自主防災相談室」や山形市の主な自然災害の歴史を紹介している。また、自主防災組織の活動に関する情報を提供するコーナーなど、来館する市民に地震や火災などの災害予防について、体験を通して学んでもらうことで、防災・減災に対する知識の向上や意識の啓発に大きな役割を果たしている。
今回視察先を調査できたことは、本県の災害対策を推進する上で、また、開設から22年を迎えた埼玉県防災学習センターの今後のリニューアルに向けた検討をする上で、大変参考となるものであった。

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議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

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